渡り鳥のひと休みの木(カキノキ)(森林・林業百景 第15弾)
森林・林業百景の第15弾として、今回は、紀北町内の熊野古道を散策した時に、古道沿いで見つけた渡り鳥がひと休みするために立ち寄るカキノキ(柿の木)等について紹介します。
この日は、古道散策のために早起きした甲斐があり、紀北町では渡りの時期以外ではほとんど見ることができない2種類の野鳥を幸運にも見つけることができました。
夏鳥のコムクドリと冬鳥のヒレンジャクが、このカキノキでしばらくひと休みし、長い長い渡りの旅にそれぞれ旅立っていきました。
【目】ツツジ目 【科】カキノキ科 【属】 カキノキ属
【和名】 カキノキ(柿、柿の木) 【学名】 Diospyros kaki
コムクドリは夏鳥(主に繁殖等のために南の国:フィリピン等から日本に渡ってきて、春から秋にかけて日本で過ごし、繁殖期が終わると越冬のために南の国:フィリピン等に戻って行く渡り鳥)で、日本には夏期に本州中部以北に飛来し、繁殖するとされている鳥ですので、紀北町では渡りの時期にしか見られない珍しい野鳥です。
こちらはコムクドリのつがいの写真です。左がコムクドリのメス、右がコムクドリのオスになります。仲良く寄り添って、カキノキの枝でしばらく休憩していました。
オスは、頭部から喉元にかけてが淡いクリーム色で、頬から耳の後ろにかけて、赤茶色の斑があり、背中から肩にかけての翼は深緑のような黒色で、体の下面は灰色から白色になっています。
メスは、頭部から胸や背中にかけてが灰褐色で、頬から耳にかけての赤茶色の斑はなく、オスと比べると派手さはなく、地味な印象を持つ野鳥です。
【目】スズメ目 【科】ムクドリ科 【和名】 コムクドリ(小椋鳥)
【学名】 Sturnus philippensis 【全長】19cmほど
ちなみに下の写真は、尾鷲管内でもよく見かける留鳥(同じ地域に一年中生息し、季節により移動しない鳥)のムクドリです。 近所の屋根の上や電線等に止まっている姿をよく見かけると思いますので、こちらは皆さんもよく知っている野鳥だと思います。今回、ムクドリも同じ日にカキノキにやってきましたので、コムクドリと比較するためにムクドリの写真も掲載しておきます。
【目】スズメ目 【科】ムクドリ科 【和名】 ムクドリ(椋鳥)
【学名】 Sturnus cineraceus 【全長】 24cmほど
こちらの写真はヒレンジャクです。
ヒレンジャクは冬鳥(主に越冬のために北の国:シベリア南部等から渡ってきて、冬期を日本で過ごし、冬が終わると再び繁殖のために北の国:シベリア南部等に渡って行く渡り鳥)で、日本では、秋から春にかけて沖縄県中部より北の地域、主に西日本に多く渡来し、北海道等の北日本ではほとんど見られないとされています。よって、こちらのヒレンジャクも、紀北町では渡りの時期にしかほぼ見ることのできない珍しい野鳥です。
【目】スズメ目 【科】レンジャク科 【和名】 ヒレンジャク(緋連雀)
【学名】 Bombycilla japonica 【全長】 17-18cmほど
ヒレンジャクのオスとメスは、ほぼ同色で、
全体的に赤紫がかった淡褐色の体をしています。
ヒレンジャクは、顔は少し朱みを帯びていて、
尖った冠羽が特徴的で、目元から冠羽の縁まで
黒い過眼線があり、喉元が黒い等の特徴を持っ
ています。
腹部は、若干黄色みを帯びており、腰から上
尾筒は灰色、下尾筒は赤色、尾羽は灰黒色で先
端が赤色となっています。
なお、尾羽の枚数は12枚で、漢名「十二紅
」の由来になっているそうです。
皆さんも休日等に早起きをして、熊野古道等
を散策してみてはいかがですか。
私のように思いがけず、珍しい野鳥やムササ
ビ、リスといった小動物等に出会すかもしれま
せんよ。
古道散策の際は、峠からの眺望や石畳・お地
蔵様といった史跡等ばかりに目がいきがちです
が、時には自然観察やバードウォッチング等を目的として、東紀州地域の熊野古道等を訪れてみてください。