伊勢志摩国立公園のあらまし
歴史と共生する自然 優美なリアス海岸
指定日
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昭和21年11月20日
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面積
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55,544ヘクタール
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市町
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伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町
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自然美
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英虞湾、御座白浜、眺望(ともやま展望台、横山展望台、伊勢志摩スカイライン、パールロード)、大王崎
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動植物
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宮域林の広域自然林、和具大島の暖地性砂防植物群落、ハマユウ群生地
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歴史的
建造物 |
伊勢神宮、金剛證寺
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古来からの歴史がある伊勢神宮の神域・宮域林、海女と真珠の故郷として知られる志摩半島や伊勢湾口の離島と、熊野灘東部の海岸部を含む区域です。
伊勢神宮の森は内宮、外宮合わせておよそ5,400ヘクタール。五十鈴川の清流を抱き、この地方の本来の森林であるシイ、カシなどの常緑広葉樹の自然林が広がり、トキワマンサク、ジングウツツジ、ナギランなどの貴重な植物も見られ、シカ、イノシシ、ムササビをはじめ野生動物の宝庫となっています。
「御田植祭り」で知られる磯辺の伊雑宮や、大クス(県の天然記念物)のある二見の松下社、浜島の宇気比神社(県の天然記念物)も、古来からの原風景をのこす貴重な景観です。神宮の東の朝熊山(555メートル)は公園の最高峰で、中世の信仰を伝える朝熊山経塚群(国の史跡)と金剛證寺のある山頂は、岬と海と島が織りなす眺望を誇っています。東麓の鳥羽城跡には戦国の勇、九鬼水軍の栄華の名残りを留め、二見浦の夫婦岩は奇勝として名高いところです。
リアス海岸の志摩半島は、台地状の陸と海との複雑な造形美を繰りひろげ、英虞湾など静かなたたずまいの内湾に浮かぶ真珠筏が多島海の美しい景観に彩りを添えています。 この一帯は古くから開けた土地で、海岸にはかつての志摩国府跡に国分寺も置かれ、少なくはなったものの美しいイヌマキの垣根で知られる国府、志摩を代表する海女の里の国崎、安乗文楽(県の無形文化財)が有名な安乗、奇祭「わらじ祭り」や熊野灘を一望する大王崎灯台で知られる波切、海女の祭り「潮かけ祭り」で知られる和具などの集落が、この地方独特の風土と伝統ある民俗を育んでいます。また、一部には御座白浜などの砂浜があり海水浴場として人気を博しているほか、昔から海女の本場で、美しい海浜植物群落(県の天然記念物)のみられる和具沖の大島では、ハマユウ(浜木綿)の清楚な白い花が風情ある景観をみせてくれます。
伊勢湾口には、中世の歌人・西行が幾首もの歌に詠み、野生のミカン類であるヤマトタチバナが生育する答志島、「しろんご祭り」で知られる菅島や、奇祭「ゲーター祭」や『潮騒』の舞台として有名な神島などが点在しています。また、伊良湖岬と志摩半島を結ぶこの一帯は、イチモンジセセリやアサギマダラなどの蝶、サシバなどのタカ類や小鳥類の渡りが、春・秋にみられるところでもあります。
平家の落人伝説が残る熊野灘東部沿岸は山々が海岸まで迫り、断崖と岩礁に打ちよせる荒波がリアス海岸の景観をつくる一方、座佐池、薄月池などの海跡湖が静かなたたずまいをみせています。山地は暖地性常緑広葉樹林やスギ・ヒノキの造林地が広がっていますが、南伊勢町(旧南勢町)の鬼ヶ城や細谷は暖地性シダ植物の宝庫として古くから知られています(国の天然記念物)。海岸部では熱帯の海浜塩生植物のハマジンチョウの本州での唯一の生育地である五ヶ所湾内の獅子島、海跡湖の名残りをとどめる道方の浮島、塩竈浜のハマナツメ群落、常緑広葉樹林がおおい海蝕洞でイワツバメが繁殖・越冬する見江(贄)島(いずれも県の天然記念物)や、初夏に黄色の大輪の花につつまれる伊勢路川河口のハマボウ群落などは、この地方の貴重な自然景観となっています。
また、生簀や筏に群れるアオサギ、コサギ、クロサギ、秋冬に訪れるセグロカモメ、ウミネコなどカモメ類やウミウ、ヒメウなどの海鳥は、四季を彩る風物詩です。ことに冬、神島の断崖のねぐらに集う数千羽のウ類は壮観です。