三重県個人情報保護審査会 答申第94号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成24年8月17日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、異議申立人の行政処分に関する決定及び添付書類全ての開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成24年8月30日付け教委第20-136号で行った部分開示決定のうち、匿名FAX(以下「本件文書」という。)については、条例第16条第2号及び第6号には該当しないとして、実施機関に対し、非開示とした決定を取消し開示を求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、以下のとおりである。
実施機関は、異議申立人が開示請求を行った行政処分関係書類のうち本件文書について、条例第16条第2号及び第6号に該当するとして非開示としているが、本件文書の内容は、異議申立人自身の情報であり、かつ、異議申立人の人権を無視し誹謗中傷したものであることが明確にできる情報であるため、開示するべきである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
異議申立人の開示請求対象保有個人情報のうち、本件文書については、以下の2つの理由により非開示とした。
本件文書は、匿名での投書であるとはいえ、異議申立人に開示されることを投書者自身が想定して投書したものとは考えられない。また、本件文書を異議申立人に開示した場合、筆跡や内容、差出人の情報等により投書者自身が識別される可能性がないとはいえないことから、投書者の権利利益を害するおそれがあると考えられる。よって、本件文書を開示することにより、開示請求者以外の個人を識別できる可能性があり、当該個人の権利利益を害するおそれがあること、また、本件文書中には、人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するために開示することが必要と認められる情報は含まれないことから、条例第16条第2号の開示請求者以外の個人情報に該当するとして非開示とした。
また、懲戒処分の量定判断とその審査の過程において匿名の者から得られる情報等は、その意図に関わらず、重要な判断材料となる可能性があるものであり、本件文書は、条例第16条第6号ニに規定されている「人事管理に係る事務」に該当する非開示情報である。また、本件文書が開示された場合、今後、匿名の情報提供者から協力が得られなくなるだけでなく、当事者や関係者に対して予断や誤解を与え、それらの者からの協力も得られなくなる可能性があり、当該事務に重大な支障をきたすおそれがある。よって、条例第16条第6号の事務事業情報に該当するとして非開示とした。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本件対象個人情報について
本件異議申立てに係る対象個人情報は、異議申立人の行政処分にかかる関係書類のうち、異議申立人に関する匿名によるFAXでの投書であり、異議申立人の個人情報である。
(2) 条例第16条第2号(開示請求者以外の個人情報)の該当性について
本号は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)を非開示とすることを定めている。
本件文書は、明らかに投書者が特定できるとまではいえないが、匿名であるとはいえ自筆で書かれたものであることから、異議申立人に開示した場合に、筆跡や内容、その他の情報により投書者が特定される可能性が残る。よって、実施機関が当該保有個人情報について、条例第16条第2号に該当するとして非開示としたことは妥当である。
(3) 条例第16条第6号(事務事業情報)の該当性について
実施機関は、本決定について、条例第16条第6号ニにも該当するとしているが、本件は、上記のとおり、同条第2号に該当し、実施機関が行った部分開示決定は妥当であると考えられるので、当審査会は同条第6号ニの該当性については判断しない。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成24年9月18日 |
・ 諮問書の受理
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平成24年9月19日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成24年9月26日 |
・ 理由説明書の受理
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平成24年9月28日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成24年10月11日 |
・ 意見書の受理
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平成24年11月21日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第104回個人情報保護審査会) |
平成24年12月19日 |
・ 審議 ・ 答申 (第105回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |
委員 |
岩﨑 恭彦 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
尾西 孝志 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 |
白石 友行 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科講師 |