三重県情報公開審査会 答申第398号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った公文書不存在決定については、その決定を取り消し、改めて対象公文書を特定し決定すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成25年1月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った三重労働局職業安定部より三重県立津高等技術学校への報告、対応策についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成25年2月6日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
当該請求に係る公文書の特定のための実施機関からの連絡を、請求人は拒絶したことから、文書の特定については、請求書記載の内容から行い、三重労働局職業安定部から三重県立津高等技術学校に対する報告や対応策について記載した文書を求めていると判断を行った。当該文書については実施機関において受理していないため、公文書不存在と決定したものである。
4 異議申立の理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
三重県立津高等技術学校及び当時の三重県生活・文化部勤労・雇用支援室が三重労働局からの報告を文書として受理していないと主張するのは、今回の事案が事件か事故の事例に相当するものであるのに対し、紙面として残さず公文書は存在しないという県側の説明は、不自然かつ異常であり、世間の常識では考えられない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人は今回の事案について、三重労働局から津高等技術学校に連絡を行ったと聞いており、それにもかかわらず、事件や事故に相当する事案について記録がないはずはないと主張している。
一方、実施機関の説明によると三重労働局から今回の事案についての電話連絡があり、その事実を担当者が記録していること、また、その連絡があったことについては、すでに請求人に説明を実施しているとのことである。その後に提出された今回の開示請求について、文書の特定のための連絡を請求人が拒絶したことから、請求書に記載の内容から、三重労働局から送付された対応策等について記載した文書を求めているとの判断を行い、当該文書を受理していないことから、不存在決定を行ったと主張している。
しかしながら、請求人との文書特定ができない状態であったとしても、請求内容からは、報告と対応策の2点について請求していることは明らかであり、請求内容から対象公文書を限定的に捉えるのではなく、幅広く対象公文書を特定すべきであり、また、三重労働局から津高等技術学校への報告は確かに行われ、実施機関においてその記録も取られていることから、文書を不存在とした実施機関の決定は妥当とはいえない。
したがって、実施機関は本決定を取り消し、再度対象公文書の特定を行ったうえで、改めて決定すべきである。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
25. 2.25 | ・諮問書の受理 |
25. 2.26 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
25. 3. 6 | ・理由説明書の受理 |
25. 3. 7 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
25. 3.15 |
・意見書の受理 |
25. 4. 8 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
25. 4.16 |
・書面審理 (平成25年度第1回A部会) |
25. 5.14 |
・審議 (平成25年度第2回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
会長職務代理者 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学学長 |
※委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 | 川村 隆子 |
名古屋学院大学経済学部准教授 |
※委員 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |