三重県情報公開審査会 答申第371号
答申
1 審査会の結論
財団法人三重県産業支援センターが行った決定は、妥当である。
2 異議申出の趣旨
異議申出の趣旨は、異議申出人が平成23年12月22日付けで財団法人三重県産業支援センター情報公開実施要領(以下「要領」という。)に基づき行った「異議申出人が当事者となったコーディネート業務に対する企業からの返答書」についての開示請求(以下「本請求」という。)に対し、財団法人三重県産業支援センター(以下「財団」という。)が、平成24年1月4日付けで行った文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象文書について
本件異議申出の対象となっている文書(以下「本件対象文書」という。)は、財団が企業に対し、異議申出人が開発した特定商品を紹介したところ、企業から財団になされた返答書である。
4 財団の説明要旨
財団の主張を総合すると、次の理由により本決定が妥当というものである。
非開示とした部分は、返答した企業名及び当該企業からの意見であって、これらは財団に対してなされた返答であるため、これらを開示すれば、財団と当該企業との信頼関係に悪影響を及ぼすこととなる。その結果、企業からの協力を得にくくなるなど、企業に対する適正な支援をはじめとする業務遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、要領第7条第6号事務事業情報に該当し、非開示とした。
5 異議申出理由
異議申出人の主張する異議申出の理由は、おおむね次のとおりである。
本請求は、異議申出人が当事者となって、財団に対して特定商品の売込みを依頼し、その返答書の開示を求めたものである。財団は、企業支援を目的としているところ、非開示は支援ではなく妨害行為に等しい。
返答書は当事者である異議申出人には開示されるべきであって、非開示とすることは無責任極まりなく、財団の信用度を低下させる。返答書には開示できない情報は記載されているはずもなく、非開示は職権の濫用である。恣意的な対応であって、情報公開制度の本質と意義が歪められていることは大変遺憾である。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
要領の目的は、三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号)第47条第1項の規定に基づき、財団の文書等の開示に関し必要な事項を定めること等により、財団の保有する情報の一層の公開を図り、もって財団の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、公正な財団運営の推進に資することを目的とする。要領は、原則公開を理念としているが、文書を開示することにより、請求者以外の権利利益が侵害されたり、財団の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することがないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、要領を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 要領第7条第6号(事務事業情報)の意義について
本号は、財団の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象とされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非開示とせざるを得ないので、その旨を規定している。
(3)要領第7条第6号(事務事業情報)の該当性について
財団の説明によると、財団の主な業務は県内中小企業の支援であって、新たな販路開拓や技術提供先の紹介等といった財団業務の性質上、企業からの協力は不可欠である。販路紹介業務において、企業から返答書が届くことは稀であるが、返答書の中身を開示してしまうと、財団の信用度が低下し、企業から協力を得ることが困難になるおそれがあると、財団は主張している。
一方、異議申出人は、非開示は異議申出人に対する妨害行為であって、返答書には開示できない情報は含まれているはずもなく、職権の濫用であると主張している。
当審査会で、本件対象文書をインカメラ審理で見分したところ、非開示部分は、返答した企業名並びに当該企業からの特定商品及び財団に対する率直な意見や評価であると認められる。加えて、当該返答書は、財団に対してなされたものであって、異議申出人を含む第三者に開示することを当該企業が許容するものとまでは認めることはできない。これら非開示部分を開示すると、財団と当該企業との信頼関係にとどまらず、財団に対する信用性も損なわれ、財団が企業からの協力を得られにくくなる事態に陥ることも想定できる。そのため、中小企業の販路開拓の支援という財団の業務の性質上、当該財団業務の遂行に著しい支障が生じるおそれがあると認められるので、要領第7条第6号に該当し、非開示とすることが相当である。
したがって、本件対象文書に含まれる返答した企業名及び当該企業からの意見を非開示とした財団の判断は、妥当である。
(4)異議申出人のその他の主張について
異議申出人は、本件対象文書は当事者には開示されるべきである旨主張している。しかし、要領第5条において、何人に対しても、請求の目的を問わず、開示請求権を認めている制度であることから判断すると、異議申出人が当事者であるという事情によって、開示・非開示の判断が左右されるべきではない。
なお、コーディネート業務における対応について、財団と異議申出人との間に理解の齟齬が見受けられるので、財団においては再度説明をされるよう要望する。
(5)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
24. 1. 26 | ・諮問書の受理 |
24. 1. 27 | ・財団に対して理由説明書の提出依頼 |
24. 2. 7 | ・理由説明書の受理 |
24. 2. 9 | ・異議申出人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
24. 2. 13 | ・異議申出人の口頭意見陳述申出書の受理 |
24. 2. 24 | ・意見書の受理 |
24. 3. 8 |
・書面審理 (第369回審査会) |
24. 3. 30 |
・審議 (第371回審査会) |
24. 4. 20 |
・審議 (第373回審査会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
岡本 祐次 |
元三重短期大学長 |
※委員 |
川村 隆子 | 名古屋学院大学経済学部准教授 |
委員 |
樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |