三重県個人情報保護審査会 答申第88号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成19年11月19日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、津地方裁判所平成○(○○)第○号分限免職取消請求事件証拠書類乙第32号証の保存期間を示す文書に係る開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年12月3日付けで行った教委第20-362号による不存在決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のとおりである。
三重県教育委員会の職員が作成した文書を、起案・決裁をせずに三重県教育委員会が保存できない。
4 実施機関の不存在理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
乙32号証を作成する際や裁判所に提出する際に起案を行えば、起案文書に保存期間が表示されるので起案文書が保存期間を定めた文書に該当する可能性はあるが、当該書証は、口頭で上司の了解を得た上で、人材政策室の本件訴訟の指定代理人に提出し、訴訟代理人及び指定代理人の判断のもと、書証として裁判所に提出されたものであり、文書による起案・決裁を行っていない。
このため、実施機関は、当該書証に係る保存期間を表示した起案文書を保有しておらず、不存在決定を行った。
なお、文書の保存期間については、三重県公文書管理規程で定められており、訴訟等に関する重要な文書は保存期間10年の文書と、訴訟等に関する特に重要な文書は保存期間30年の文書とされている旨を本件不存在決定通知書の備考欄に記載し、必要な説明も行っている。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 不存在決定の妥当性について
本件請求は、異議申立人に係る裁判に提出された書証の保存期間を示す文書を保有個人情報として開示請求がなされたものである。
異議申立人は異議申立書において、起案・決裁をせずに、作成した文書を保存できないと主張しており、当審査会で実施機関の起案様式を確認したところ、起案様式の中には、保存期間を記す項目が存在していることから、異議申立人が求めている情報は、文書管理に関する規程自体ではなく、実施機関が乙32号証を作成・提出するにあたり起案した文書の起案様式であると考えられる。実施機関からの説明においても、この起案様式が存在すれば、対象保有個人情報に該当する可能性は認識しているとのことであった。
そこで、当該書証に関する起案様式の有無について確認したところ、裁判における書証の提出に際しては、通常の決裁権者による文書決裁を経るのではなく、一切の権限を委任した訴訟代理人によって最終的に判断され、裁判所に提出されることから、乙32号証についても文書による起案・決裁は行っておらず、本件請求対象保有個人情報となりうる起案様式は存在しないとのことであった。
これらの実施機関の説明は、特に不合理とまではいえず、実施機関の行った不存在決定は妥当であると認められる。
なお、公文書の保存期間については、三重県公文書管理規程等により定められているが、文書管理に関する規程自体については、個人情報ではないことから、当該請求に関する対象保有個人情報とはなりえない。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成20年 2月18日 |
・ 諮問書の受理
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平成20年 2月20日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成20年 2月29日 |
・ 理由説明書の受理
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平成20年 3月 5日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成23年 6月21日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明
(第95回個人情報保護審査会) |
平成23年 7月26日 |
・ 審議
(第96回個人情報保護審査会) |
平成23年 8月26日 |
・ 審議 ・ 答申
(第97回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
浅尾 光弘 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 |
白石 友行 |
三重大学人文学部講師 |
会長職務代理者 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科講師 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |