三重県個人情報保護審査会 答申第56号
答申
1.審査会の結論
実施機関が行った開示決定は、審査会が不存在決定をすべきとした部分を除き、妥当である。
2.異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年12月23日、平成18年1月3日及び平成18年1月6日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った以下の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成18年1月6日付けで行った教委第20-550号による開示決定の取消しを求めるというものである。
(1) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案4ページ6行目「平成○年○月○日付でです ね、○○の教諭に採用して以来ですね、生徒に積極的に係わろうとする姿勢がですね、非常にかけておりました。そして教材のですね、準備も十分でなく、生徒の反応を見てですね、自分なりに授業することがですね、満足にできず」との発言の根拠となる資料(以下、「請求1」という。)
(2) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案5ページ1行目「○○でですね、適格性を欠くということは認められたわけで」との発言の根拠となる資料(以下、「請求2」という。)
(3) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案4ページ17行目「学校の都合を考えずにですね、突然休んだり、或いは学校の行事に協力しようとする姿勢に乏しく」との発言の根拠となる資料(以下、「請求3」という。)
(4) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案4ページ10行目「生徒からですね、不審の声が私共教育委員会の方へもですね、現在届けられております。」との発言の根拠となる資料(以下、「請求4」という。)
(5) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案5ページ7行目
1、「平成○年から○年頃にかけてでございますけれども、また再度自己中心的でですね、授業も満足にできないとこういった状況が生じてきました」との発言の根拠となる資料(以下、「請求5-1」という。)
2、「校長としてもですね、色んな形で指導してきたんですけども、一向に改善が見られない」との発言の根拠となる資料(以下、「請求5-2」という。)
(6) 平成○年○月○日教育委員会定例会議録第○号議案4ページ18行目「学校の円滑な運営に支障が生じておりまして」との記述の根拠となる「支障が生じた学校の運営」の具体的な事項とそれを証する資料(以下、「請求6」という。)
3 実施機関の開示理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
開示請求の内、請求1、請求2、請求5については異議申立人の懲戒審査委員会の資料及び口頭の報告や議論等を元に、実施機関及び人材政策チームマネージャーが総合的に判断したものであるとした上で、当該委員会の資料を開示する決定をした。
請求3については、懲戒審査委員会に提出された資料のうち、平成○年○月○日付け○○第○号規律違反報告、平成○年○月○日、同年○月、同年○月○日、同年○月○日付け報告を開示する決定をした。
請求4、請求6については、懲戒審査委員会に提出された資料のうち、平成○年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、平成○年○月○日付け報告及び、生徒の委任状2通、平成○年○月○日付けの生徒からの要望書、実施機関・教育長宛の生徒の要望書をそれぞれ開示する決定をした。
懲戒審査委員会に出された資料はこれですべてであり、この資料に基づいて発言している。これ以外に出された文書はない。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書及び意見書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
請求1、請求2、請求5について、実施機関が決定した文書に、異議申立人が求めた個人情報「適格性を欠くということが認められた具体的な根拠」、「授業がまともにできないという具体的根拠」「校長の具体的な指導内容」は一切記載されていなかった。
請求4、請求6について、実施機関が決定した、「平成○年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、同年○月○日、平成○年○月○日付け報告」とは資料の特定すらできていない。生徒の委任状とは「この件について全権を委任します。」と書かれているだけで委任内容等がまったく不明である。さらに「平成○年○月○日付けの生徒からの要望書」には異議申立人が生徒と接するに当たって、自らの呼称を「先生」ということへの非難が記載されているが、このようなことで異議申立人への「不審の声」というには程遠いのである。「実施機関・教育長宛の生徒の要望書」とは資料の特定すらできないのである。
請求3で実施機関が特定した文書に異議申立人が求めた個人情報「休暇取得時期」等は一切記載されていなかった。さらに、「平成○年○月○日、同年○月、同年○月○日、同年○月○日付け報告」とは資料の特定すらできていない。
このようなもので個人情報を開示したとは到底言えないのである。
そもそも本件開示請求は異議申立人が免職になるという異議申立人にとって死刑にも等しい重大な決定の根拠である。その重大な報告の根拠がこのようなものでよいとは到底言えないのである。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本決定の妥当性について
本件開示請求は、教育委員会定例会会議録にある請求1から6の発言の根拠となる資料の開示を求めたものであると認められる。
実施機関は、「3 実施機関の開示理由説明」のとおり、各開示請求について対象保有個人情報を特定し、開示する決定をしている。
当審査会において、実施機関が特定した保有個人情報を見分したところ、懲戒審査委員会の資料のうち、異議申立人に係る「懲戒申立書」、「規律違反報告書」、「職務命令」、「授業等の報告」には、主に平成○年度における異議申立人の学校での出来事や授業等の様子等について詳細な記述が見受けられる。また、「生徒の委任状」、「平成○年○月○日付けの生徒からの要望書」及び「実施機関・教育長宛の生徒の要望書」には生徒の異議申立人に対する記述が見受けられる。これらの懲戒審査委員会資料は、請求1、請求3、請求4、請求5-2、請求6の発言内容に係わるものであり、発言者が根拠とした保有個人情報であるとする実施機関の決定は不自然でなく、妥当であると認められる。
しかしながら、請求2の発言は異議申立人が○○に所属していた平成○年度及び平成○年度に関するものであり、また、請求5-1の発言は「平成○年から○年頃にかけて」の状況に関するものであって、実施機関が特定した保有個人情報には請求2及び請求5-1の発言につながるものは見受けられなかった。
実施機関は、保有個人情報として特定した懲戒審査委員会の資料のほか、口頭の報告や議論等を元に発言したと主張するが、発言の根拠となる資料が実施機関の説明するように開示決定したもの以外に存在しないのであれば、請求2及び請求5-1について実施機関が特定した保有個人情報は妥当ではなく、不存在決定をすべきである。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成18年8月2日 |
・ 諮問書の受理
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平成18年8月7日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成18年 8月17日 |
・ 理由説明書の受理
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平成18年 8月28日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成18年 9月1日 |
・ 意見書の受理
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平成21年 6月26日 |
・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第71回個人情報保護審査会) |
平成21年 7月28日 |
・ 審議 (第72回個人情報保護審査会) |
平成21年 8月19日 |
・ 審議 (第73回個人情報保護審査会) |
平成21年 9月28日 |
・ 審議 ・ 答申 (第74回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
浅尾 光弘 |
弁護士 |
委員 |
合田 篤子 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 |
樹神 成 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |