三重県情報公開審査会 答申第413号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成25年12月20日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った農業振興地域農用地区域除外(以下「農用地区域の除外」という。)に係る判断基準についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成25年12月25日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、「市町村の農地利用計画の変更に係る同意基準について」と「農業振興地域制度に関するガイドライン」の2件である。
4 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
実施機関は開示の際に、農用地区域の除外については、「市町村の農地利用計画の変更に係る同意基準」の「2 農用地利用計画変更に係る県の同意基準」のうち、「(3)農用地区域の除外について(法第13条第2項)」のアに示す、(ア)から(キ)の要件を満たさなければならないと説明した。しかし、上記文書(ア)から(キ)には、「事業系での除外はできない」とは具体的にどこにも記載されていない。記載がないことの確認を行った際に、文書から読み取ってほしいと実施機関から説明を受けたが、記載がないことを読み取ることはできない。文書のどこにも書かれていないという事実がある以上、本決定は公文書不存在とすべきである。
異議申立人は三重県津市内で事業系のもので、実際に農用地区域の除外を行っているため、事業系のものは除外できないという実施機関の主張は事実に反する。また、事業系であっても同意基準に基づいて面積等同意の基準を左右するものがあるのであれば実施機関が説明責任を果たしていない。平成26年3月6日に実施機関と異議申立人が協議対象となっている農用地区域の除外に関して協議を行い、都市計画法の地区計画に基づいた手法により実施機関として同意することができるという指導を実施機関の担当者から聞いた。そのため、そもそも事業系は除外できないということ自体が存在しないものになっている。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求に至るまでの異議申立人とのやりとり及び公文書開示請求の記載内容から、異議申立人は同意基準が存在することを知っており、その内容を知るために農用地区域の除外について同意基準となる公文書の開示請求をしたと判断した。実施機関では同意基準となる公文書として対象公文書となっている2件の文書を所持しており、いずれの文書も条例に定める非開示理由には該当しないため、当該公文書の開示決定を行った。はっきりと事業系が除外できないという内容が明示してある文書の開示請求をされていれば、不存在決定を行っていた。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 開示決定について
実施機関から聴取したところ、事業系では除外できない旨を明確に記載した文書はないが、本件請求は異議申立人との協議の対象となっている地域では事業系は除外できないと実施機関が判断した判断基準を開示請求されたと解釈して、開示決定を行ったとしている。この実施機関の説明に特段不合理な点は認められず、実施機関が判断基準の根拠として本件対象公文書を開示したことは妥当である。
実施機関は、異議申立人の請求が「事業系では除外できないことが具体的に明記されている文書」の開示請求であれば、不存在決定を行っていたとしているが、異議申立人の請求はそのように解することはできないばかりでなく、開示を求められた文書の特定としても、異議申立人の主張するような特定方法が適切とはいえず、「実施機関が判断基準とした文書」を特定し、開示するのが、原則公開とした条例の理念に沿うものと思われる。
以上のことから、本件対象公文書を開示とした本決定は妥当であると認められる。
(3)異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、三重県津市内で事業系でありながら農用地区域の除外が認められ、着工している事例が存在することから、事業系での除外ができないという実施機関の主張は事実に反すると主張する。
しかし、当審査会は情報公開条例に基づき実施機関の行った処分についての不服申立てに関し審査するものであって、実施機関が判断した農用地区域の除外についての適否を審査するものではない。したがって、異議申立人の主張は受け入れることができない。
なお、異議申立人はその他種々主張するが、いずれも審査会の判断を左右するものではない。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
26. 2.24 |
・諮問書の受理 |
26. 2.25 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
26. 3. 7 | ・理由説明書の受理 |
26. 3.11 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
26. 3.20 | ・意見書の受理 |
26. 4.11 |
・書面審理 (平成25年度第1回B部会) |
26. 5. 7 |
・追加の意見書の受理 |
26. 5.16 |
・異議申立人の口頭意見陳述 (平成26年度第2回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※会長職務代理者 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学学長 |
委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 | 川村 隆子 |
名古屋学院大学経済学部准教授 |
委員 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 |
※委員 |
藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |