尾鷲管内の熊野古道沿いなどで見られる樹木百選(第1回)
(森林・林業百景 第17弾)
森林・林業百景の第17弾は、尾鷲管内の熊野古道沿いなどで見られる樹木百選と題し、まず、第1回目は、特に花や若葉(新芽)がきれいな3種類の樹木について紹介します。
今後、尾鷲管内の熊野古道沿いなどで見られる樹木について、100種類を目標に、森林・林業百景において紹介していきたいと思います。
こちらの写真は、熊野古道馬越峠の散策の帰りに、北牟婁郡紀北町相賀地内で見つけたネムノキ(合歓木)の花です。ネムノキは陽樹で、森林の伐採跡地や道路法面等の明るい場所に、最初に侵入する先駆木本種(パイオニアツリ-)です。古道沿いなどを歩いていてもよく見かける樹木の一つです。
6月から7月頃にかけての梅雨から夏の時期に、桃色と白に染め分けた絹糸の束を先端で散らしたような淡紅色のとても美しい花を咲かせます。また、ネムノキに近づくと、桃のように甘い香りがしますので、古道散策時などに一度匂いをかいでみてはいかがですか。
【目】マメ目 【科】マメ科
【属】ネムノキ属
【和名】ネムノキ(合歓木)
「別名:ネム、ネブ、ネムタギ、ネブタギ、
ネフリノキ、ネムリコとも呼ばれています。」
【学名】Albizia julibrissin
ネムノキの由来は、左の写真のよう
に相対する小さな葉が合わさる睡眠運
動をすることによるといわれています。
夜になると、葉は垂れ下がり、向か
い合う小葉を閉じるように寄り添い、
眠っているように見える、このような
様子からネムノキを「合歓(合歓木)」
(ネム)と呼ぶようになったそうです。
また、宮城県、山形県などの東北の
一部では、ネムタギ、ネブタギ(眠た
木)、京都府の一部では、ネフリノキ
(眠りの木)、大分県や宮崎県などの
九州の一部では、ネムリコ(眠り子)とも呼ぶそうです。
こちらの写真は、熊野古道始神峠散策の際に見つけたアセビ(馬酔木)の花です。
3月下旬から4月頃の春の時期に、尾鷲管内の熊野古道沿い等でもよく見かけます。
アセビは、ツツジ科の植物ということもあり、この写真のように、ドウダンツツジのような白い可憐な花を咲かせます。
漢字では馬酔木と書きますように、馬が
アセビの葉を食べれば、毒に当たり、酔っ
ぱらったようにふらふらになる木という所
から付いた名前であるとも言われています。
【目】ツツジ目 【科】ツツジ科
【属】アセビ属
【和名】アセビ(馬酔木)
「別名:アシビ、アセボとも呼ばれること
もあります。」
【学名】Pieris japonica
【目】キントラノオ目 【科】トウダイグサ科
【属】アカメガシワ属
【和名】アカメガシワ(赤芽槲、赤芽柏)
「別名:ヒサギ、ゴサイバ、サイモリバ、メシ
モリナとも呼ばれています。」
【学名】Mallotus japonicus
上の写真は、熊野古道一石峠、平方峠を散策
した際に見つけたアカメガシワ(赤芽柏)の花
の写真です。6月から7月頃にかけての梅雨か
ら夏の時期に、薄黄色の小さな花を咲かせます。
アカメガシワも陽樹で、伐採跡地や道路法面
等の明るい場所に、最初に侵入する先駆木本種
(パイオニアツリ-)です。こちらもネムノキ
同様に、古道散策などをしているとよく見かけ
る樹木の一つです。
右の写真は、熊野古道荷坂峠を散策した際に
見つけたアカメガシワの若葉の写真です。
アカメガシワは、盛夏の頃に咲く花よりも、
早春の頃に発芽する新芽(若葉)の方が美しい
樹木です。
アカメガシワの名前の由来にもなっています
とおり新芽が真っ赤なことと、葉っぱが柏のよ
うに大きくなることで、赤芽・柏となったそう
です。
なお、別名のサイモリバ、メシモリナについ
ては、漢字でそれぞれ菜盛葉、飯盛菜と書きますように、葉っぱが大きく、食物(菜・飯)を盛り付けるのに適していたことから、大昔、食器として使用されていたことが名前の由来になったそうです。
熊野古道沿いでは、きれいな花やヤ
マモモやガマズミといった実をつける
樹木、また、左の写真のように、倒れ
かけの木からいくつもの芽が萌芽した
奇妙な形の木や苔類・シダ植物が樹木
の表面に着生した大木等、通常では見
られないような樹木等も観察すること
ができます。
古道散策時には、峠からの眺望や石
畳・お地蔵様といった史跡等ばかりに
目がいきがちですが、古道沿いの樹木
等に着目し、自然観察等を目的として、
一度、古道散策に訪れてみてはいかがですか。何度も訪れた古道でも、いつもと違う発見が貴
方を待っているかもしれませんよ。