平成20年度 防災教育推進校 ベストプラクティス
県立聾学校
1 学校概要
所在地 津市藤方 2304-2
教育基本法及び学校教育法にのっとり、聴覚障がい者に対して、障がいの状態や発達段階、特性などに応じて幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準ずる教育を行っています。また、障がいに基づく種々の困難を克服するため、必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、幼稚部・小学部・中学部・高等部・高等部専攻科の一貫した教育を通して社会に役立つ心と技を磨き、心身ともに健康で自立できる人材を育成することを目指しています。
2 取組の概要
聾学校は津市から避難所(風水害や地震などの災害時に避難する施設)に指定されています。また、東海・東南海・南海地震の際には、津波の襲来が危惧されており、地域の方に聾学校について知っていただき、万が一の災害の際に速やかに避難していただき、ともに協力しながら減災の取組を進めていく必要があります。
こうしたことから平成20年度は、地元の自治会の方々と合同で津波を想定した避難訓練を実施するとともに、子どもと保護者が人形劇をとおして津波について学ぶこととしました。
3 具体的な取組
6月3日 避難訓練(第1回)、9月5日 避難訓練(第2回)
学校での避難行動を学習するために、第1回は火災、第2回は地震と津波を想定した避難訓練を行いました。
6月9日 寄宿舎避難訓練(第1回)、10月14日 寄宿舎避難訓練(第2回)、2月12日 寄宿舎避難訓練(第3回)
舎生が寄宿舎での避難行動を学習するために、第1回は火災、第2回は地震と火災、第3回は地震と津波を想定した避難訓練を行いました。
12月13日 地域の方との合同避難訓練
地震と津波を想定した避難訓練を、地元の米津北自治会と御殿場自治会の皆さんとともに行いました。
(1)9時~9時50分 防災啓発車による地震体験
聾学校のグラウンドで、三重県の防災啓発員の説明の後、防災啓発車「まもる君」(三重県防災危機管理部が保有)を用いて、地域の皆さんが地震体験をしました。想像以上の激しい揺れに皆さんあらためて減災の取組の必要性を強く感じられたようです。
(2)10時~10時30分 避難訓練
授業中の午前10時に震度5強の東南海地震が発生し、その後、津波警報が発令されたという想定で、幼児児童生徒及び地域の皆さんが校舎屋上に避難しました。
地域の方にとっては、実際に避難する経路を通り、屋上に避難することをとおして、津波警報発令時の行動を確認していただくことができました。
ア 幼児児童生徒の避難訓練
幼児児童生徒は、地震発生を知らせる放送と赤ランプの点滅、先生の指示で机の下にもぐって脚をしっかり持ち、揺れがおさまるのを待ちました。そのあと、先生の誘導で屋上へ避難しました。
イ 地域の方の避難
地域の方は、津波警報が発令されたという放送を聞き、運動場から校舎屋上に避難しました。
ウ 屋上への避難と消防署員による講話
屋上に幼児児童生徒、地域の方、教職員が避難した後、消防署の方から訓練の講評をしていただきました。
(3) 10時40分~11時00分 地域の方と教職員を対象にした、津市防災危機管理課の担当者による講話
避難訓練終了後、会議室で、津市役所の防災危機管理課の担当者から日ごろの備えの大切さや、備蓄、災害時の心構えなどについて説明していただきました。
(4) 10時50分~11時30分 児童の地震体験
訓練終了後に児童が防災啓発車で地震体験を行いました。
(5) 11時~12時 学校見学
訓練終了後に、教職員が地域の方を案内して学校見学会を行いました。地域の方に、学校の様子をより詳しく知っていただくよい機会となりました。
○アンケート
今回の訓練について、地域の皆さんに「参加して、参考になったことは何ですか」とアンケートをしたところ、
・学校との合同での避難訓練(45人)
・起震車による地震体験(39人)
・学校の授業や施設見学(20人)
・その他(4人)
との回答をいただきました。また、具体的には次のような感想をいただきました。
〔交流〕 ・聾学校の子どもたちと一緒に行動でき聾学校が身近に感じられました。地域の皆さんとも交流ができて良かったです。 ・近所にいながら未知の世界でした。今日見学させていただき、いろいろなことがわかり良かったです。ありがとうございました。
〔津波からの避難〕 ・初めて屋上まで上がりましたが、4階の階段を上がるのはこんなにも苦しいとは思いませんでした。良い経験をさせていただきました。また、津波の時には安心だと納得しました。 ・協力して避難することの大切さを感じました。今回は訓練でしたが、急な時は慌てると思います。
〔地震体験〕 ・震度6はさすがに怖かったです。これも予測できた時点での体験であり、実際の地震となると果たして落ち着いた行動できるか不安です。 ・やはり体験して初めて地震の怖さを知りました。
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1月20日 人形劇団を招いての津波学習会
津波についてより詳しく知り、津波に備え、津波発生時に迅速かつ的確な行動ができるよう人形劇団「デフ・パペットシアター・ひとみ」の皆さんをお招きして、幼児児童生徒、保護者、教職員(約250名)が、聴覚障がいの子どもたちのための人形劇「稲むらの火」を鑑賞するなどしました。
(1)あいさつ
学習会(人形劇)は手話を交えて進められていきます。
(2)人形劇「稲むらの火」
ア 村の人たちは祭りの準備で忙しくしています。
イ 地震の後、津波がくると思った庄屋の五兵衛が村人に高台への避難を呼びかけますが、伝わりません。
ウ 五兵衛が稲むらに火をつけます。
エ 村人が避難しています。
オ 村人が避難した後、津波が村を襲いました。
カ 助かった村人が五兵衛に感謝しています。
(3)地震、洪水について
劇が終わった後、地震、洪水の際に、困ったことや近所の人たちや行政、消防等とのコミュニケーションをとる手段として、光の点滅で人がきたことなどを知らせる機器や小型のホワイトボードの活用などが紹介されました。
(4)交流
最後に、人形の紹介や記念撮影が行われました。
○感想
子どもや保護者から寄せられた感想の一部を紹介します。
中学部生徒「人形劇をみて」 今日の3時間目に人形劇を見ました。私は「すごいなー」と思ったことは、五兵衛さんが稲むらに火をつけて、村の人々に津波が来ることを知らせたところです。技術がまだ進んでいない昔のことですが、とてもグッドアイデアだなと思いました。 劇が終わった後に、地震と洪水の説明がありました。説明役のてるてる君がこれらの災害が起こった時の(聴覚障がい者向けの)対応策として、光の発信器やホワイトボードのことを説明してくれて、とてもわかりやすかったです。みんなが楽しめるような工夫をしてくれたことも良かったです。 てるてる君の説明が終わった後は、みんなが劇で使用していた人形を近くで見たり、劇をしてくれた人と話しをしました。こんな機会はめったにないので、貴重な体験が出来てうれしかったです。また、実際に人形にさわることが出来ました。動かしてみると意外と難しかったです。特に歩かせることが難しかったです。 この機会に災害について、様々なことを勉強できてとても良かったです。
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〔高等部生徒〕 ・初めて防災人形劇を見ました。ナレーターをしていた人が、わかりやすい手話をしてくれたので、地震や津波の怖さがわかりました。また、防災人形劇もわかりやすくて、どういう行動をすればよいのかを知ることができて良かった。 ・人形の動き方がリアルで、表現が上手であったので、本当の出来事のように感じました。
〔中学部生徒〕 ・人形を使って地震や津波を劇にしたもので、とてもわかりやすかった。 ・津波の恐ろしさが劇を通じて勉強になった。本当に良かった。
〔小学部児童〕 ・地しん、つなみ、洪水はこわいなあと思いました。地しんと洪水の手話をおぼえました。 ・「稲むらの火」の人形げきははげしくてすごかった。 ・「稲むらの火」を見て、防災の勉強になりました。
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〔保護者〕 ・子どもにも、親にも楽しくてわかりやすい人形劇でした。また、手話での解説もあり、家で子どもと地震や津波、洪水について話し合うきっかけができました。このような機会を作っていただきありがとうございました。 ・言葉での説明も大切ですが、聾学校の子どもたちには、このように目で見て学習することが理解しやすいと実感しました。ありがとうございました。
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