三重県情報公開審査会 答申第352号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定のうち、非開示とした「監理技術者の生年月日」については開示すべきであるが、その余の判断は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成21年10月20日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定地域の特定法人に係る不法投棄産廃の補助金県費負担による埋立工事について分かる全ての文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が対象公文書を特定し、平成21年12月2日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、以下の書類である。
(1)「品質管理に関する技術資料」、「特記課題に関する技術資料」、「総合評価方式技術提案履行確認協議書」、「総合評価方式技術提案履行確認書」、「工事打合簿」、「総合評価方式技術提案履行不能協議書」(以下「本件対象公文書(ア)」という。)
(2)「工事打合簿(事前家屋調査報告書)」(以下「本件対象公文書(イ)」という。)
(3)「現場代理人等選任通知書」、「工事打合簿(現場代理人等選任通知書、経歴書、1級技術検定合格証明書、監理技術者資格者証、監理技術者講習修了証、〈交通誘導警備業務2級〉合格証明書)」(以下「本件対象公文書(ウ)」という。)
4 異議申立ての理由
異議申立人が主張する異議申立ての理由は、概ね次のとおりである。
(1) 簡易総合評価方式による入札に係る技術提案の内容については、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年11月27日法律第127号)」(以下「適化法」という。)の趣旨により、全面公開されるべきであるが、第三者照会を行った上で部分開示としたことは、説明責任を回避するものであり、不作為の違法として糾弾されるべきものである。
(2) 損失補償基準に基づき補償が適正に行われたか否かを確認するには、建物調査の内容の開示が必要であり、部分開示としたことは不当である。
(3) 監理技術者等の証明書等に記載されている氏名や生年月日等の個人情報は、県土整備部建設業室で閲覧できる上、工事現場で提示を求められれば提示する義務があるから、部分開示は不当である。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定が妥当というものである。
(1)「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針について(平成17年8月26日閣議決定)」(以下「基本方針」という。)第2の3(2)において、『一般的な工事においては、工程管理や施工上配慮すべき事項、品質管理方法等についての工夫を技術提案として扱うこと、また、技術提案自体が提案者の知的財産であるという観点から、それを他人に知られることがないように留意すること』とされている。
また、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年3月31日法律第18号)」(以下「品確法」という。)第3条第5項には、『事業者の能力が適切に評価され、入札及び契約に適切に反映されること、また、事業者の積極的な技術提案及び創意工夫が活用されるように配慮すること』とされているが、提案内容が開示された場合、その提案内容が一般化され、事業者の能力が適切に評価されなくなること、すなわち、各参加者の技術評価点に差がつかず、価格競争だけで落札者が決定する危険性、及び本来の技術力を有さない事業者が落札する危険性がある。そうなれば、総合評価落札方式が本来の目的とする技術力評価の機能が形骸化し、公正な競争により形成されるべき適正な価格と品質の契約及びその履行が困難となってしまう。加えて、国や他県では公開されていない提案内容を公開すれば、本県での入札においては、独自の高度なノウハウを持つ事業者ほど、積極的な技術提案及び創意工夫を控えるおそれがあり、品確法の趣旨・目的から大きく外れてしまうことになる。
これらのことは、他の同種工事の入札において、当該落札事業者の競争力を阻害することにも繋がることから、技術提案については事業者の知的財産に当たり、条例第7条第3号の「公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められもの」に該当し、部分開示とすべきである。
また、異議申立人は、適化法の趣旨に基づいて開示すべきだと主張しているが、この法律の趣旨は、透明性確保の観点から、「契約の相手方の名称、契約金額、落札者の決定の理由」を公表すべきというものであり、技術提案の内容を開示すべきというものではない。県は、落札者の決定の理由として、入札結果情報を公表しているが、この入札結果情報には、入札参加者の名称と入札金額、価格評価点、技術評価点、評価値が書かれている。これを落札者決定の理由として公表しており、適化法の趣旨に沿った対応を行っているところである。
さらに、技術提案の内容は、国や他県では公開されていない状況であるが、本県では、条例第17条1項に基づく第三者への意見照会を行い、事業者の了承を得られた場合には開示しており、情報公開制度の趣旨に則った対応を行っている。
以上のことから、技術提案の内容を開示することにより、法人の競争上の地位その他正当な利害を害すると認められるため、条例第7条第3号に該当すると判断し、部分開示としたものである。
