県立高等学校再編活性化第一次実施計画(平成14年3月策定)
1 はじめに
(1)第一次実施計画の趣旨
県内の中学校卒業予定者数は、平成22年3月には、平成13年3月に比べて約3,000人の減少が見込まれます。また、平成20年以降になると、生徒急増期に設置した県立高等学校建物改築需要の急増が見込まれます。ついては、教育委員会では、教育振興ビジョンに基づき、県立高等学校の適正規模・適正配置を計画的に推進して生徒に魅力ある教育環境を整備するため、平成13年5月31日、「県立高等学校再編活性化基本計画」(以下、「基本計画」という。)を策定しました。
基本計画を推進するため、地域社会とともに特色ある県立高等学校づくりを全ての学校で進めることを目指して、教育委員会が今後行おうとする具体的な実施内容をあらかじめ示す「県立高等学校再編活性化第一次実施計画」(以下、「第一次実施計画」という。)を策定します。
(2)第一次実施計画の基本方針
第一次実施計画は、基本計画を踏まえて、①およそ10年先を見据え、②平成14年度から16年度までの3年間の具体的実施内容とその後の実施計画に向けた方向性を示し、③高等学校教育改革や学校施設の更新計画等も見据えた総合的な視点で、柔軟性を持ちつつ積極的に県立高等学校の再編活性化を推進するものとします。
2 県立高等学校の適正規模・適正配置推進の全体像
(1)全日制高等学校における適正規模に向けた取組
ア.大規模校
基本計画では、県立高等学校の適正規模の上限を原則として1学年8学級としましたが、現在の県立高等学校には、入学定員で1学年9学級の学校が8校、10学級の学校が6校、11学級の学校が1校あります。ついては、これらの大規模校の解消に向けて取り組み、全体として1学年10学級以上の大規模校を概ねなくすように努めるとともに、可能なところから8学級以下とするように取り組みます。
(参考)
- 平成13年度入学定員が1学年9学級の高等学校
桑名西高等学校、四日市西高等学校、四日市工業高等学校、松阪高等学校、宇治山田高等学校、伊勢高等学校、上野高等学校、名張西高等学校 - 平成13年度入学定員が1学年10学級の高等学校
四日市高等学校、川越高等学校、神戸高等学校、津高等学校、津西高等学校、津東高等学校 - 平成13年度入学定員が1学年11学級の高等学校
桑名高等学校
イ.小規模校
小規模校は、統廃合又は複数の校舎をもった新しい形態の学校(以下、この形態を「校舎制」という。※注1参照)として進めることで活性化を図ることとし、平成14年度に、関係地域ごとに当該高等学校を中心に「協議会」を設置して、地元関係者とも連携をとりつつ具体的に検討します。
① 南勢高等学校、南島高等学校、度会高等学校
3校は、校舎制を実施することとし、実施方法について「協議会」で検討します。
② 尾鷲工業高等学校、長島高等学校
尾鷲工業高等学校と尾鷲高等学校とは、平成15年4月の統合に向けて尾鷲高等学校の活性化を図ります。長島高等学校については、尾鷲高等学校との間での校舎制又は統合も視野に入れて、平成16年度までに具体的な方向を示すべく、「協議会」で検討します。
③ 松阪地域、伊賀地域等の小規模校等
これらの地域では、近い将来に高等学校の小規模化が進むと予想されることから、松阪地域については相可高等学校、宮川高等学校、飯南高等学校の3校、伊賀地域については上野農業高等学校、上野工業高等学校、上野商業高等学校の3校の今後の在り方について、具体的な方向を示すべく統廃合も視野に入れて「協議会」で検討します。また、白山高等学校については、今後の在り方を学校を中心に検討を進めます。
(2)学校配置の適正化に向けた取組
ア.普通科
基本計画では、普通科においても、各学校ごとに個性化・特色化を推進するとしています。ついては、科学、国際、芸術、スポーツ、情報、地域文化などの教育内容等で特色化を図ることとし、各学校で検討します。なお、単位制による課程の導入についても、校長の裁量幅を拡大する観点を踏まえつつ、将来全ての普通科を単位制とすることも視野に入れて積極的に図ることとします。
