三重県情報公開審査会 答申第322号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定については、その決定を取り消し、改めて対象公文書を特定し決定すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年4月24日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「「知事と語ろう本音でトーク」に於て出席者から提起された県職員の県民(当事者)に対する不法行為の事実確認と懲戒処分結果についてわかる全ての文書」の公文書開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成20年5月7日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求には「不法行為」と記載されているが、実施機関の職員が県民に対して不法行為を働いた事実は無いと認識しており、また司法機関等から不法行為と認定された事実も無い。不法行為自体が存在していないのであり、公文書も存在し得ない。
異議申立人はその異議申立て理由として「何ら文書化する仕組みがない。」と主張するが、県税業務に関する一般論として、職員が滞納者と交渉した内容については滞納整理カードに記録している。仮にこの滞納整理カードが存在するとしても、その存否を明らかにすることは、県が当該県民の滞納の有無を明らかにすることになり、仮に滞納整理カードがあったとしても、実施機関が滞納整理カードの存否を明らかにすることはできない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、以下の理由により本決定は取り消すべきであるというものである。
全く不可解な決定で、県民の行政に対する不信感を増幅させるもので容認できない。行政への意見の申立てや不満、提案、苦情について何ら文書化するという仕組みがないとしたら、行政機関には違法行為や怠慢、過失は無いとする無謬主義に陥り、組織的な腐敗を招き、信用失墜となる。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
実施機関は、開示請求者の指摘する「不法行為」はなかったことから、開示請求の対象となる公文書は存在しないと主張している。
異議申立人は不法行為を認める公文書を開示請求しているのではなく、不法行為がなくても、関連する文書を開示請求していると主張している。
また、本決定に当たって、実施機関と開示請求者との間で文書の特定に関する調整はなかったと認められる。
異議申立人が開示請求書に「不法行為」と記載したことは、不法行為を認めさせるという趣旨ではなく、文書を特定するための修飾語として記載したものであると認められることから、開示請求の対象公文書の特定にあたって、異議申立人の意図を確認せず「不法行為」という言葉にこだわって公文書不存在とした本決定は妥当とはいえない。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
20. 5.12 | ・諮問書の受理 |
20. 5.14 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20. 6. 3 | ・非開示理由説明書の受理 |
20. 6.11 |
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 7.24 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第299回審査会)
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20. 8.18 | ・審議
(第301回審査会)
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20. 9.22 | ・審議
(第304回審査会)
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20.10.20 | ・審議 ・答申 (第306回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 |
氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学講師 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学教授 |
※委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学准教授 |
※会長職務代理者 | 早川 忠 宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において、主に調査審議を行った。