三重県個人情報保護審査会 答申第90号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成19年4月10日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、異議申立人の分限免職処分を三重県教育委員会(教育長)が専決決裁した文書に係る開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年4月23日付けで行った教委第20-57号による開示決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書等において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のとおりである。
開示決定された文書は、教育委員会への提案のための決裁であり、教育長が処分を専決決裁した文書ではない。決裁文書の開示を求める。
4 実施機関の理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
異議申立人は、決裁文書の「教育委員会に提案してよろしいか」という表記を捉え、本決裁文書は教育委員会への提案のための決裁であり、教育長が専決決裁した文書でないと主張するが、本決裁は、当該処分について、教育長が実質的に決定を下した文書であり、異議申立人の請求内容に対する文書としては、他には該当文書が存在しないことから、実施機関として本文書の開示を行ったものである。
仮に、「職員の分限処分について」の起案決裁文書が異議申立人の求めていた文書でなかったとしても、本文書以外に該当する文書は存在しないことから、異議申立人にとって必要な情報は入手できたものと思料され、異議申立人が、異議を申し立てる理由はないものと考える。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 開示決定の妥当性について
異議申立人は、分限免職処分を決裁した文書の開示を請求したところ、本決定により開示された本件対象保有個人情報は、当該処分について「教育委員会に提案すること」を決裁した文書であるから、実施機関の文書の特定は誤っていると主張している。
確かに、異議申立人が指摘するように、本件対象公文書の起案の本文には「職員の分限処分について、別紙により教育委員会に提案してよろしいか。」と記載され、添付文書には「公立学校職員の分限処分について別紙のとおり提案する。」と記載されている。
実施機関の説明によると、分限処分の際には、職員分限審査委員会を開催し、その審査委員会で教育長も含め最終的な決定をする。本件対象公文書は、その決定に基づいて、教育委員会事務局が、慎重を期すために、教育委員会に提案してよいかという起案を行ったものであるが、実質的に教育長が分限処分を決定した文書であり、この文書以外には対象となる文書は存在しない。また、特定した文書は確かに教育委員会に提案する起案文書であるが、当時、教育委員会事務局内部では同種の事案に関して行われる通常の処理として、教育委員会に提案するという起案により実質的に処分を行っていたとのことであった。
本件において、特定された起案をもって免職処分辞令等への押印・交付がなされていることなどからも、当該起案により実質的に処分を行っているとする実施機関の説明に不自然な点は見られない。
以上のことから、本件対象保有個人情報は、教育委員会に提案するという記載がなされているが、実質的に分限処分についての起案・決裁を行った文書であると解され、本件開示請求に対し本件対象保有個人情報を特定した本開示決定は、妥当であると認められる。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
行政機関が、その作成する文書をもって、その事務を遂行することから考えると、意思決定の過程が文書自体から読み取れることが必要である。本件開示決定は妥当であるとはいえ、少なくとも分限免職等の不利益処分に関しては、その起案において処分過程を明確に記載するべきと考えられる。
実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点からも、文書作成及び文書管理について適正な運用をするとともに改善に努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成19年 7月 6日 |
・ 諮問書の受理
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平成19年 7月13日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成19年 7月23日 |
・ 理由説明書の受理
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平成19年 7月26日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成23年 7月26日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明
(第96回個人情報保護審査会) |
平成23年 8月26日 |
・ 審議 ・ 答申
(第97回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
浅尾 光弘 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 |
白石 友行 |
三重大学人文学部講師 |
会長職務代理者 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科講師 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |