三重県個人情報保護審査会 答申第54号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った開示決定は取り消し、不存在決定をすべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年11月18日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った以下の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成18年1月4日付けで行った教委第20-545号による開示決定の取消しを求めるというものである。
(1) 請求者私、○○の○○についての人事委員会の申し立てにおける処分者実施機関平成○年○月○ 日提出の再答弁書4ページ「2反論書『2前校長らによる受傷』について」2行目~4行目「申立人は、医師に事実でないことを訴えているのみならず、時間経過とともに、誇張がすぎているほどの“デッチ上げ”的主訴をなしている。」とあるが請求者申立人私、○○が医師に訴えたという「事実でない、時間経過とともに、誇張がすぎているほどの“デッチ上げ”的」な主訴の具体的内容
(2) 請求者私、○○の○○についての人事委員会の申し立てにおける処分者実施機関平成○年○月○日提出の再答弁書4ページ「2反論書『2前校長らによる受傷』について」8行目~10行目「申立人主張の後遺症障害は、処分者答弁書第3,1(2)記載の事故の後遺症障害や平成○年度の公務災害認定の外傷等であって」とあるが、「申立人主張の後遺症障害」が「処分者答弁書第3,1(2)記載の事故の後遺症障害や平成○年度の公務災害認定の外傷等」であると言う具体的な根拠
3 実施機関の開示理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
本請求は、平成○年○○請求において実施機関が提出した書類について当事者である申立人からの請求である。このことについて実施機関より平成○年○月○日付け提出された答弁書、平成○年○月○日付け提出された再答弁書、乙第3号証及び乙第4号証を開示する決定をした。本件請求の枠組みでは、この答弁書等に集約されているので、これらを開示すれば事足りると考えた。この中のどこが具体的内容や具体的根拠であるかの特定は行っていない。
答弁書等これらの書類及び主張については、審理の過程で吟味、判断がなされるべきものでもあり、決定通知には「本請求はいずれも不服申立の主張に関わるものであり、その正当性については法廷で明らかにすべきと考えています。」と付記した。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書及び意見書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
実施機関が特定した文書に私が求めた「主訴の具体的内容」、「具体的な根拠」は一切記載されていなかった。ましてや、実施機関が特定した文書には私が記載の根拠を求めた平成○年○月○日付け提出された再答弁書自身まで含まれている。このようなもので個人情報を開示したとは到底言えないのである。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本決定の妥当性について
本件開示請求は、実施機関が異議申立人からの○○請求において人事委員会に提出した再答弁書で主張した、異議申立人が医師に訴えたという「事実でない、時間経過とともに、誇張が過ぎているほどの“デッチ上げ”的」な主訴の具体的内容となる保有個人情報及び「申立人主張の後遺症障害」が「処分者答弁書第3,1(2)記載の事故の後遺症障害や平成○年度の公務災害認定の外傷等」であるという具体的な根拠となる保有個人情報の開示を求めたものであると認められる。
実施機関は、異議申立人が求める具体的内容や根拠があればこの中に含むものとして平成○年○月○日付け提出された答弁書、平成○年○月○日付け提出された再答弁書、乙第3号証及び乙第4号証を開示する決定をしているが、具体的箇所の存否、その他文書の特定作業は行っていないとのことである。
このような実施機関の保有個人情報の特定の仕方は不適切であり、実施機関の行った開示決定は妥当でないと言わざるを得ない。
そこで、当審査会において本件対象保有個人情報の存否について実施機関に確認したところ、異議申立人が求める実施機関が再答弁書で主張する内容の具体的根拠となる保有個人情報は存在しないとのことであった。再答弁書の記述は○○請求における実施機関の主張を書いたものであり、再答弁書で主張する具体的内容の根拠や判断が書かれた文書等が存在しないとの実施機関の説明に特段の不合理な点は認められない。
したがって、実施機関の行った開示決定は妥当ではなく、不存在決定をすべきである。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日
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処理内容 |
平成18年7月19日 |
・ 諮問書の受理
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平成18年8月7日 |
・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼
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平成18年 8月17日 |
・ 理由説明書の受理
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平成18年 8月28日 |
・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
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平成18年 9月1日 |
・ 意見書の受理
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平成21年 3月23日 |
・ 書面審理 ・ 審議 (第68回個人情報保護審査会) |
平成21年 4月23日 |
・ 実施機関の補足理由説明 ・ 審議 (第69回個人情報保護審査会) |
平成21年 5月22日 |
・ 審議 (第70回個人情報保護審査会) |
平成21年 6月26日 |
・ 実施機関の補足理由説明 ・ 審議 (第71回個人情報保護審査会) |
平成21年 7月28日 |
・ 審議 ・ 答申 (第72回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 |
氏名 |
役職等 |
会長 |
浅尾 光弘 |
弁護士 |
委員 |
合田 篤子 |
三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 |
樹神 成 |
三重大学人文学部教授 |
委員 |
寺川 史朗 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
安田 千代 |
司法書士、行政書士 |