三重県情報公開審査会 答申第414号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成25年9月20日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った特定の河川改修工事に関する書類についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成25年11月18日付けで行った公文書部分開示決定のうち、別表に記載した各決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
公開された図面は、護岸施工法の変更内容は記載されておらず、当該公開請求している内容に適合しないことから、当該公開請求で求めている公文書を公開すべきである。
非開示処分及び不存在処分を取消して、平成25年10月24日に実施機関に提示した図面の公開を求めるとともに、廃棄のため存在しないとしている公文書については、廃棄されたことが確認できる記録を公開すべきである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
請求内容及び請求者からの聞き取りにより対象公文書が特定されたものについては、開示を実施し、公文書が存在しないものについては、不存在決定とした。なお、異議申立人は、図面については文書で説明できないため、現物の図面を提示したいとの意向を示していたが、図面の提示は一部にとどまり、大部分は提示されなかったことから、対象文書が特定できず、非開示とした。
また、異議申立書の記載内容から、文書の特定が可能と考えられるものも存在したが、異議申立人が求める文書であるとの判断に至らず、異議申立人も審査会への諮問を要望されたことから、開示決定を断念した。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
別表の決定毎に判断する。
ア No.1からNo.3の開示決定について
異議申立人は、開示請求内容に「請求人に対して回答した」や「特定人が示した」などと異議申立人の主張を付加した上で請求を行っているが、実施機関は、対象公文書の特定に際し、請求内容の補正を行い、異議申立人と面談等を行ったうえで対象公文書を特定している。その上で、「特定人が示したかどうかは不明」と断ったうえで開示決定を行った実施機関の判断は一概に不適切であったとはいえず、妥当であったと判断せざるを得ない。
イ No.4からNo.6の不存在決定について
No.5について、実施機関は、保存期間経過により廃棄済のため、公文書が存在しないとの理由で不存在決定を行っている。
それに対し、異議申立人は、保存期間が経過しているならば、廃棄した記録があるはずであると主張している。
実施機関に確認したところ、当該文書は平成9年度に作成された保存期間が5年の文書であり、保存期間経過のため廃棄されたものと考えられる。また、廃棄記録については、当該文書が保存期間毎の簿冊での編綴がなされておらず、当該事業毎の簿冊で管理しており、簿冊自体は廃棄されていないことから、簿冊の廃棄記録が存在しないとの実施機関の説明に不自然、不合理な点は見られず、本件対象公文書が存在しないとする実施機関の主張は信用できるものである。
また、No.4及びNo.6についても、異議申立人の主張から、文書が存在すると判断することはできず、実施機関の説明についても是認できるものであり、特段の不合理な点は認められない。
以上により、当該公文書を不存在とした本決定は妥当であると判断する。
ウ No.7からNo.12の非開示決定について
実施機関は、請求内容から文書の特定ができなかったことから、補正を求めるとともに文書特定のために異議申立人が持っている図面の提示を求めたが、一部の図面しか提示されなかったことから、文書の特定ができず、やむを得ず非開示決定した旨主張している。
一方、異議申立人は補正に対する回答の中で、当該河川工事に関する事案であるので、実施機関は内容を十分に把握しており、請求内容から十二分に公文書は特定できるはずであると主張している。
対象公文書の特定に際し、実施機関は補正を行ったうえで、異議申立人と面談等を行っており、異議申立人との意思疎通を怠っているとは判断できない。一方、異議申立人は、実施機関が公文書の特定を容易にできるよう、必要な協力をしなければならず、文書の特定ができなかったことからやむを得ず非開示とした実施機関の判断は妥当であると判断する。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、審査会として次のとおり意見を述べる。
今回の異議申立てにおいて、開示請求者、実施機関ともに対象公文書を十分把握している状態にもかかわらず、実施機関は、やむを得ず非開示決定を行っている。
このことから、対象公文書の特定の際には、実施機関はもとより、開示請求者においても、条例第6条第2項に「開示請求者は、実施機関が公文書の特定を容易にできるよう、必要な協力をしなければならない」と規定されていることから、公文書の特定について双方協力するよう努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別表1
平成25年11月18日付け伊建第1332号 |
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No. | 請求内容 | 決定内容 |
1 |
860測点 横断施工図の内容は、護岸を1.7m盛土による施工内容(以下で「3号 860測点施工図」という)を当時の担当課長が示した(平成8年7月当時)横断施工図を公開請求致します。 | 開示
(特定した文書については、 |
2 | 「3号 860測点施工図」より確認した内容は、860測点から16.0mの位置を新官民境界位置。その内訳は、860測点から11.3mの距離は護岸の縁。施工する護岸の縁より1.7m先を従来の官民境界。其の先 護岸天端の幅員3.0mの先を新官民境界。其の先0.5mにU字溝地権者所有を布設。これらの協議結果を「3号 860測点施工図」に記載されている写しを、平成8年8月2日当時の担当課長より地権者が受け取った「3号 860測点施工図」を公開請求致します。 |
