三重県情報公開審査会 答申第319号
答申
1 審査会の結論
実施機関は本決定を取り消し、改めて決定すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年4月7日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「農水商工部保有の簿冊「公文書開示請求」(01502-900000326)」の公文書開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成20年4月16日付けで行った公文書部分開示決定のうち、開示請求団体名を非開示とした決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、農水商工部保有の簿冊「公文書開示請求」(01502-900000326)に含まれる「公文書開示請求について(伺い)」等68件である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求者の所属団体名については、開示することで特定の個人が識別され得る情報であり当該個人の私生活上の権利利益を侵害するおそれがあるため、条例第7条第2号に該当する非開示情報である。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により開示請求団体名を非開示とする理由はないことから、本決定は取り消すべきであるというものである。
公文書開示請求書に記載された団体名を非開示として、その非開示理由として条例第7条第2号に該当するとしている。しかし、団体については条例第7条第2号にはその規定がないことから、本件処分のうち、公文書開示請求書に記入された団体名を非開示とする処分は根拠がなく、非開示処分は行政権力の不当・違法な行使によるものであって、当該団体名は開示すべきである。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないことととしている。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないことととしている。
(3)条例第7条第2号(個人情報)の妥当性について
実施機関が本条本号に該当するとして非開示とした情報は、公文書開示請求書に記載された開示請求団体の名称である。
実施機関は、開示請求団体の名称が開示されると、その団体に所属する個人が識別され得ると主張している。これに対して異議申立人は、所属団体を明らかにすることによって直ちに個人を識別し得るとは言えず、団体名を明らかにすることによりその代表者名が明らかになるとする客観的かつ合理的な説明がないことから、本条本号の該当性を理由に非開示とする根拠はないと主張している。
たしかに、特定の個人が特定の団体に所属しているという情報は、本条本号に該当する個人に関する情報ではある。しかし、開示請求書に記載された住所又は居所、代表者名、電話番号及びメールアドレスを非開示としていることから、非開示とした団体の名称を開示することにより特定の個人を識別し得るとする実施機関の説明に客観的な理由は見当たらず、本件において団体の名称を開示することにより所属している個人の氏名を特定しうる蓋然性はきわめて低いといわざるを得ない。
したがって、開示請求書に記載された団体の名称を開示することによって、特定の個人が識別され得るとは言えないことから、本条本号に該当するという理由で開示請求団体の名称を非開示とした本決定は妥当ではない。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
(別紙)
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
20. 5. 2 | ・諮問書の受理 |
20. 5.14 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20. 5.15 | ・非開示理由説明書の受理 |
20. 6. 9 |
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 8.18 | ・意見書の受理 |
20. 8.18 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第301回審査会)
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20. 9.22 | ・審議 ・答申 (第304回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 |
氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学講師 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学教授 |
※委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学准教授 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 三重弁護士会推薦弁護士 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において、主に調査審議を行った。