用語解説
1 地方公営企業
- ア 地方公共団体は、教育、社会福祉、土木、消防など一般的な行政活動とともに、水の供給や公共輸送の確保、医療の提供や下水の処理など地域住民の生活や地域の発展に必要不可欠なサービスを提供する事業活動を行っているが、このような事業のために地方公共団体が経営する企業を「地方公営企業」と呼ぶ。
- イ 具体的には、地方財政法施行令第37条に掲げる13事業(水道、工業用水道、交通、電気、ガス、簡易水道、港湾整備、病院、市場、と畜場、観光施設、宅地造成、下水道)を指す。そのうち、水道、工業用水道、軌道、自動車運送、鉄道、電気、ガスの7事業及び病院については、企業経営のための組織、財務、身分取扱等に関する地方自治法の特例を定めた「地方公営企業法(以下「法」という。)」の規定が適用される(7事業は法の全部が適用され、病院事業は法のうち財務規定のみ適用される)。
- ウ 地方公営企業の経理については、特別会計を設けてこれを行い、「その経費は当該事業の経営に伴う収入をもってこれに充てなければならない」という独立採算を建前とする。
- エ 上記の13事業以外にも、「主としてその経費を当該事業の経営に伴う収入をもって充てるもの」については、「地方公営企業」として、条例等で定めることにより法の全部または財務規定等を適用することができる(法第2条第3項)。「主としてその経費を当該事業の経営に伴う収入をもって充てるもの」とはその経常的経費の少なくとも70~80%程度を、料金等の経常的な収入でまかなうことができるものをいう。
2 企業団
法の規定の全部が適用される地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合(法第39条の2第1項)。
3 他会計繰入金
他会計(主に普通会計)からの負担金、補助金、出資金をいう。
4 繰出基準
地方公営企業は、受益者負担を原則とする独立採算制を建前とするが、民間企業とは異なる特殊性があることから、その経費の一部については、一般会計等が負担又は補助し、残りの経費について料金で回収することとされている。
一般会計が負担又は補助すべき経費は、経費の性質上経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費、あるいは地方公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなお経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費等であり、これら負担区分についてはいわゆる繰出基準として毎年度総務省から通知される「地方公営企業繰出金について」において具体的に示されている。
5 基準内繰入金
繰出基準に基づく他会計繰入金。
6 基準外繰入金
繰出基準に基づかない任意の他会計繰入金、あるいは繰出基準により算定された繰入額を超えて他会計からの繰入れが行われた場合の当該額を超える繰入金。
7 収益的収入・支出
一事業年度の企業の経営活動に伴い発生が予定される全ての収益とそれに対応する全ての費用をいう。
収益的収入については、サービス提供の対価としての料金収入を主とする「営業収益」、受取利息、他会計補助金等の「営業外収益」、固定資産売却益等の「特別利益」からなる。
収益的支出は、サービスの提供に要する人件費・減価償却費、物件費等の「営業費用」、支払利息等の「営業外費用」、固定資産売却損等の「特別損失」及び「予備費」からなる。
8 資本的収入・支出
企業の将来の経営活動に備えて行う建設改良及び建設改良にかかる企業債償還金等の支出とその財源となる収入をいう。
資本的支出には、「建設改良費」「企業債償還金(元金)」等の費用とは直接関係ない支出で、現金支出を必要とするものが計上される。
資本的収入には、「企業債」「固定資産売却代金(売却益は除く。売却益は収益的収入の「特別利益」に計上。)」「他会計からの出資金」等の現金収入が予定されるものが計上される。
9 経常収支
法適用企業の収益的収支中における、
・総収益から特別利益を差し引いたもの(経常収益)と
・総費用から特別損失を差し引いたもの(経常損失)の差。
10 実質収支
現金収支に債権債務の発生主義の要素を加味して法非適用企業における実質的な財政収支の結果を明らかにするもので、「形式的収支- 翌年度に繰り越すべき財源」によって求めた額をいう。
(注)形式的収支=収益的収支+資本的収支+前年度からの繰越金-(積立金+前年度繰上充用金)
11 累積欠損金
法適用企業において、営業活動によって損失(赤字)を生じた場合、繰越利益剰余金(前事業年度から繰り越した利益)、利益積立金等によってもなお補填できなかった各事業年度の損失(赤字額)が累積したものをいう。
累積欠損金は、経常費用に占める減価償却費及び支払利息の比率の高い企業において増大する傾向がある。