(2) 建物調査の内容は、個人住宅の構造、間取り及び損傷状況に関する情報であり、開示することにより私生活上の権利利益を害するおそれがあるため、条例7条2号に該当すると判断し、部分開示としたものである。
(3) 監理技術者等の証明書等に記載された生年月日、住所、本籍、最終学歴、卒業年月日、顔写真及び印影の情報は、個人識別情報であるため、条例第7条第2号に該当すると判断し、部分開示としたものである。
6 審査会の判断
実施機関は、本件対象公文書(ア)の技術提案内容については、条例第7条第3号(法人情報)に該当し、本件対象公文書(イ)の事前家屋調査報告書の内容並びに本件対象公文書(ウ)の監理技術者等の生年月日、住所、本籍、最終学歴、卒業年月日、顔写真及び印影については、同条第2号(個人情報)に該当すると説明するので、以下、これらの部分の非開示情報該当性について検討する。
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3)条例第7条3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
しかしながら、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報でであっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる影響から県民等の生活又は環境を保護するため公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、開示が義務づけられることになる。
(4)本件対象公文書(ア)の条例第7条第3号(法人情報)の該当性ついて
現在、入札に関する情報は、適化法により、競争性及び透明性の確保を目的として、契約の相手方、契約金額等の公表が義務づけられているが、技術提案書については、事業者独自の創意工夫や工事施工上の詳細なノウハウが記載された文書であり、品確法第8条第1項に基づく基本方針においても、『技術提案は必ずしも高度な技術を要するものではなく、技術的な工夫の余地が小さい一般的な工事においては、技術審査において審査した施工計画の工程管理や施工上配慮すべき事項、品質管理方法等についての工夫を技術提案として扱うものとする。…(中略)… 各発注者は、説明責任を適切に果たすという観点から、落札者の決定に際してはその評価の方法や内容を公表しなければならない。その際、発注者は、民間の技術提案自体が提案者の知的財産であることに鑑み、提案内容に関する事項が他者に知られることのないようにすること等、その取扱いに留意する』こととされている。
当審査会において本件対象公文書を見分したところ、本件非開示部分には、県が入札時に指示した事項のうち、どの項目に優先して取り組み、如何なる方法で充足し、結果を証明するための資料として何を提出するのか、工事現場においてどのような配慮をすべきか等の当該落札事業者(以下「落札者」という。)の応札技術、具体的な技術提案が記載されており、当該部分の記載内容は、全体として、落札者の施工経験、施工実績等に基づく独自のノウハウに当たるものと言うことができる。
したがって、当該部分を開示すると、他の同種工事の入札において、競合他社等が当該部分の記載内容を模倣した技術提案書を作成・提出することが可能となり、競合他社等による対抗的な事業活動が行われる等、落札者の競争力を阻害することにも繋がることから、技術提案書については事業者の知的財産に当たり、条例第7条第3号に該当し、非開示とすべきである。
また、異議申立人は、簡易総合評価方式による入札に係る技術提案書の内容については、適化法の趣旨により、全面公開されるべきであると主張しているが、同法第8条及び同法施行令第7条第2項は、契約の相手方、契約金額及び落札者決定の理由を公表すべきというものであり、技術提案書の内容を開示すべきというものではない。県は入札情報サービスの中で、落札者決定の理由として、入札参加者名、入札金額、価格評価点、技術評価点及び評価値を公表する等適化法の趣旨に沿った対応を行っていることが認められる。さらに、基本方針では『技術提案自体が提案者の知的財産であることに鑑み、提案内容に関する事項が他者に知られることのないようにする』とされ、提案内容はもとより、提案するにあたりどの項目に着目したか、選択した項目数、提案の優先順位等がすべてが技術提案に含まれ、知的財産として他者に知られることのないように配慮することとされていることから、全面公開を求める異議申立人の主張は認められない。
以上のことから、本件非開示部分は条例7条第3号本文の「競争上の地位その他正当な利益を害する」に該当し、同号ただし書イ、ロ又はハの情報には該当するとは認められないことから、非開示とすることが妥当である。
(5)本件対象公文書(イ)の条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
本件対象公文書である「事前家屋調査報告書」には、(1)事前調査をした調査法人の担当者の印影、(2)所有者の住所・氏名、(3)所有者の印影・電話番号、(4)建物等の概要(構造、経過年数等)(5)損傷調査書(各部屋の損傷の状況)、(6)間取図・平面図・立面図・求積図、(7)写真(公道から撮った建物等の全景写真〈以下「建物等の外部等写真」という。〉)、(8)写真(建物等の内部写真、敷地内から撮った外観の詳細写真〈以下「建物等の内部等写真」という。〉)、(9)ネガフイルム等の情報が記録されている。
条例第7条第2号は,「個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るもの」を非開示と規定し、同号から除かれるものとして、ただし書イとロを掲げている。
当該報告書は、建物等について調査した結果をまとめたものであるが、報告書の所有者の氏名欄には個人の氏名が記載されており、このような報告書は、全体として当該各建物等の所有者の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であることから、条例第7条第2号本文に該当すると認められる。
また、本報告書は、特定個人が所有する建物等の財産の状況を示したものであって、工事による損傷があった場合にだけ、実施機関が当該建物等の所有者との間で個々に損失補償交渉を行うために作成した資料である。建物については,所有状況が不動産登記簿に登記されて公示されるものの、地権者がどのような工作物、動産、植栽等を有するかについては、公示されているものではない。また、必ずしも一般人の目に触れるものではなく、外部から観察することができるにとどまり、建物の内部の構造、使用資材、施工態様、損耗の状況等の詳細を知ることができない。このような建物等の所有者の個人に関する情報は「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」とは認められないから、条例第7条第2号ただし書イには該当せず、その内容及び性質から、同号ただし書ロにも該当しない。
次に、条例第9条第2項は、公文書に特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名等特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分(以下「個人識別部分」という。)を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分を開示しなければならないと規定している。
実施機関は、報告書の記載事項のうち、(2)所有者の住所・氏名、(7)写真(建物等の外部等写真)を開示する一方で、建物等の所有者に係る情報の個人識別部分として、(3)所有者の印影・電話番号、(4)建物等の概要(構造、経過年数等)、(5)損傷調査書(各部屋の損傷の状況)、(7)間取図・平面図・立面図・求積図、(8)写真(建物等の内部等写真)、(9)ネガフイルムを挙げ、非開示としている。
これは、本来であれば、(2)所有者の住所・氏名、(3)所有者の印影・電話番号、(6)間取り・平面図・立面図・求積図、(7)写真(建物等の外部等写真)の個人識別部分を除けばそれ以外は、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないものであるが、本件の場合、特定地域周辺に調査対象の家屋が1軒しかなく、(2)所有者の住所、氏名は明らかなため、それ以外の個人識別部分を除いた上で、公にすれば個人の権利利益が害されるおそれがあるものを、さらに非開示にしたものと認められる。
特に、建物等の内部(間取り、各部屋の損傷の状況、内部写真)は、当該建物等の所有者にとって私生活に密接に関連する極めて機微な情報と考えられ、個人が識別される状況で公にすれば、当該建物等の所有者の権利利益が著しく害されるおそれがあると認められる。
また、(7)写真(建物等の外部等写真)は、当該建物等の外観等で分かる情報であることから、公にしたとしても、当該建物等の所有者の権利利益が害されるおそれはないとして開示したものであるが、建物等の外観写真は、当該建物が位置する敷地内・敷地外のあらゆる方向から、建物の全景又は一部が大きく写し出されているため、通常外部からは知り得ない建物の状況や、本件調査が行われた時点における所有者の生活状況を窺い知れる写真が含まれており、これらすべてが開示されると所有者のプライバシーが侵害されるおそれがある。したがって、建物等の外観写真は、公道からの「全景写真」のみ開示し、残りの敷地内から撮った「外観の詳細写真」を非開示としたものと認められる。
なお、(9)ネガフイルムは、条例第9条第1項に規定する「非開示情報に係る部分を容易に区分して除く」ことができないものに該当する。
以上のことから、本件対象公文書のうち、(2)所有者の住所・氏名、(7)写真(建物等の外部等写真)を開示する一方で、(3)所有者の印影・電話番号、(4)建物等の概要(構造、経過年数等)、(5)損傷調査書(各部屋の損傷の状況)、(6)間取図・平面図・立面図・求積図、(8)写真(建物等の内部等写真)、(9)ネガフイルムは、条例第7条第2号に該当し、同号ただし書イ又はロの情報には該当するとは認められないことから、非開示としたことは妥当である。
(6) 本件対象公文書(ウ)の条例7条第2号(個人情報)の該当性について
本件対象公文書の経歴書等には、監理技術者等の氏名、生年月日、住所、本籍、最終学歴、卒業年月日、顔写真及び印影が記録されている。
建設業法(昭和24年5月24日法律第100号)第26条第1項及び第2項では、建設工事の適正な施工を確保するため、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理を司る者として、主任技術者又は監理技術者の設置を求めている。
建設業法第40条及び同法施行規則第25条では、建設業者は、許可を受けた建設業の名称等、国土交通省令で定める事項を記載した標識を、建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に掲げることを規定しており、この表示の一部として、当該建設業者の代表者の他に、主任技術者又は監理技術者の氏名、資格名及び資格者証交付番号を記載することになっている。当該標識の掲示により、主任技術者等の氏名・資格名等の情報は公にされた情報と言える。
