三重県情報公開審査会 答申第339号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年3月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成11・12・13年度各年度についての三重県立みえ夢学園高等学校昼間部の三重県高等学校定時制及び通信制課程「教科書給与補助」及び「修学奨励金の貸与」制度の ①説明責任不履行の理由 ②回復措置実施の有無並びに取組状況 ③説明責任不履行責任者への処遇」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成15年3月24日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
三重県高等学校定時制通信制教科書学習書給与補助制度は、定時制及び通信制課程に学ぶ勤労青少年に教科書・学習書を給与することにより、その経済的負担を軽減することを目的とする制度であり、高等学校定時制通信制修学奨励金貸与制度は、定時制及び通信制課程に在学する優秀な生徒のうち、経済的理由により修学が困難な者に対し、修学奨励金を貸与することにより、勤労青少年の高等学校への修学を促進することを目的とする制度である。
異議申立人から開示請求を受け、平成15年3月から6月にかけて、昼間部の平成10年度から13年度の教科書学習書給与補助制度及び修学奨励金貸与制度が適切に運用されていたか調査を実施した。このため、開示決定日の平成15年3月24日の時点において、これら制度が適切に運用されていたか否かの調査結果は出ておらず、運用に関する説明責任について言及した文書は作成されていない。また、調査結果が出ていないため、回復措置の実施については判断以前の段階であり、回復措置実施の有無及び取組状況を記した文書も作成されていない。さらに、この段階では、説明責任が適切に果たされたか否かの判断も下しようがなく、不履行責任者への処遇を記した文書は作成されていない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書の記載によると、以下のとおりである。
不存在とした決定は、県民・学習者に対して直接責任を負って履行されている教科書給与補助制度及び修学奨励金貸与制度の不履行の事実についての対処への説明責任を果たしておらず、不存在で良しとできるものではない。
請求した内容の「①説明責任不履行の理由、②回復措置実施の有無並びに取組状況、③説明責任不履行責任者への処遇」について具体的に明記した文書を、教育委員会が当該高等学校等に即刻作成させ開示することを要請する。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
実施機関は、本件開示請求の対象となる公文書は保有していないとして以下のように説明している。
異議申立人から開示請求を受け、平成15年3月から6月にかけて平成10年度ないし平成13年度の教科書学習書給与補助制度及び修学奨励金貸与制度が適切に運用されていたか調査を行った。その調査結果を平成15年7月にとりまとめ、教科書学習書給与補助制度については、平成11年度は入学時の集会等において生徒に説明を行ったが、平成12年度、平成13年度は各年度の過去二年間における給与対象者がいなかったことから集会等での説明を行わなかったこと、修学奨励金貸与制度については、平成10年度から12年度まで、担任教諭が生徒の生活実態の把握に努め対象となる生徒へは制度の利用を促し、平成13年度は年度途中から申請等の取扱いに係る内部規定を作成し対象者を募集していたことなどが判明した。しかしながら、開示決定の平成15年3月24日時点では、調査結果が出ていなかったことから、説明責任が不履行であったかどうかの判断は不可能であった。
一般に、開示請求の対象となる文書は、その開示請求の時点において存在する文書であることが原則である。
異議申立人の指摘を受けた実施機関は、本件開示請求の日(平成15年3月10日)以降に、これら制度の運用に関する調査に着手し、平成15年7月に調査結果をとりまとめたことが認められるから、開示請求時点においては、本件開示請求の対象となる文書を作成しておらず、その保有もしていないとする実施機関の説明は、これを是認することができる。
したがって、本件開示請求の対象となる公文書を保有していなかったとして、不存在とした実施機関の本決定は妥当である。
なお、異議申立人は、開示請求の趣旨に合致する文書を作成開示すべきである旨主張しているが、条例第5条の規定に基づく開示請求権は、あるがままの形で公文書を開示することを求める権利であって、実施機関は、条例第9条に規定する部分開示を行う場合及び条例第18条に規定する特別の開示の実施の方法による場合を除き、新たに公文書を作成又は加工する義務はないので、異議申立人の主張は認められない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
15. 4.23 | ・諮問書の受理 |
15. 4.24 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15. 7. 8 | ・非開示理由説明書の受理 |
15. 7.10 |
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15. 8. 8 |
・書面審理 (第180回審査会) |
21. 2.13 |
・書面審理 (第313回審査会) |
21. 3.17 |
・審議 (第316回審査会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部講師 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科准教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。