イ.専門学科
専門学科は、21世紀における専門教育の拠点となる学校をつくるべく、専門学科の拠点化を図りながら学科を整理・統合していくこととし、並行して「くくり募集」(※注2参照)の実施、インターンシップ(※注3参照)の充実、専門学科における単位制による課程の導入などを推進します。
① 農業に関する学科
四日市農芸高等学校、久居農林高等学校、明野高等学校については、高等教育機関や他部局との連携も図りつつ、専門性を深く追求する学校として位置づけ、上野農業高等学校、相可高等学校については、他校他学科との連携を図り、農業を通した人づくりを進める学校として整備していくこととします。
また、各校が持っている実習施設について、長期的な観点からの整理を進めていきます。
② 工業に関する学科
桑名工業高等学校、四日市工業高等学校、四日市中央工業高等学校の3校間、松阪工業高等学校、伊勢工業高等学校の2校間で、小学科の拠点化を図るため、学科の整理・統合を進めていくこととし、当該学校を中心に地域産業の関係者とも連携して検討のうえ、社会の変化に即応できる体制を整えていきます。
③ 商業に関する学科
四日市商業高等学校、津商業高等学校、松阪商業高等学校、宇治山田商業高等学校で拠点化することとし、桑名高等学校の商業科は廃止、神戸高等学校の商業科は廃止又はコースとすることを前提に地域での商業教育の在り方を検討します。また、学科の枠にとらわれず、高等学校卒業後の進路状況等に応じて、これまでの商業教育の内容を生かす方策を研究します。
④ 家庭に関する学科
小学科を複数設置(※注4参照)して家庭に関する学科の拠点化を図るとともに、桑名高等学校の家政科は廃止、津東高等学校の食物教養科は廃止又はコースとすることとして、各高等学校の教育課程の編成も見据えつつ本県における今後の家庭科教育の在り方について検討を進めます。
⑤ 水産に関する学科
水産高等学校は、他県とも連携を図りつつ、県民のニーズに応じた学科整理を検討します。
⑥ 衛生看護科
桑名高等学校衛生看護分校は、衛生看護科に専攻科を加えた5年間の一貫した教育を行う看護師養成機関とします。
⑦ 情報に関する専門教育を主とする学科及び福祉に関する専門教育を主とする学科
平成15年度から実施される高等学校学習指導要領では情報及び福祉に関する専門教科が新たに設けられたことから、今後、情報に関する専門教育を主とする学科及び福祉に関する専門教育を主とする学科の設置が考えられます。
本県においては既に、工業に関する学科、商業に関する学科、家庭に関する学科等の中でこうした専門教育を行ってきたことから、その成果を検証しつつ、学習指導要領の趣旨を生かす方策を検討します。
ウ.芸術関連学科
芸術関連学科の設置については、専門的知識を持つ学識経験者等を含めた調査委員会(仮称)を設置し、三重県の高等学校教育として必要と思われる設置のコンセプトを明らかにするよう検討を進め、ニーズに応じた芸術関連学科等の設置を図ることとします。
エ.総合学科
基本計画の方針に沿って、これまでの総合学科の成果を検証しつつ従来の在り方にとらわれることなく、既存の資産の有効活用を念頭に設置を図っていくこととします。
オ.中高一貫教育校
本県における中等教育全般の改革を進めるため、併設型中高一貫教育校(※注5参照)又は中等教育学校(※注6参照)を県内2地域程度で実践・研究することとします。ついては、いなべ総合学園高等学校では併設型も視野に入れて、久居高等学校では併設型又は中等教育学校の設置に向けて実践・研究を行うこととします。また、連携型中高一貫教育校(※注7参照)については、これまでの成果も踏まえ、県内の様々な地域において検討することとします。
カ.定時制課程・通信制課程
定時制課程については、四日市北高等学校に平成14年度から昼間部を設置するとともに、伊勢実業高等学校にも昼間部を設置していきます。