また、建設業法第6条第6号及び同法施行規則第4条第1項第2号は、建設業の許可申請に際して「国家資格者等・監理技術者一覧表」を提出することを定めている。当該一覧表には、建設業法第7条第2号ハ又は同法第15条第2号イ、ロ若しくはハに該当する者(国家資格者等・監理技術者)の氏名、生年月日及び資格について記載することとされており、これらの提出書類は、同法第13条の規定により、公衆の閲覧に供されている。
さらに、建設業法上は現場代理人を置く必要はないが、同法第19条の2は、現場代理人を置く場合には、現場代理人の選任等に関する通知義務を定めている。三重県発注工事の場合、契約書において現場代理人を置くこととしているが、現場代理人に関する書類の閲覧については、建設業法に特段の定めはなく、公衆の閲覧に供されているわけではない。
なお、建設業法第26条第5号は、監理技術者は、発注者から請求があったときは、監理技術者資格者証を提示しなければならないことを定めているが、当該資格者証は何人に対しても提示するべき性質のものではない。
したがって、監理技術者、主任技術者及び現場代理人となる者の住所、本籍、最終学歴、卒業年月日、顔写真及び印影は、閲覧に供されているわけではなく、条例第7条第2号本文の「個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るもの」に該当し、その内容及び性質から、本号ただし書イ又はロの情報に該当するとも認められないことから、非開示が妥当である。そもそも経歴書等に記載された情報は、まさにプライバシーに関する情報であり、公益上特に必要でない限り安易に公開されるべきものではない。
しかし、監理技術者、主任技術者(建設業法第7条第2号イ、ロに該当する者を除く)の氏名及び生年月日については、上記のように同法第13条の規定により閲覧に供されるべき情報であるから、本号ただし書イに該当し、開示すべきものである。
そこで、当審査会において本件対象公文書を見分したところ、本件公文書に記載された3人の技術者は、すべて監理技術者であることから、名前に加え、生年月日についても「法令の規定により公にされ、又は公にすることが予定されている情報」と認められるから、条例第7条第2号ただし書イに該当し、開示することが妥当である。
しかしながら、主任技術者であっても、建設業法第7条第2号イ、ロに該当する者は、「国家資格者等・監理技術者一覧表」に記載する必要はないため、氏名及び生年月日は閲覧に供されていない。したがって、現場代理人、主任技術者(建設業法第7条第2号イ、ロに該当する者)の生年月日については、同号ただし書イ又はロの情報には該当するとは認められないから、非開示になる。なお、監理技術者又は主任技術者(建設業法第7条第2号イ、ロに該当する者を除く)が、現場代理人を兼ねる場合は、現場代理人の生年月日は開示することになる。
最後に、警備業法(昭和47年7月5日法律第117号)第18条及び警備員等の検定等に関する規則(平成17年11月18日号外国家公安委員会規則第20号)第3条により、交通誘導警備業務の合格証明書については、関係者(警察官又は発注者)から提示を求められれば提示する義務があるとされているが、何人に対しても提示するべき性質のものではなく、閲覧制度もない。
したがって、交通誘導警備員の住所、生年月日及び顔写真については、条例第7条第2号本文の「個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るもの」に該当し、その内容及び性質から、本号ただし書イ又はロの情報に該当するとも認められないことから、非開示が妥当である。
(7) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案については、実施機関の事務処理の一部に不適切な点が見受けられることから、審査会として次のとおり意見を述べる。
本件対象公文書の中で、開示すべき報告書の所定の「様式」について頁全体を非開示にしていること、また、非開示にすべき印影等の個人識別情報を開示していること等々、不適切な点が縷々見受けられるが、安易で拙い事務処理は、県の情報公開制度の信頼を損なうおそれがあり誠に遺憾である。今後、実施機関は同様のことが起こらないよう、開示準備の際に内容を精査する等、開示請求に対しもっと真摯かつ丁寧に対応すべきである。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
21.12.16 | ・諮問書の受理 |
21.12.21 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
22. 1.15 | ・理由説明書の受理 |
22. 4.22 |
・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第339回審査会) |
22. 5.21 |
・審議 (第340回審査会) |
22. 6.18 |
・審議 (第342回審査会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部准教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
※委員 |
丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。