8月11日(日)、今年度の第1回なんでも実験考古学「土器をつくって焼いてみよう」を開催しました。
4年前から始まった「なんでも実験考古学」では、これまで円筒埴輪、弥生土器の甕(かめ)、台付甕を製作し、野焼きでの焼成を行ってきました。今年度は今までの経験を踏まえた上で、野焼きの一種である「覆い焼き(おおいやき)」という焼成方法に焦点をあてた実験を行いました。
「覆い焼き」とは稲のわらで土器を覆って焼く焼成方法で、弥生土器はこの焼き方で焼かれていたと考えられています。覆い焼きの特徴は、温度がゆっくりあがるため、土器が割れにくいことや、熱が外に逃げにくいので、燃料を節約できることが挙げられます。また、土器表面の、わらに直接触れていた所には黒斑(こくはん)という黒い跡が残ることが知られています。
当日は小学校低学年から60代まで、23人の方が参加されました。最初に焼成場所で覆い焼きについての説明を行い、着火の様子を見ていただきました。その後、屋内に移動し、全員で土器の製作を行いました。初めて土器つくりをする人はスライドと実演での解説を交えながら、小さいサイズの甕つくりに挑戦していただく一方で、過去に土器つくりを体験されている方については、会場に展示した津市の納所遺跡(のうそいせき)から出土した弥生土器の実物や、実測図をもとに、各自で製作を進めていただきました。参加者のみなさんは楽しそうに取り組まれ、全員が土器を作ることに成功しました。できあがった土器には実物を忠実に再現したものや、オリジナリティあふれるものなどがあり、それぞれの個性が反映されていました。
夕方には覆い焼きでの焼成が終了し、参加者全員で見守る中、土器の取り出しと解説を行いました。途中で割れてしまう土器もなく、本物の出土品にあるような黒斑がついたものもできるなど、焼成実験は無事に成功しました。
10時から16時までの長時間に及ぶイベントでしたが、遠方から参加されていた方以外は全員が最終の覆い焼き終了まで見学され、事後アンケートでも「とても楽しかった」という声をたくさんいただきました。参加者のみなさんにおかれましては今回の経験をきっかけに、文化財への興味、関心を深めていただけると嬉しいと思っております。
製作した弥生土器については、9月4日に覆い焼きでの焼成を行い、その後、参加者にお渡しする予定です。
覆い焼きの設営
参加者への解説と着火の様子
土器製作の様子
土器の取り出しと解説