森林環境創造事業
背景
- 森林は、水源のかん養、土砂災害の防止、さらに二酸化炭素を吸収することによる地球温暖化防止のほか、野生鳥獣の生息の場、人々の心の安らぎの場の提供など、重要かつ多様な働きを持っています。
- 森林がこうした公益的機能を発揮するには、適正な管理を継続して実施していくことが必要です。
- しかし、林業を取り巻く情勢は厳しく、採算性の好転が期待できない中で従来の生産を柱とした森林・林業施策では保全できない森林が増加し、県民生活に影響を及ぼすことが懸念される状況となってきています。
- このため、三重県では、県内の森林を対象に、一律に行ってきた従来型の森林・林業施策を大きく転換し、
(1)木材生産を主体として資源の循環利用を行う森林を「生産林」
(2)木材生産を目的とせず、森林の環境公益の高度発揮を目指す森林を「環境林」
と大きく2つに区分し、それぞれの森林区分に応じた効果的、効率的な森林施策を展開することとしました。 - 生産林には基盤整備としての林道、作業道の整備、造林・間伐等の事業を集中して行い、環境林には森林の公益性を高度に発揮させる森林環境創造事業を中心とした整備を行うこととしました。
事業内容
森林環境創造事業の基本的な考え方
森林環境創造事業は、環境林のうち、下記の○印の区分において実施します。
※左右にフリックすると表がスライドします。
三重県の森林区分 | 内容 | 森林環境創造事業 | ||
---|---|---|---|---|
環境林 | 森林環境保全型 | 保存型 | 原生的な森林生態系等、貴重な自然環境の保全を重視する森林 | × |
保全型 | 土砂流出・崩壊の防備・水源かん養等安全で快適な県民生活を確保することを重視した森林 | ○ | ||
人との共生型森林 | 自然休養林、風致探勝林等のレクリエーションの森林、及び文化としての森林地域で、県民が森林へ積極的に参加する森林 | ○ | ||
生産林 | 持続的利用型森林 | 日常生活等に必要であり、環境に対し負荷の少ない素材である木材等林産物の計画的・安定的生産を重視した森林 | × |
- この事業は、森林所有者から管理委託(20年間無償提供)された森林を「公共財」として位 置づけ、生産を目的とせず針葉樹と広葉樹の混交した多様な森林づくりを行って、森林の持つ公益性を高度に発揮させることを目的とします。
- この事業は、従来の県や市町村が中心となり整備する公共事業の概念を転換し、地域が主体となった取り組みに対し、県と市町が支援する新しい形の公共事業です。
- この事業は、個人財産の形成のために行うものではありません。また、森林からの受益が一市町村内にとどまらず広範にわたることから、県負担8割、市町村負担2割とし、所有者の負担は求めません。
- 20年間の管理委託期間中は、管理受託者の認定林業事業体(以下「事業体」)が森林の公益性を高度に発揮させる整備を行います。
- 中山間地域における雇用の創出と定住化を通じ、地域の活性化と県土の有効利用を図ります。
- この事業で整備する森林は、20年後、管理の責任と権限は森林所有者に戻ります。しかし、この事業の趣旨から、環境林として整備した森林は、将来にわたり環境林として機能を果 たすものとします。
- 森林所有者と市町村及び事業体が予め協定を結び、「管理委託契約期間満了後は、原則として育成した広葉樹は、皆伐しない」という取り決めを守っていただくこととしています。(別添協定書例参照PDF:116KB)
事業の対象地
- 対象地は公益的機能が低下している、またはそのおそれのある環境林とします。
- 三重県の森林ゾーニングは、「三重県森林ゾーニング要領」に基づき、市町村森林整備計画において、森林区分の手法・区分毎の森林区域を定めることとしています。
- 環境林は天然林(広葉樹林)及び原則として道路から400m以上離れた箇所の人工林とします。
- 道路から400m以内にある人工林については、市町村が地域関係者と協議し、水源地上流等の・∠搏Iな理由がある場合には「環境林」と位 置づけ事業対象とすることができます。
- 環境林内であっても次のア~ウに係る場合はそれに従うこととします。
ア市町村有林
- 市町村有林はすでに公的管理を行っており、原則としてこの事業の対象外とします。
- ただし、県型ゾーニングで市町村が「人との共生型森林」(環境林)と位置づけた市町村有林は、交流・教育のための森林として、補助対象とします。
(広く県民が直接的に利用する森林整備となるため) - 生活環境保全林は、整備後の維持管理について、人との共生型森林として森林環境創造事業の対象に含めます。
- 財産区有林は、市町村が財政支出をするなど実質的に森林経営を行っている場合、原則として対象外とします。
(市町村の財政支援がなく、財産区自身の経営であれば、対象にできます。)
イ保安林
- 保安林は治山事業で整備しますので基本的には、対象外とします。
(森林法第25条第1号~3号保安林以外の保安林はこの限りではない) - 治山事業の採択基準から判断して、採択できない森林であれば当事業の対象とします。
ウ皆伐を前提とした森林
- 皆伐や開発することを前提とした森林は対象外とします。
事業規模
- この事業は、ある程度まとまった一団の森林でなければ効果が期待できないので、予め市町村が、地域の関係者や住民・有識者等から構成された地区森林管理協議会を設置し、認定林業事業体が、地区森林管理協議会の合意形成を図りながら、環境林の整備目的を定め、環境林整備計画を樹立することとします。
- 整備目標による一団の森林の規模は次のとおりとします。
※左右にフリックすると表がスライドします。
整備目標 | 規模 |
---|---|
保水機能等を向上させるための整備 | おおむね5ha以上 |
レクリエーション等に利用するための整備 | 整備目的に応じた面積 |
- 環境林整備計画とは別に、全体計画があれば、一団の森林を数年に分けて着手してもかまいません。
(単年度では、最低事業規模以下でも対象となります)
事務手続き
- 環境林に区分された森林の中から、整備の必要な一団の森林について、認定林業事業体は、森林所有者と認定林業事業体が管理委託契約(約20年間)を締結すると共に、整備目標を定め、平成43年度を終期とした環境林整備計画を策定し、市町長に提出します。
- 市町は提出された環境林整備計画について、地区森林管理協議会の合意形成を経て、次の事項を審査し、適当と認めた場合は、各地域の農林(水産)事務所長(以下「農林(水産)事務所長」)に計画書の協議を行います。
ア 計画地が環境林であるか。
イ 計画内容について合意形成が図られているか。
ウ 整備目標と一団の土地のまとまりについて計画性が適正か。 - 知事は、環境林整備計画を審査のうえ、市町に対し承認し、市町は認定を行います。
- 環境林整備計画の承認を受けた認定林業事業体は、年度計画書を作成し、市町長へ提出します。
- 市町村長は、環境林整備計画との整合を確認の上、年度計画書を農林(水産)事務所長に提出すると共に、次年度の予算化について配慮します。
- 農林(水産)事務所長は、審査の上承認し、農林水産部長に報告します。
- 認定林業事業体は、環境林整備計画に従い雇用計画を策定します。
- 事業体は、年度当初の内示を基に、補助金申請を行い、整備計画に従って環境林の整備を行います。
整備方針
- 単層針葉樹林は、繰り返し間伐を行うことにより、林内に光を入れ、下草や広葉樹の繁茂を図ります。
- 次回の整備までに広葉樹の繁茂が見られない場合は、広葉樹苗木を植栽します。「目標とする森林の姿」 公益的機能が低下している広葉樹林は、受光伐を行い、下草の繁茂を図ります。
- 上記作業に必要であれば、作業路(幅員2m以下)、作業歩道の開設、修繕を行うことができます。
- 伐採後5年間以上放置され、高木の生育が見られない環境林には、400本/ha~500本/ha程度の広葉樹苗木を植栽できます。
- ただし、人との共生型森林において、事前に市町村と十分に調整し、広く県民が交流するための森づくりを行う場合は、整備目標に沿って花木植栽や歩道設置等を行えます。
(人との共生型森林の場合、天然更新によって生育する樹種が整備目標と異なる場合が多いため。) - 間伐した木は、遊歩道・チップ歩道・木柵・木歩道等有効に利用できます。
目標とする森林の姿
公益的機能を高度に発揮させるため、次に掲げる森林の姿を目標とします。
針葉樹・広葉樹の混交林 (多様な樹齢)
上層には針葉樹が出現し樹冠が連続しているが、鬱蒼としておらず、樹と樹のすきま(樹間)が点在すること。それらの樹間に、中・下木層が生長し、小灌木類からなる藪・茂みが良く発達している。
針葉樹・広葉樹の混交林
上層は、針葉樹の樹間に広葉樹が侵入し林冠を形成している。林床には、小灌木が存在するような、混交林的様相を呈している壮齢針葉樹林。
広葉樹の複層林
天然の広葉樹林。樹種構成は、クス・ナラ・タブ等郷土樹種を主体とした照葉樹林等から成り、樹高は20m前後。中・下層ならびに林床が繁茂し、二段林・三段林的様相を呈している。
事業手続き
その他
財源
- (ア) この事業は「公共財」を整備する公共事業であり、財源は県単公共予算で措置しています。
(イ) 環境林においては、木材生産を目的としない広葉樹と針葉樹が混交した森林づくりを公的管理により行います。従って、公的管理を前提としない造林間伐等の補助事業は、導入できません。