三重県個人情報保護審査会 答申第86号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った存否を明らかにしない決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、平成17年11月17日付けで異議申立人が三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、異議申立人の親族が異議申立人について三重県教育委員会と交渉を行ったことについての資料を求める開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成18年9月5日付けで行った教委第20-293号による存否を明らかにしない決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
異議申立人が今回開示を求めたのは、異議申立人の親族が異議申立人と連絡をとりながら三重県教育委員会と手紙で交渉などを行ったことについての資料である。
実施機関は、「個々の事実の有無を開示することにより個人のプライバシーを侵害するおそれがある」として存否を明らかにしない決定を行ったが、もとより異議申立人が親族に依頼して教育委員会と交渉に入ってもらったものであり、教育委員会のいう「個人のプライバシーの侵害」の生じるおそれなどありえない。
4 実施機関の存否を明らかにしない理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
当該請求は、その存否を答えるだけで、請求者以外の第三者が、実施機関との間で請求者に関わる交渉を行ったか否かという、請求者以外の個人に関する情報を開示した場合と同様の結果をもたらすものである。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立てに係る資料並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 存否を明らかにしない決定の妥当性について
ア 本件対象個人情報について
本件異議申立てに係る対象個人情報は、異議申立人が親族に依頼して三重県教育委員会と交渉などを行ってもらったことについての資料である。
イ 条例第16条第2号(開示請求者以外の個人情報)について
条例第16条第2号は「開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該個人を識別することができるもの、又は識別することはできないが、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあるもの」は、非開示とすることができることを定めたものであり、「開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれ」とは、法令等又は社会通念に照らし、当該個人が有すると考えられる権利利益が侵害されるおそれがある場合をいい、具体的な判断に当たっては、開示請求者と当該個人との関係、個人情報の内容等を勘案して個別に判断することになる。
また、一般に、第三者が行った相談や交渉等の記録については、その内容はもとより、相談・交渉等を行ったか否かという事実関係の有無についても、「開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれ」が生じる場合があり、慎重な判断が求められるところである。
ウ 条例第19条(保有個人情報の存否に関する情報)について
条例第19条は「開示請求にかかる保有個人情報の存否を答えるだけで、非開示情報を開示することとなるとき」は、当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該請求を拒否できることを定めたものであり、存否応答拒否により開示請求を拒む必要がある個人情報は、実際に保有個人情報が存在するか否かを問わず、常に存否応答拒否をすべきものである。
エ 条例第19条(保有個人情報の存否に関する情報)の該当性について
本件請求では、交渉を行ったとされる第三者が特定されていることから、個人識別性を排除することが不可能なため、当該第三者が交渉を行ったか否かについても、「開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれ」があるかどうかの判断を行う必要がある。
この点について、実施機関は、請求者以外の第三者が、実施機関との間で請求者に関わる交渉を行ったか否かということが、当該第三者の権利利益を侵害するおそれがあることから、存否応答拒否とした旨主張している。
一方、異議申立人は、自らが依頼したものであるので、その存否については非開示情報には該当しないと主張している。
本件請求の場合、仮に交渉内容が全て非開示となると判断しても、記録の有無が示されれば交渉の有無や回数が明らかになることとなる。この結果が、異議申立人の意に沿わない状況であった場合、異議申立人と当該第三者との関係を悪化させ、当該第三者の権利利益の侵害をもたらす可能性は十分に考えられることから、開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるため存否を明らかにしないという実施機関の判断は、不合理とはいえない。
したがって、実施機関の行った存否を明らかにしない決定は妥当である。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成20年 1月18日 |
・ 諮問書の受理
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平成20年 1月23日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成20年 2月 4日 |
・ 理由説明書の受理
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平成20年 2月12日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成23年 3月23日 |
・ 書面審理 (第92回個人情報保護審査会) |
平成23年 4月19日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第93回個人情報保護審査会) |
平成23年 5月24日 |
・ 審議 (第94回個人情報保護審査会) |
平成23年 6月21日 |
・ 審議 ・ 答申 (第95回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会 長 |
浅尾 光弘 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 (平成23年3月31日まで) |
合田 篤子 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 (平成23年4月1日から) |
白石 友行 |
三重大学人文学部講師 |
会長職務代理者 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
藤枝 律子 |
三重短期大学法経科講師 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |