三重県情報公開審査会 答申第366号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成23年1月21日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の県立学校における暴力事件及びいじめについての教育委員会への報告に関する文書」についての開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成23年2月3日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により本決定は取り消すべきであるというものである。
生徒が教師から暴力を受けたことやいじめを受けた重大な事件であるにもかかわらず、学校からの報告内容や異議申立人が県教育委員会を訪れるなどした議事録が残っていないのは不自然である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
県立高等学校における生徒指導については、生徒の在籍する学校が第一義的に行うものであり、「三重県立学校の管理運営に関する規則」第48条及び49条に定められている場合に限り、校長は県教育委員会に報告しなければならないとされている。
今回の案件について当該学校が上記に該当しないものであると判断したことから、実施機関においては、当該案件に係る公文書の取得及び作成を行っていないため、不存在の決定を行ったものである。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人は、開示請求に係る公文書について、学校からの報告内容や実施機関を訪れるなどした議事録が存在するはずであり、これが存在しないのは、不自然であると主張している。確かに、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号)第6条においては、事務の処理は、事案が軽微な場合を除き、原則として文書によることを規定しており、実施機関の職員が当該訪問内容を聴き取り、議事録等を作成し、実施機関において共有すべきであったと考えられる。しかしながら、そのような事務処理の適否を除けば、当該訪問に係る対応状況を上司等へ口頭で報告を行い、情報共有したとする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められず、当該公文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、当該公文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
したがって、事務処理の方法に問題はあるものの、本決定自体は妥当である。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のとおり、実施機関の事務処理は、三重県教育委員会処務規程で定められた手続を経ていないため、異議申立人の主張に係る文書の作成その他事務処理の経緯が不明確となっている。
以前にも実施機関における公文書管理のあり方として適当でないと考えられる運用があったため、当審査会においては、答申第314号(平成20年3月21日)で三重県教育委員会処務規程その他の規定に従い、適切に事務を処理すべきであるとの意見を附したにもかかわらず、何ら改善がされていない状況は極めて遺憾である。
あらためて実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点からも、今後は同様のことがないよう真摯に対応するとともに、三重県教育委員会処務規程に基づき適切に事務を処理することを徹底し、公文書の管理について適切な運用に努められたい。
7 審査会の処理通過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
23. 3. 9 | ・諮問書の受理 |
23. 3. 10 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
23. 3. 31 | ・理由説明書の受理 |
23. 3. 31 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
23. 4. 28 |
・書面審理 (第358回審査会) |
23. 5. 20 |
・審議 (第360回審査会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
岡本 祐次 |
元三重短期大学長 |
※委員 |
川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部准教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 |
三重短期大学教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。