開示 (特定した文書については、 |
3 | 「4号地籍図」と「6号地籍図」又「現地地積」と「所有権移転登記(第3966号)済地籍図」の各地籍図のそれぞれの位置が、相違がある証拠を証明するために前記4点を公開請求致します。 |
開示 (特定した文書については、当時の担当課長が平成8年9月4日付示したかは不明) |
4 | 河川中心を示す780測点から846測点の区間、護岸工事を昭和60年度に完成させるには、407番地(314㎡)を取得したことで護岸が完成している記録を公開請求いたします。 |
不存在決定 (昭和60年当時の護岸工事施工にあたり407番地を取得した記録が無いため。) |
5 | 当該河川改修に必要な護岸用地買収事件に必要と、地権者に請求した委任状には、○○○○等が、相続人代表△△△△(以下で「地権者」という)に、交渉の一切に付いて委任する旨が記載してある。登記申請内容を、平成25年6月20日初めて確認すれば、「債務者 相続人 ○○○○」と明記されているが、○○○○を相続人と定めた事実は地権者にはない。以上の理由により、○○○○は相続人であることが確認できる公証を公開請求致します。 |
不存在決定 (当該文書は平成9年度に作成された5年保存の公文書であり、保存期間経過により廃棄済のため、存在しません。) |
6 | ○○○○に登記申請内容の確認を求められた事実はないが、誰に確認を求めたかが確認できる公証を公開請求致します。 | 不存在決定 |
7 | 平成7年1月17日示したのは、河川中心820測点から980測点より23.7mまで護岸用地に必要を、20.5mまで必要と示す地積図と、横断施工図を地権者に当時の担当課長が示した前記2件の図面を公開請求致します。 | 非開示 |
8 |
上記を作成した当時には、「地権者」所有地以外の土地は、約2m嵩上げされ畦などは埋没しているため、現地での計測は不可能であるが、畦の位置が記載されている。以上の理由により、当時の担当課長が示した「用地地積図」(以下で「平成7年1月17日示した用地地積図」という。)は「現地測量図」であることを証明ができる資料を公開請求致します。 | 非開示 |
9 | 840測点(以下で「河川トラーバー」という。)より、護岸の縁までの河川敷幅員は11.3mの施工図に対して、昭和60年度に請負った護岸工事の護岸位置は、1.0m河川敷が狭い10mの位置に護岸が完成している状態を、地権者の父が、昭和37年度、字○○地区全体を測量させた図面(下記で「昭和37年度測量図」という。)に上書きした測量図。及び「河川トラーバー」より23.7m先の地点は、現地井戸の南側先1.5mまで護岸用地に必要範囲を、「昭和37年度測量図」を用いて当時の担当課長は地権者に示した(平成7年8月2日)。その測量図(以下で「2号 当該地付近見取図面」という)を公開請求致します。 | 非開示 |
10 | 407番地と、番地のない堤、及び406番地の国有地を、法的手続きもなく口頭で交換したことを、当時の担当課長は聞いたということで、3筆の地積図(以下で「4号付近見取り図」という)を、地権者に平成7年8月22日付示した「4号付近見取り図」を公開請求致します。 | 非開示 |
11 |
地権者所有405-6番地と背なか合わせに隣接する、○○○○所有の405-2番地の境界角部分(840測点より北側へ23.7m地点を現地トラーバー)より、南側2.41m先の地点より、南側2.41m移動した位置より、西側へ7.514mの地点と、現地トラーバーを結んだ三角形状の境界角度は約17度でなる部分は、番地のない堤と、407番地になる部分を、地権者所有405-6番地に組み込むこと。又、前記記載の現地トラーバーより南側に、2.41mの地点を、西側へ18.0m先にある井戸の北側1.5m先から「河川トラーバー」までの距離は23.7mの前記記載3点を、当時の担当課長と地権者は「4号付近見取り図」と現地を計測して確定した結果を示した証拠は、地積図(平成8年9月4日付け)(以下で「6号地積図」という。)を証明するために公開請求を致します。 | 非開示 |
12 |
表題「第4条協議事項書」で定めている、第3項「契約に関する違約事項は自己の責任において解決する。」としているが、伊勢土木事務所所長は、建設省所管不動産登記嘱託指定職員の権限の委任者を名乗って当該嘱託登記を行っている証拠を証明するために嘱託登記済み証書を公開請求致します。 | 非開示 |
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
26. 3. 24 |
・諮問書の受理 |
26. 4. 11 |
・理由説明書の受理 |
26. 5. 2 |
・意見書の受理 |
26. 5. 13 |
・書面審理 (平成26年度第2回A部会) |
26. 6. 25 |
・審議 (第419回審査会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 |
三重大学人文学部教授 (平成26年5月31日まで) |
委員 | 高橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 (平成26年6月1日から) |
会長職務代理者 | 丸山 康人 |
四日市看護医療大学学長 (平成26年5月31日まで) |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 (平成26年6月1日から) |
※委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 |
名古屋学院大学経済学部准教授 (平成26年6月25日から) |
※会長職務代理者 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 (平成26年6月25日から) |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |