みえのカキ素朴な疑問にお答えします
このコーナーでは、みえのカキ(安心システム)に関する素朴な疑問についてご説明します。「みえのカキ安心システム」をご理解いただくうえでの参考としていただければ幸いです。
- カキとノロウイルス、健康被害との関係を教えてください。
- なぜ5要因が健康被害発生予測に有効なのですか。
- 5要因の結果をどのように判断すればいいのですか。
- 協議会に参加している生産者のカキは安全ですか。
- 生産者が行う浄化とはなんですか。
カキとノロウイルス、健康被害との関係を教えてください。
カキがノロウイルスの汚染を受け、健康被害が発生するのは次のようなサイクルが成り立っています。
(上図中の「NV」は「ノロウイルス」を意味します)
- ヒトでのノロウイルスの感染(流行)がおこります。
ヒトがノロウイルスに感染する経路として、
① ノロウイルスに感染したヒトからヒトへの感染
② ノロウイルスの汚染を受けた食品を食べたヒトが感染
が考えられ、②は食中毒として扱われます。(ノロウイルスの流行はヒトからヒトへの感染が主流です。) - ノロウイルス感染者のふん便、吐物には多量のノロウイルスが排泄されます。
ノロウイルス感染者のふん便、吐物1g中に100万個~10億個のノロウイルスが含まれています。 - 排泄されたノロウイルスは河川を通って海に流れ込みます。
感染者から排泄されたノロウイルスは下水処理場で処理されますが、ノロウイルスの一部は河川に流れ込み、カキを養殖している海域に流れ込みます。 - カキなど二枚貝はえさと共にノロウイルスを取り込みます。
カキなど二枚貝のえさは植物性プランクトンです。ノロウイルスが付着したプランクトンをえさとして体内に取り込み、内臓(中腸腺)にノロウイルスが蓄積されます。 - ヒトがノロウイルスを取り込んだカキを生で食べたり、加熱が不十分な二枚貝を食べることにより、ノロウイルスに感染します。
- 上記1~5の状況が繰り返し起こります。
なぜ5要因が健康被害発生予測に有効なのですか。
上記のようなサイクルを考えるとカキがどのような状況になるとノロウイルス汚染を受けるのかを予測することにより、カキによる健康被害の発生を未然に防ぐことが可能となります。
三重県では、行政(保健所)が過去9年余りに渡って、上記サイクルを考慮したデータ集積をしてきました。その結果、次の5項目がノロウイルスによる健康被害発生予測に非常に重要であることがわかってきました。みえのカキ安心協議会(以下「協議会」と表記します。)では5要因の状況をホームページ上で公開(原則毎週木曜日に更新)しています。
要因1 伊勢湾周辺地域で感染性胃腸炎の流行があったとき
陸上でのノロウイルスを含めた感染性胃腸炎は通常、冬に流行し、12月頃そのピークをむかえます。流行したノロウイルスがやがて海に流れ込み、陸上での流行から少し遅れてカキにノロウイルスが取り込まれます。
従って陸上での感染性胃腸炎の流行を観測することが重要となります。
協議会では、この地域の感染性胃腸炎の流行状況を把握しています。
要因2 カキ養殖海域の水温が10℃以下となる時期
過去のデータから健康被害の発生は、海水温が10℃以下になる時期に集中しています。
海水温(気温)が下がるとカキの活性が低下して、取り込んだノロウイルスが吐き出されにくくなる可能性が考えられます。
協議会では、各養殖海域の海水温を測定しています。
要因3 ノロウイルス遺伝子がカキのサンプルから検出されたとき
カキがノロウイルス遺伝子を保有しているかどうかは重要なファクターとなります。
協議会では、平均的な養殖の深さである水深3~3.5mのカキ1検体(各養殖海域でサンプリングし、浄化していないカキ3個を1検体とする)について検査を行っています。
要因4 一度に50mmを超える雨が降り、河川水が大量に海に流れ込んだとき
降雨があると河川から海へ大量に河川水が流れ込みます。特に大雨が降ると河川途中で滞っていたノロウイルスが一気に海に流れ込むことが予想されます。大量の河川水は養殖海域の表層に流れ込みます。
過去のデータから1日当たり50mm以上の降雨後にカキがノロウイルスを取り込み、健康被害が発生している事例があります。
協議会では、各養殖海域の最寄りの観測局における1日の降水量を確認しています。
要因5 カキの健康被害があったとき
過去のデータからカキによる健康被害は集中的に発生することが見られます。健康被害の発生はその時期のカキがノロウイルスを取り込んでいる指標となり得ます。
協議会では、次の条件すべてに合致する事例の確認(保健所からの情報提供)をしています。(食中毒に限らず健康被害の原因としてカキが疑われたものすべてを含みます)
- 鳥羽海域あるいは的矢湾産のカキを食べている。
- 症状、潜伏期間がノロウイルスによる食中毒様症状と類似している。
- 調査依頼(届出)を受けた保健所が調査をしている。
5要因の結果をどのように判断すればいいのですか。
1要因が陽性(+)になったとしても過去の事例を見ると健康被害が発生する確率は非常に低くなっています。
例えば、要因3のカキのサンプルからノロウイルス遺伝子が検出された場合であってもそのカキを食べれば直ちに健康を害するかどうかはわかりません。感染力のなくなったウイルス遺伝子の残骸が検出されることもあるからです。
協議会では5要因のすべての状況と過去の事例を総合的に判断して現在のカキをどのように調理、提供、食べていただければよいかをホームページ上で助言しています。
この助言と海域情報を参考にして、どのように食べていただくかは、みなさんの判断にお任せします。
協議会に参加している生産者のカキは安全ですか。
協議会に参加している生産者から提供される「生食用カキ」は定められた作業工程の手順を遵守し、18時間以上の殺菌海水による浄化を実施し、5要因の状況を把握しながら、今出来うる限りの衛生管理を実施しています。
しかし、残念ながら現在の技術ではカキからノロウイルスを完全に除去する方法はありませんので、安全を保証するものではありません。
協議会ではより高い安全性を確保する取り組みにより、「信頼されるカキづくり」をしています。
生産者が行う浄化とは何ですか。
「カキを紫外線殺菌海水で浄化」と聞くとどういうイメージをもたれますか?海から水揚げしたカキを水槽に入れ紫外線をあてる・・・。むき身を紫外線殺菌海水でジャブジャブ洗う・・・。などを想像される方も多いことでしょう。
カキは呼吸をしていて海水とともに餌である植物プランクトンをエラでこしとっています。その海水の量は1時間に18リットルとも言われています。
ここでお話しする浄化とは紫外線で殺菌した殺菌海水(直接カキに紫外線を当てるのではありません)に生きたカキをつけて細菌などヒトが生で食べる際に不要となるものを吐き出させているんです。カキの周りには絶えずきれいな殺菌海水が供給されるようになっていて吐き出したものや糞を再び取り込むことのないように注意しています。
三重県では生食用のカキを出荷する場合には18時間以上の浄化が義務づけられています。
浄化完了のカキ浄化水槽上から紫外線で殺菌された海水がシャワーで供給されていて、カキが吐き出したものは水槽の底から排水されるようになっています。浄化中、カキは完全に海水につかった状態となります。水槽へ入れるカキの個数や殺菌海水の供給量などはもっとも浄化効果が得られるように設定されています。また、カキを取り出すときはこの写真のように水槽内の海水を排水し終えてからカキを取り出すなど細かな手順が定められています。 |