三重県情報公開審査会 答申第451号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年8月11日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、特定事業の後援を取り消した経緯が分かる文書についての開示請求に対し、平成27年8月25日に三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
当初、県の担当者は「電話によって県民から当該事業に関する意見があり、調査を行った」と発言しているが、開示された文書はメールでの意見のみであった。したがって、電話通報の音声記録、通報を記録したメモについても開示してほしい。
「県民からの電話で通報を受け、実施機関内で電話の内容を検証・対応を検討された経過およびその内容を示す文書」、「県民からのメールを受け、実施機関内でメールの内容を検証・対応を検討された経過およびその内容を示す文書」、「準備中の会場を調査した担当者による報告を受け、実施機関内で後援について検討された経過及びその内容を示す文書」についても開示を求める。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
電話通報に関する文書については、電話通報の事実がなく、公文書が存在しない。
また、「県民からのメールを受け、実施機関内でメールの内容を検証・対応を検討された経過およびその内容を示す文書」、「準備中の会場を調査した担当者による報告を受け、実施機関内で後援について検討された経過及びその内容を示す文書」については、開示した公文書が全てである。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
ア 電話通報に関する公文書について
異議申立人は、県の担当者が「電話によって県民から当該事業に関する意見があり、調査を行った」と発言したと主張しており、電話の音声記録、電話を受けて実施機関内で協議・検討を行った記録の開示を求めている。
これらのことについて実施機関に聴取したところ、電話通報の事実はなく、実施機関に通報があったのは開示を行ったメールによるものだけであるとのことである。当審査会としては、この実施機関の説明に対し、実施機関は異議申立人が求めている公文書を保有していないと判断せざるを得ない。
イ 実施機関内の後援取消しについての協議に関する公文書について
異議申立人は、実施機関がメールでの通報を受け、その内容を検証し、対応を検討した記録及び担当者が会場を調査し、調査報告を受け、実施機関内で後援についての対応を検討した記録の開示を求めている。これらのことについて実施機関に聴取したところ、実施機関が行った危機管理統括監報告及び後援を取り消すために作成した起案文書が全てであり、これ以外には異議申立人が求めている公文書は存在しないとのことである。当審査会としては、この実施機関の説明に対して、実施機関が当該公文書を対象公文書として特定したことは妥当であると判断せざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 意見
審査会の本件異議申立てに対する判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
異議申立人が、「電話によって県民から当該事業に関する意見があった」と県職員から発言があったと主張しているという点については、これまで実施機関と異議申立人との間での意思疎通が不足していることが認められる。実施機関には「そのように発言した経緯」あるいは「誤解を招いてしまったこと」について、説明責任を果たし、十分な意思疎通が図られるよう努められたい。
また、今回、異議申立人は後援の取消しに至るまでの意思決定過程に関する公文書を求めている。実施機関から聴取したところ、年間500件近くある後援名義使用承認申請の中で、一度承認した後援名義の使用を取り消すという対応は極めて稀であるとのことであり、また、後援の取消しという行為は事業の主催者にとって不利益となるものである。このような対応を取るにあたり、実施機関内で慎重に調査・検討・協議が行われたことは容易に想像でき、県民への説明責任を果たすためにも、その意思決定過程を文書で作成し、保管するよう努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27.11. 6 |
・諮問書の受理 |
27.11.17 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27.12. 8 | ・理由説明書の受理 |
27.12.16 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
28. 1.12 | ・意見書の受理 |
28. 1.18 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
28. 2.24 |
・書面審理 (平成27年度第10回A部会) |
28. 3.15 |
・審議 (平成27年度第11回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
※委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。