三重県個人情報保護審査会 答申第98号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成25年4月16日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号)に基づき行った、三重県環境生活部私学課(以下「私学課」という。)と特定の学校法人の二者間以上における異議申立人に関する記録の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成25年4月22日付けで行った環生第02-21号による不存在決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書及び口頭による意見陳述において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のとおりである。
異議申立人が私学課に報告した問題案件について、私学課が紙面として記録する内容ではないとして、異議申立人の個人情報が記載された公文書は存在しないとするのは、事件か事故と判断される今回の問題案件を隠蔽しようとした非常に悪質な判断である。私学課がこの問題案件について、どのように特定の学校法人に対し指導したのか、どのように県庁の関係組織間で情報を共有したのかを知りたい。
4 実施機関の説明要旨
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
私学課と特定の学校法人との間における異議申立人に関するやり取りについては、特段の記録を取っていないことから、異議申立人が請求している個人情報が記載された公文書は存在しないため、不存在決定を行った。
私学課では私立学校の認可等、私立学校に関する事務を所管しており、従来から私立学校にかかる相談案件等については、当該私立学校と連絡調整を行う等の対応を取るとともに案件ごとに文書を作成しているが、異議申立人から報告があった案件については、実施機関が所管する私立学校において起こったものではないことから、特段の対応を取る必要のあるものではないと判断した。しかしながら、異議申立人は当該学校法人が関係するとして私学課に報告を行ってきたため、機会を捉え、当該学校法人に口頭で情報提供を行ったが、特段の記録は取っていない。
なお、異議申立人が問題としている案件については、異議申立人が主張している当該学校法人とは別の一般財団法人が所管する業務において起こったことであるため、私学課としては管轄外であるので対応する権限がないことを異議申立人に口頭で伝えている。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 不存在決定の妥当性について
異議申立人は、私学課に報告した問題案件については、特定の学校法人に対する指導は行われるべきであり、県庁の関係組織内で情報共有すべきであるので、文書として残っていないのは不自然であると主張するが、実施機関は、異議申立人が請求している個人情報が記載された文書は存在しないと主張する。
実施機関によると、私学課が所管している私立学校にかかる相談案件等については、記録に残しているということであるが、異議申立人が問題としている案件については、私学課の管轄外である一般財団法人が所管する業務において起こったことであり、私学課においては調査を行う等の対応をすることができない案件であることから、記録に残す必要がないと判断し、記録を作成しなかったとのことである。また、異議申立人には、管轄外であるので権限がなく対応することができない旨を口頭で伝えているとのことである。
これらのことから、異議申立人から報告があった案件については記録を作成する必要がない案件であると判断し、記録を作成しなかったという実施機関の説明には、特段、不自然、不合理な点は認められず、他に異議申立人が主張する保有個人情報が存在すると認める理由もないことから、不存在を理由とした本決定は妥当であると判断する。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年 月 日 |
処理内容 |
平成25年5月8日 |
・ 諮問書の受理 |
平成25年5月8日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成25年5月17日 |
・ 理由説明書の受理 |
平成25年5月20日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼 及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成25年7月30日 |
・ 書面審理 ・ 異議申立人の口頭意見陳述 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第110回個人情報保護審査会) |
平成25年9月13日 |
・ 審議 ・ 答申 (第111回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |
委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
尾西 孝志 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 |
白石 友行 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科准教授 |