三重県情報公開審査会 答申第336号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った本件部分開示決定は妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、審査請求人が平成20年9月18日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の自動車学校の三重県公安委員会指定に係る文書」の開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成20年10月1日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)を取り消し、自動車学校指定申請者の住所、管理者の本籍及び住所、指導員名簿及び証明願い申請者の住所の開示を求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、特定の自動車学校に係る自動車学校指定申請書及び添付書類である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
条例第7条第2号本文は、第3条後段で「実施機関は、個人のプライバシーに関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない。」とされていることを受けて、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨の規定であり、プライバシー保護のための非開示条項として、個人の識別が可能な情報か否かによると定めたものである。ただし、条例は、例外事項として、個人識別情報であっても個人の権利利益を侵害せず、たとえ侵害しても開示することの公益が優越するものについては、開示することも規定している。
本件対象公文書は、自動車学校指定申請者にとって業務指定申請のためには三重県公安委員会に対して提出が必要不可欠な書類である。しかし、商業登記簿等により誰もが確認できる状態にされている以外の部分は、私宅等の住所、本籍、生年月日、氏名、戸籍、履歴、経歴、資格等のプライバシーに関わる個人識別情報であって、公にすることにより個人の権利利益を侵害するおそれがあることから、条例第7条第2号に該当し、公にすることにより個人の権利利益が侵害されるおそれ等を否定する根拠が存在しないため、非開示とした。
5 審査請求の理由
審査請求人は、以下の理由により、本決定を取消し、自動車学校指定申請者の住所、管理者の本籍及び住所、指導員名簿及び証明願い申請者の住所の開示を主張している。
当該申請が申請者本人によって行われたのか行政書士が代理で行ったのかが分からない。行政書士が行ったのであれば非開示にはできず、本人が行ったのであれば、住所氏名を名乗って公然と行うべき義務のある重要な文書である。管理者の本籍住所については、市が公的に本人を認証登録した個人の権利義務に係る事業の指定をうけるために第三者に対し本人を証明する公文書であることから非開示とはできない。指導員は、当該自動車学校の実態について知り得ていたかが問題であり、開示されるべきである。当該申請は、名義人が明らかでない土地取得に関係する文書でもあり、開示されるべきである。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
審査請求人が開示を主張している情報は、指定申請者の住所、管理者の本籍及び住所、指導員名簿の記載事項及び敷地総面積証明願い申請者の住所である。審査請求人は、指定申請及び証明願い申請については行政書士が業として行っているのであれば非開示とはできず、本人による申請であったとしても非開示とはできない重要な情報であるとして開示を求めている。
本件対象公文書において申請者の氏名が開示されており、書類の記載内容から申請者本人による申請であり、自動車学校の指定を受けようとする個人から提出されたものであると認められる。実施機関は、申請者の住所はあくまで申請者としての住所が記載されているものであり、商業登記を前提としたものではないとし、本条本号に該当する非開示情報であると主張する。また、公安委員会は当該指定を行ったときに、申請者及び管理者の氏名を公示したが、その住所までは公示していない。このことから、申請者の住所及び管理者の本籍地及び住所については、本条本号に規定する個人に関する情報であり、法令等により公になっている情報には該当せず、当該情報を非開示とした決定は妥当である。
指導員に関する情報については、その氏名、住所、生年月日及び資格等の記載が認められる。これらの情報は個人を識別し得る情報であることから、本条本号に該当する個人に関する情報であり、法令等で公にされている情報には該当せず、非開示とした本決定は妥当であると判断する。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙「審査会の処理経過」のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
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20.10.23 | ・諮問書の受理 |
20.10.29 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20.11.21 | ・非開示理由説明書の受理 |
20.11.27 |
・審査請求人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
21. 2.16 | ・書面審理 ・審査請求人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第314回審査会)
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21. 3. 9 | ・審議 ・答申 (第315回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部講師 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科准教授 |
委員 | 丸山 康人 |
四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において、調査審議を行った。