東日本大震災に係る現地調査報告
三重県教育委員会では、これまで、被災児童生徒の受け入れや義援金の募集、宮城県へのスクールカウンセラー等の派遣などに取り組んできました。
さらに、東日本大震災による被災地の状況やニーズをより的確に把握するために、5月20日~21日に宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市、5月25日~26日に宮城県仙台市等で現地調査を行いました。
被災しているにもかかわらず、現地の方には大変親切に対応していただきました。今回、教えていただいたことをもとに、引き続きニーズにあった支援を継続するとともに、東海地震、東南海・南海地震の対策を抜本的に見直していきたいと考えています。
1 目的
(1)被災地の状況及びニーズの把握
(2)東日本大震災発生後の学校及び教育委員会の状況の把握
(3)三重県教育委員会が宮城県に派遣したスクールカウンセラー等の活動状況の把握
2 調査した内容
(1)被災地の状況
(津波による甚大な被害が生じていた) (学校にも大きな被害が生じていた)
(自衛隊やボランティアによる支援が行われていた)
(2)災害発生後の学校及び教育委員会の状況
現地の方に教えていただいた状況です。
1 被災直後の状況
・地域の津波に対する意識が高く、小中学生の時期に、高い所へ避難することを徹底されていたことが被害を少なくした。
・第1波の津波で大丈夫と思い家に戻ったところに、より大きい第2波、3波の津波がきて被害にあわれた方もみえる。
・地震及び津波の影響で電話やメール、交通が途絶し、各学校と教育委員会の連絡は困難になった。
(海岸近くの小学校の周辺の状況) (港周辺では港湾施設も破壊されていた)
2 学校と教育委員会の連絡
・津波により孤立した場合など、地震後2~3日過ぎてから校長が徒歩や自転車で市教育委員会まで来た場合もある。
・中学校区単位で、独自に小学校と中学校が情報共有を行っていた地域もある。
・県教育委員会の職員を各地域に派遣することで、当面の必要な対応を連絡するとともに、現場の状況やニーズを把握し、対応した。
(震災直後は瓦礫で道路が寸断されていた)
3 避難所対応
・多くの学校で市職員やボランティアが来るまでは、教員が避難所運営をした。
・避難所となった学校に必要な物は、食糧、毛布、自家発電機と燃料であった。
・平常時から学校や地域で災害用の物資を確保しておくことが重要である。
・多くの学校の体育館は避難所に、また、敷地の一部は自衛隊の待機場所になっている。
・住民も学校も避難所運営のノウハウが十分でなく、事前の協議やマニュアルが必要であった。
・避難所に指定されていない学校へも、住民が避難し実質的に避難所になった学校があった。
・被災者に対する支援物資は、ニーズが刻々と変化するため、必要なものがタイムリーに届く必要がある。
(体育館に保管されている支援物資) (陸上競技場は自衛隊の物資基地となった)
4 安否確認
・電話やメールが使えないため、教員が徒歩、自転車、車で避難所を回り実施した。(ただし、ガソリンはすぐに無くなった)。
・各避難所に模造紙を貼り、生徒に状況を書かせるといった工夫をすることで情報収集を行った。安否確認を終えたのは一週間後であった。
(電話や電気などが使えなくなった) (自転車は被災地で重要な交通手段に)
5 学校再開
・学校の再開は、一部を除き通常から2週間遅らせて4月21日に始業式を、また、連休明けに平常授業を開始した。年間計画をどう進めていくか、課題である。
・児童生徒は、学校で友達に会うことを楽しみにしており、学習面とあわせて早く学校を再開する必要があった。
・学校に児童生徒がいない間は、教員も張り合いがなく職員室の雰囲気が暗かった。学校の再開に関する目標をたてると、教員に元気が出てきた。
・高校生の大半がJRで通学していたが、津波で線路が破壊された不通となっている。教育委員会やPTA、議員、市長からJRやバス会社へ要請し、通学用のバスが運行されるようになった。
・給食施設が被害にあい、まだ簡易給食の学校がある。栄養状態が心配である。
(点線の部分に線路があった)
6 学校の再建
・新しく学校をつくる場合、場所の選定が難しい。地理的条件だけでなく、学校の統廃合の問題もある。
・避難所として学校が機能することを考えると、学校を高台に置くことが最善策である。
7 心のケア
・児童生徒は明るく振る舞っている。しかし、心が健全な状態かどうかは別であり、長期的なケアが必要である。
(3)三重県教育委員会が宮城県に派遣した臨床心理士の活動状況
臨床心理士は、児童生徒及び教職員の心のケアに積極的に取り組んでいました。
3 課題
東日本大震災被災地のニーズに適切に対応していくとともに、三重県においては、東海、東南海・南海地震などの大規模災害に備え、津波からの避難、学校の避難場所としての機能強化(食料や水、毛布や自家発電機などの備蓄など)、心のケアなどの課題に対応していく必要があります。