また、平成14年度に通信制の整備方針等について検討し、定時制課程の統廃合と並行して定通ネットワーク拠点(※注8参照)の整備を図ります。
3 高等学校活性化に向けた取組
(1)生徒の選択幅の拡大
県立高等学校通学区域に関する規則は廃止し、全ての高等学校、学科に県内のどこからでも出願できることとします。実施は原則として平成16年度からとし、平成15年度に、各学校の普通科等の定員の一部で他の通学区域からの入学を認めることができることとして、そのニーズや影響を具体的に把握しつつ進めます。
(2)生徒の学習環境
県立高等学校入学者選抜の一層の改善を進めるとともに、生徒の学習の場を校外に拡大して、ボランティア活動、インターンシップなどの機会や、高等学校間の学校間連携(※注9参照)、高等学校と大学等高等教育機関との連携(高大連携)等の充実を図るとともに、単位制による課程などを積極的に導入して、地域社会とともに子どもたちを育てていく方策を推進します。
4 各地域ごとの取組
(1)北勢地域
桑名高等学校、四日市高等学校、川越高等学校等の大規模校について適正規模化に努めることとし、桑名高等学校においては、商業科及び家政科を廃止します。
桑名高等学校衛生看護分校は、衛生看護科に専攻科を加えた5年間の一貫した教育を行う看護師養成機関とします。
桑名工業高等学校、四日市工業高等学校、四日市中央工業高等学校は、小学科の拠点化を図るため、学科の整理・統合を進めることとし、3校を中心に地域産業の関係者とも連携して検討のうえ、社会の変化に即応できる体制を整えていきます。
四日市商業高等学校、四日市農芸高等学校は、それぞれ専門学科における拠点校とします。
独立定時制高等学校の四日市北高等学校については、平成14年度に昼間部を設置するとともに、通信制の併置に向けた検討をします。また、四日市工業高等学校定時制課程の学科整理を進めます。
中高一貫教育について、いなべ総合学園高等学校で併設型も視野に入れて実践・研究を進めるとともに、連携型中高一貫教育校についても研究します。
(2)鈴鹿、亀山地域
神戸高等学校の適正規模化に努めるとともに地域の高等学校の特色づくりを推進することとし、神戸高等学校においては、商業科を廃止又はコースとすることを前提に地域における業教育の在り方について検討していきます。
(3)津、久居・一志地域
津高等学校、津西高等学校、津東高等学校等の大規模校について適正規模化に努めることとし、津東高等学校においては、食物教養科を廃止又はコースとします。また、高等学校の学校間連携や、高等教育機関、社会教育機関等との連携等について研究します。
津商業高等学校、久居農林高等学校は、それぞれ専門学科における拠点校とします。
中高一貫教育について、久居高等学校で併設型又は中等教育学校の設置に向けて実践・研究を行うこととします。
白山高等学校については、今後の在り方を学校を中心に検討を進めます。
(4)伊賀地域
上野高等学校、名張西高等学校等の適正規模化に努めるとともに、地域の高等学校の将来の在り方を検討していくこととします。
上野地区においては、専門学科間の連携、学校間の連携を一層進めるとともに、上野農業高等学校、上野工業高等学校、上野商業高等学校の3校間での統廃合も視野に入れた検討を踏まえつつ、地域における高等学校教育の一体的な検討を進めていきます。なお、上野農業高等学校は、他校他学科との連携を図り、農業を通した人づくりを進める学校として整備を図っていきます。
名張地区においては、平成14年度から、名張高等学校に総合学科を設置するとともに名張桔梗丘高等学校に単位制による課程を導入しますが、今後、名張西高等学校も含めた3校間で学校間連携に向けた検討をします。
(5)松阪地域
松阪高等学校の適正規模化に努めるとともに、相可高等学校、宮川高等学校、飯南高等学校の今後の在り方を統廃合も視野に入れて検討します。また、並行して、地域における専門学科と普通科の連携や他の教育機関との連携等を検討していきます。なお、相可高等学校は、他校他学科との連携を図り、農業を通した人づくりを進める学校として整備を図っていきます。
松阪商業高等学校は商業に関する学科の拠点校とします。
松阪工業高等学校は、伊勢工業高等学校との間で、小学科の拠点化を図るため、学科の整理・統合を進めることとし、2校を中心に地域産業の関係者とも連携して検討のうえ、社会の変化に即応できる体制を整えていきます。
(6)南勢志摩地域
宇治山田高等学校、伊勢高等学校等の適正規模化に努めるとともに、南勢高等学校、南島高等学校、度会高等学校では校舎制を実施することとし、実施方法について具体的に検討します。また、並行して、南勢地区での連携型中高一貫教育の実施について、2年間の研究の成果を踏まえて検討を進めます。
明野高等学校、宇治山田商業高等学校は、それぞれ専門学科における拠点校とします。
伊勢工業高等学校は、松阪工業高等学校との間で、小学科の拠点化を図るため、学科の整理・統合を進めることとし、2校を中心に地域産業の関係者とも連携して検討し、社会の変化に即応できる体制を整えていきます。
水産高等学校は、他県とも連携を図りつつ、県民のニーズに応じた学科整理を検討します。
独立定時制高等学校の伊勢実業高等学校については、昼間部の設置に向けて設置学科等について検討を進めます。また、地域の定時制課程の将来の在り方について、関係者を中心に検討します。
また、南勢志摩地域における総合学科の設置について、引き続き検討していきます。
(7)東紀州地域
尾鷲工業高等学校と尾鷲高等学校を平成15年4月に統合し、地域の新しい高等学校とするとともに、長島高等学校について、校舎制又は統合も視野に入れて平成16年度までに具体的な方向を示すべく検討します。
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注1 校舎制
三重県高等学校教育改革推進協議会の提言「県立高等学校の適正規模・適正配置の推進について(審議のまとめ)」において、小規模校の活性化の具体的方策として提案された6案の中の1案として、「複数の校舎を持つ高等学校として統合し、教員が校舎間を移動して生徒の多様な学習機会を保障する。校舎が離れていても、教員や生徒の移動手段を考えることにより実現可能な方法であると考える。なお、校舎間を結ぶ情報通信ネットワーク等の環境を整えることも考える必要がある。」とされた。 本文へ戻る
注2 くくり募集
複数の学科を一括して募集し、進級時等に専門学科に分ける方法。 本文へ戻る
注3 インターンシップ
生徒が在学中に自らの学習内容や将来の進路等に関連した就業体験を行うこと。 本文へ戻る
注4 小学科を複数設置
家庭に関する学科の中に、たとえば、ファッション科や食物科などといった小学科を2学科以上設置。 本文へ戻る
注5 併設型中高一貫教育校
高等学校入学者選抜を行わずに同一の設置者による中学校と高等学校を接続して中高一貫教育を行うもの。 本文へ戻る
注6 中等教育学校
6年間の課程を前期課程(3年)及び後期課程(3年)に区分し、一つの学校として一体的に中高一貫教育を行うもの。 本文へ戻る
注7 連携型中高一貫教育校
既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校が、教育課程の編成や教員・生徒間交流等の連携を深める形で中高一貫教育を実施するもの。 本文へ戻る
注8 定通ネットワーク拠点
昼間部、夜間部及び通信制課程を備えた「定通ネットワーク」の拠点となる独立校。 本文へ戻る
注9 学校間連携
選択学習の機会を拡大する観点から、他の高等学校と連携した教育課程により、生徒が他の高等学校の教科・科目を受講できるようにすること。 本文へ戻る
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