三重県情報公開審査会 答申第320号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年3月18日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成20年2月27日付けの服務規律違反報告について、懲戒処分の必要があるか否かを協議する会議の議事録等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成20年3月24日付けで行った公文書開示決定のうち、「平成20年2月27日付けの服務規律違反報告について、懲戒処分の必要があるか否かを協議する会議の議事録」を不存在とした部分(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
職員の規律違反については、所属長等からの報告に基づき実施機関の担当室である人材政策室(以下「担当室」という。)で検討し、過去の事例や「懲戒処分の指針」に照らし合わせ、懲戒処分の対象となると判断した場合は職員懲戒審査取扱要綱(以下「要綱」という。)に則り職員懲戒審査委員会(以下「委員会」という。)で審査を行う。開示請求があった平成20年3月18日の時点において、本件の服務規律違反報告に関して委員会を開催するかどうかの決定を行っていなかったことから、当該文書は存在しない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
懲戒処分の対象とするかのどうかの重要な検討を行っているのに、議事録が存在しないことは到底納得できない。しかも、要綱には、服務規律違反報告を受けた教育長が委員会に諮るかどうかの決定を行い、審査の結果、懲戒処分の必要がないとした場合の措置内容も委員会において決定すると規定されており、担当室における懲戒処分の必要性の検討に関する規定はない。
懲戒処分の必要があるか否かを協議した議事録を作成し公開しなければ、県民の知る権利は保障されず、実施機関が説明責任を果たしていることにはならない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
実施機関の説明から、規律違反報告については以下の事務処理が行われていることが認められる。
担当室で過去の処分例や「懲戒処分の指針」に照らし合わせ検討を行い、懲戒処分の必要があると判断できる場合は委員会で審査を行い、懲戒処分を必要と認めたときは懲戒処分の種類等を、必要ないと認めたときは訓告等のとるべき措置を決定しており、その議事内容を記録している。担当室での検討の結果、懲戒処分の必要がないと判断した場合は、措置案を担当職員が起案し、決裁手続きを経て措置内容を決定することから、この事務処理過程において関係職員による協議、検討を行った場合でもその内容に係る記録は作成していない。
実施機関は、公文書開示請求時において本件違反報告に関して審査する委員会を開催するかどうかの決定をしていなかったことから文書は存在しないと主張するが、上記の事務処理方法からすれば、そもそも、異議申立人の請求した担当室における懲戒処分の必要があるか否かの検討に係る記録は作成していないのであって、当該文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
したがって、実施機関が行った決定は、妥当である。
なお、当審査会は情報公開条例に基づき実施機関の行った処分についての不服申立てに関し審査するものであって、実施機関が議事録を作成していないことの適否を審査するものではない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
実施機関の説明によれば、異議申立人の主張を受け、懲戒処分の必要があるか否かの関係職員による協議、検討に係る記録を作成することにするなど、一定の事務処理の改善に取り組んでいることが認められる。こうした取組を確実に実施し、実施機関の活動を県民に説明する責務が全うされるよう努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
20. 5.16 | ・諮問書の受理 |
20. 5.21 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20. 6.10 | ・非開示理由説明書の受理 |
20. 6.12 |
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 7. 2 | ・意見書の受理 |
20. 7. 9 | ・実施施機関に対して意見書(写)の送付、意見書に対する反論書の提出依頼 |
20. 7.25 | ・反論書の受理 ・異議申立人に対して反論書(写)の送付、意見書の提出依頼 |
20. 8. 1 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第300回審査会)
|
20. 8.29 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第302回審査会)
|
20. 9.12 |
・審議
(第303回審査会)
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20.10. 3 | ・審議 ・答申 (第305回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 |
氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部講師 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科准教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。