三重県個人情報保護審査会 答申第96号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成24年9月28日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、平成25年度三重県公立学校教員採用選考試験(以下「平成25年度教員採用試験」という。)において異議申立人を採用しなかった具体的な理由に係る開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成24年10月9日付け教委第20-195号で行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立書及び口頭による意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
(1) 実施機関が、「三重県公立学校教員採用選考試験実施要項」に基づきホームページに掲載している「平成25年度教員採用選考試験 面接、技能・実技試験の評価の観点等」の「第2次選考試験 技能・実技試験 評価の観点」(以下「評価の観点」という。)において、英語教諭の試験は、「英語を聴いたり話したりすることに関する意欲・態度、表現力、内容・構成力」の項目別に評価すると書かれている。しかし、平成25年度三重県公立学校教員採用選考試験第2次選考試験(以下「第2次選考試験」という。)において実施された英語インタビュー試験の評価について、開示されたのは「英語 第2次選考試験集計表(高英)」(以下「集計表」という。)で、内容は全体の合計点数のみであり、観点別の評価は記載されていなかった。実施機関は評価の観点に基づき評価を行っているはずであるので、合計点数だけでなく、各項目における観点別の評価点数も開示するべきである。
(2) 第2次選考試験で行われた面接等の評価が記載された「平成25年度 三重県公立学校教員採用 面接評価シート」(以下「面接評価シート」という。)について、三人の面接委員のうち二人の面接委員の評価が合計10箇所にわたり高い点数から低い点数へ書き直されている。点数の書き直しは不自然で、意図的に異議申立人を不合格とするためになされた改ざんの疑いが高いので、書き直された経緯や事実を調査してもらいたい。
(3) 異議申立人が第2次選考試験に不合格となったのは、○○○○又は○○○○のどちらが原因であるのかをはっきりさせてもらいたい。
4 実施機関の説明要旨
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において行った主張を要約すると、概ね次のとおりである。
(1) 異議申立人は、英語インタビュー試験の評価として、評価の観点に記載されている観点ごとの評価を開示することを求めているが、英語インタビュー試験の評価については、面接委員が観点別の基準に基づいて評価を行うが、観点別の評価を記入した文書は作成せず、全体を合計した点数を英語インタビュー試験の評価として取りまとめている。したがって、英語インタビュー試験の評価を記載した文書は、既に開示した合計点数を記載した集計表しかない。
(2) 異議申立人は、面接評価シートについて改ざんが行われていると主張するが、面接評価シートの評価の修正は、面接委員が異議申立人の面接を実施している間に、面接委員自らが修正したものである。一人当たり50分に及ぶ集団・個人面接の間に、面接委員自らが評価を修正することは通常あり得ることであり、異議申立人が主張するような改ざんではない。
(3) 異議申立人は、第2次選考試験に不合格となった理由について、○○○○又は○○○○のどちらかが原因であると主張しているが、教員採用選考試験の選考は、全ての試験項目について基準を満たす受験者の中から総合的に判断して行っており、異議申立人が主張するいずれの要因も合否判断の要素とはなっていない。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 審査会委員の回避について
本審査会は5人の委員で組織されているが、本事案の審査に関し、尾西委員から「○○○○、本事案の審査に携わるのは適当でなく、辞退したい。」として、条例第53条第1項に基づき回避の申し出があった。
会長は、調査審議の公正を妨げるべき事情があると判断し、回避の申し出を許可した。
したがって、同委員は本事案の審査には全く関与していない。
(2) 英語インタビュー試験の評価の開示について
異議申立人は、英語インタビュー試験の評価について、合計点数のみでなく、評価の観点に記載されている各項目における観点別の評価点数も開示するべきであると主張する。
しかしながら、実施機関から聴取したところによると、英語インタビュー試験の評価については、面接委員が観点別の基準に基づいて評価を行うものの、観点別の評価点数を記入した文書は作成せず、全体を合計した点数を評価として取りまとめているということである。異議申立人が開示を求めている観点別の評価点を記録した文書は存在しないという実施機関の説明には特段不自然な点は見られず、また、開示した文書以外の文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、実施機関の主張は、信用できるものである。
以上のことから、実施機関が集計表を英語インタビュー試験の評価として開示したのは妥当であると認められる。
(3) 保有個人情報の特定について
異議申立人は、平成25年度教員採用試験において不採用となった具体的な理由の開示を求めているが、実施機関は、異議申立人が不採用となった具体的な理由が記載されているものはないことから、異議申立人と連絡を取ったうえで保有個人情報の特定を行い、「面接評価シート」、「集計表」、「平成25年度三重県公立学校教員採用選考試験 論述試験 解答用紙」を開示している。
ところが、異議申立人は異議申立書等において、平成25年度教員採用試験において不採用となったのは、異議申立人が○○○○又は○○○○のどちらかが原因であるとして、どちらが原因なのかを回答してもらいたいと主張する。それに対し実施機関は、教員採用選考試験の選考は、全ての試験項目について基準を満たす受験者の中から総合的に判断して行っており、異議申立人が主張するいずれの要因も合否判断の要素とはなっていないと主張する。
そこで、審査会において実施機関から事情を聴取し、更に、第2次選考試験にかかる資料について見分をしたところ、異議申立人が第2次選考試験に不合格となった理由が○○○○又は○○○○であると記録された文書等は存在しないものと認められる。
以上により、平成25年度教員採用試験において不採用となった具体的な理由がわかるものを開示してもらいたいという異議申立人からの開示請求に対し、実施機関が行った保有個人情報の特定は妥当であると判断する。
(4) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、面接評価シートについて、異議申立人を採用しないために、面接委員が記載した評価点数を実施機関が意図的に低く改ざんしたものであると主張する。しかし、当審査会は、実施機関が行った本決定の妥当性について審査するものであり、教員採用選考試験において改ざんが行われたかどうかについて調査し判断するものではないことから、異議申立人の上記主張について判断することはできない。
(5) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年 月 日 |
処理内容 |
平成25年 2月 5日 |
・ 諮問書の受理 |
平成25年 2月 6日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成25年 2月25日 |
・ 理由説明書の受理 |
平成25年 2月25日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成25年 3月22日 |
・ 書面審理 ・ 異議申立人の口頭意見陳述 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第107回個人情報保護審査会) |
平成25年 3月26日 |
・ 実施機関に対して資料の提出依頼 |
平成25年 4月 5日 |
・ 資料の受理 |
平成25年 4月19日 |
・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第108回個人情報保護審査会) |
平成25年 5月31日 |
・ 審議 ・ 答申 (第109回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |
委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
白石 友行 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科准教授 |
※条例第53条第1項による回避
委員 |
尾西 孝志 |
三重弁護士会推薦弁護士 |