三重県情報公開審査会 答申第394号
答申
1 審査会の結論
実施機関は本決定を取り消し、対象公文書の記載内容を精査した上で、開示・非開示の判断を行い、改めて開示等の決定をすべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成24年9月8日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「災害廃棄物の広域処理に係る関係機関会議資料」についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成24年9月21日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、災害廃棄物の広域処理に係る関係機関会議の復命書及び会議資料である。
4 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
会議主催者からの非公開の申し合わせが非開示の理由になるのであれば、役所間の談合はすべて隠蔽可能となり、情報公開制度の空洞化につながる。このことは、情報公開条例第7条の例外項目となっていないため、法的根拠がなく無効である。
県は、開示することにより誤解や憶測を招くと主張するが、開示が招くのは、真相の解明である。
開示することにより、今後反対意見にも配慮する必要性が生じ、推進派ばかりでの率直な意見の交換や意思決定ができなくなるかもしれないが、県政の民主化のために当然のことである。行政にとって不便で、多少の混乱を伴うかも知れないが、不当なことではないので、条例第7条第5号には該当しない。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
会議主催者から、「課題等を各関係機関が互いに検討し、意見交換を行う場であることから、非公開で開催すること。また、資料の外部公表不可とすること。」とされている。
資料について、安全性の確保を前提に災害廃棄物の円滑な処理のための案を例示しており、また、本資料により課題となる事項等を受入れに前向きな自治体等がそれぞれ提案し、現実的な対処方法を模索する場であったことから、開示することにより誤解や憶測を招いたり、広域処理に一方的に反対する団体等からの不当な影響を受けるおそれがあり、当県のみならず他自治体における率直な意見交換や意思決定の中立性が保てなくなるおそれがあることから、条例第7条第5号に該当するものとして非開示とした。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第5号(審議検討情報)の意義について
本号は、行政における内部的な審議、検討又は協議の際の自由な意見交換や公正な意思形成が妨げられ、歪められたり、特定の者に利益や不利益をもたらすことなく、適正な意思形成が確保される必要から定められたものである。
(3) 条例第7条第5号(審議検討情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号に該当するとして非開示とした情報は、本件対象公文書のうち当日の会議で配付された会議資料全てである。
実施機関は、非開示理由として会議主催者からの会議資料の外部公表不可との申し入れと関係自治体等が災害廃棄物の広域処理について、現実的な対処方法を模索する場であったことから、開示することにより率直な意見交換ができなくなることや、誤解や憶測を招くこと、また、広域処理に一方的に反対する団体等からの不当な影響を受けるおそれがあるとし、条例第7条第5号(審議検討情報)に該当する旨主張している。
確かに、実施機関が主張するように、災害廃棄物の広域処理については、関係団体との協議を慎重に進める必要があったことは理解できる。
しかしながら、会議主催者からの申し入れがあったとしても、そのことを以て全てを非開示とした実施機関の判断は不当であり、当審査会が本件対象公文書を見分したところ、すでに本決定において全開示している復命書記載の内容と同じ部分や国からの通知文書、会議の事項書等非開示情報に当たらない情報も多く、開示が可能な部分もあると考える。
したがって、全て非開示とした本決定を取り消し、実施機関は再度、本件対象公文書の記載内容を精査した上で、開示・非開示の判断を行い、改めて決定すべきである。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案については、実施機関の事務処理の不適切な点が見受けられることから、審査会として次のとおり意見を述べる。
本件対象公文書について頁全体を非開示にしていること、また、頁全体を非開示とした文書について、交付の必要性を請求者に確認せず交付を行ったこと等、不適切な点が縷々見受けられるが、安易で拙い事務処理は、県の情報公開制度の信頼を損なうおそれがあり誠に遺憾である。今後、実施機関は同様のことが起こらないよう、開示請求に対しもっと真摯かつ丁寧に対応すべきである。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
24.10.16 | ・諮問書の受理 |
24.10.16 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
24.11. 6 | ・理由説明書の受理 |
24.11. 9 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
24.11.29 |
・意見書の受理 |
24.12.13 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
25. 1.22 |
・書面審理 (平成24年度第9回A部会) |
25. 2.26 |
・審議 (平成24年度第10回A部会) |
25. 3.11 |
・審議 (平成24年度第11回A部会) |
25. 4.16 |
・審議 (平成25年度第1回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
会長職務代理者 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学学長 |
※委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 | 川村 隆子 |
名古屋学院大学経済学部准教授 |
※委員 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |