三重県個人情報保護審査会 答申第66号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った開示決定を取り消し、不存在決定をすべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成18年1月13日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、異議申立人に関する規律違反報告書中に記述のある、異議申立人のホームページ上で職務命令を誹謗中傷と記している具体的な箇所についての開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、異議申立人が平成17年10月6日付けで請求し、既に開示済みであった「三重県を相手方にして裁判をおこしたことにかかるすべての書類」の一部を対象公文書として特定した平成18年5月8日付け教委第20-70号による開示決定の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明趣旨
実施機関の主張を総合すると、概ね次のとおりである。
当該箇所を示す作成された文書はないが、異議申立人のホームページの写しに記載されているため、同ホームページの写しを含む開示済みの資料の一部を対象公文書として特定した。また、この他に対象となる公文書はない。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
異議申立人が三重県を相手方にして裁判をおこしたことにかかるすべての書類の一部には、異議申立人のホームページ上で職務命令を誹謗中傷と記している箇所についての記載はなかった。このようなもので情報開示したとは到底言えない。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本決定の妥当性について
本件開示請求は、異議申立人に関する規律違反報告書において、『HP上で職務命令を「中傷・誹謗」と記している。』との記述があるため、その記述に関して、具体的な箇所を示す資料の開示を求めたものであると認められる。
これに対して実施機関は、別の請求において開示済みであった異議申立人のホームページの写しを含む書類を特定し、その一部を対象公文書として開示決定をした。
審査会で対象公文書を確認したところ、異議申立人のホームページの写しには、当該職務命令を受けた日時と同日時の記述として、「誹謗中傷」との文言が見受けられた。しかしながら、この「誹謗中傷」と記載された部分は、当該職務命令を受けた日時と同日時の記述ではあるものの、「ホームページを誹謗中傷された」との記載であり、明確に職務命令そのものを誹謗中傷と記載しているとまではいえないと考えられる。
また、異議申立人は当該ホームページ全体の開示を求めているわけではなく、当該ホームページのどの部分の記載が職務命令を誹謗中傷と記している箇所であるかを特定した保有個人情報の開示を求めているものであると考えられる。
この点について、実施機関によると、異議申立人が求める具体的な箇所を特定した保有個人情報は存在していないとのことであった。
条例に基づく保有個人情報開示制度においては、実施機関が現に保有する個人情報について開示決定等を行えば足りるのであるから、対象となる公文書が存在しないのであれば、実施機関は不存在決定をすべきである。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成19年 2月14日 |
・ 諮問書の受理
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平成19年 2月23日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成19年 3月8日 |
・ 理由説明書の受理
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平成19年 3月15日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成22年 4月22日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議
(第81回個人情報保護審査会) |
平成22年 5月27日 |
・ 審議 ・ 答申
(第82回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
浅尾 光弘 |
弁護士 |
委員 |
合田 篤子 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 (平成22年4月28日まで) |
樹神 成 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部教授 |
委員 (平成22年4月29日から) |
藤枝 律子 |
三重短期大学講師 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |