三重県情報公開審査会 答申第317号
答申
1 審査会の結論
実施機関は、本件部分開示決定のうち、本件異議申立てに係る各事案の実施機関から三重県情報公開審査会へ任意に提出された対象公文書の写しを本決定の対象とする公文書から除くとした決定を取り消し、対象公文書として改めて開示又は非開示の決定を行うべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年11月1日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「行政不服申立てに関する文書(但し情報公開室が当事者となった分を除く)。(平成14年度以降に異議申立て提出分)(情報公開室保有分に限る)」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成19年12月14日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)のうち、三重県情報公開審査会答申第123号及び答申第127号の各事案の実施機関(以下「各事案実施機関」という。)が三重県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の求めに応じて提出したのではなく任意に提出した対象公文書の写しを、本決定の対象とする公文書から除くとした決定(最終的に答申第123号及び答申第127号の各事案の開示請求者に対して非開示とした部分を除く。)の取消しを求めるというものである。
なお、本件異議申立ては、実施機関が条例第14条の規定に基づき開示決定の期間を平成24年3月30日まで延長し、開示請求があった日から起算して45日以内に開示決定をした部分に係るものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、次表(ただし(3)を除く。)のとおりである。
本件対象公文書 | 左のうち本決定の対象とする公文書から除いた部分見出し | |
---|---|---|
答申第123号関係 | (1)異議申立書の提出について
(平成14年6月5日供覧) |
ア 各事案実施機関から提出された対象公文書の写し |
(2)開示理由説明書の提出について(伺い) (平成14年6月10日決裁) |
イ 各事案実施機関が諮問書に添付して提出した対象公文書の写し | |
(3)情報公開審査会資料 (平成14年7月16日開催) |
ウ 各事案実施機関が審査会からの求めに応じて提出した対象公文書の写し | |
答申第127号関係 |
(4)異議申立書の提出について (平成14年5月14日供覧) |
エ 各事案実施機関から提出された対象公文書の写し |
(5)開示理由説明書の提出について(伺い) (平成14年5月22日決裁) |
オ 各事案実施機関が諮問書に添付して提出した対象公文書の写し | |
(6)情報公開審査会資料 (平成14年7月2日開催) |
カ 各事案実施機関が諮問書に添付して提出した対象公文書の写し |
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
上記3の表右欄のウは条例第33条第1項前段の規定により審査会が提示を求めた対象公文書の写しであるから、同項後段の規定に基づき何人も開示を求めることはできず、同欄のア及びイは同欄のウと同一の文書の写しであり、また同欄のア、イ及びエからカまでは、同項前段の規定により審査会から提示を求められることを見越して各事案実施機関があらかじめ任意に提出したものと考えられ、仮に提出されなければ、審査会が各事案を調査審議するために必要と認め提示を求めたはずのものと考えられることから、同項後段の規定の適用がある。
任意に提出された対象公文書は各事案実施機関に対して開示請求を行うことができ、対象公文書の開示非開示の判断は、これらの文書の原本を保有し、日常の業務で使用している各事案実施機関の方がより適切に行えるのであり、また、審査会に過度に開示請求が集中することを避ける必要があることから、条例第33条第1項後段の規定はインカメラ審理に供する目的で任意に提出された対象公文書の写しについても適用される。
5 異議申立て理由
審査会の求めに応じて提出された対象公文書の写しとは別に、任意に提出された対象公文書の写しを非開示とする根拠はない。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) インカメラ審理について
審査会は、諮問をした実施機関(以下「諮問庁」という。)から独立した第三者的な立場で、適切な判断を行うことが期待されている。そのため審査会には諸種の調査権限が与えられているが、とりわけ重要な権限は、諮問庁に対し開示決定等に係る公文書の提示を求める権限(条例第33条第1項)、いわゆるインカメラ審理の権限である。これは、諮問庁が非開示とした公文書を審査会に提出させ、実際に当該公文書を見分して審議する権限で、非開示とする理由となる情報が当該公文書に現実に記載されているか、非開示等の判断が適法妥当か、部分開示の範囲が適切かなどについて、迅速にして適切な判断を可能とするため有効である。
審査会がインカメラ審理のために、開示決定等に係る公文書を提出させた場合、当該公文書は、審査会保有文書として開示請求がなされることがある。これは、審査会が地方自治法第138条の4第3項の知事の附属機関として置かれる機関であるため、審査会の委員、職員が職務上作成し、又は取得した文書等で、審査会の委員、職員が組織的に用いるものとして審査会が保有しているものは、条例第2条第2項の公文書に該当するからである。
条例第33条第1項後段は、このような場合を想定したうえで、これに対する対応として、審査の公正を図るために審査会に提出された公文書については、開示請求できないことを明記したものである。
(3) 本決定の妥当性について
条例は、諮問庁が審査会の求めに応じて提出したのではなく任意に提出した対象公文書に対する開示請求の取扱いについて規定していないが、条例第33条第1項後段には「この場合においては、何人も、審査会に対し、その提示された公文書の開示を求めることができない」とされており、「この場合」とは、同項前段の規定により審査会が必要があると認め対象公文書の提示を求めた場合に限られると解釈すべきである。
本決定に係る対象公文書を見分したところ、上記3の表右欄のうちウは、条例第33条第1項の規定に基づき審査会がインカメラ審理のために各事案実施機関に提示を求めた対象公文書の写しであることが認められるが、ア、イ及びエからカは、各事案実施機関がインカメラ審理を想定して提出したと推測されるものの、審査会の求めに応じて提出された対象公文書であるとは認められない。
したがって、本件対象公文書から各事案実施機関が審査会の求めに応じて提出したのではなく任意に提出した対象公文書の写しを本決定の対象とする公文書から除いた実施機関の判断は、妥当でない。
なお、実施機関は、各事案実施機関へ開示請求をすれば足りるし、審査会へ過度に開示請求が集中することを避ける必要があるとの主張を行っているが、条例第33条第1項後段は上述のとおり解すべきであるから、いずれも当審査会の結論を左右するものではない。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 |
処理内容 |
---|---|
20. 1.11 | ・諮問書の受理 |
20. 1.17 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20. 2. 6 | ・非開示理由説明書の受理 |
20. 2.13 |
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 4.21 |
・書面審理 (第295回審査会) |
20. 5.16 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第296回審査会)
|
20. 8. 1 | ・審議
(第300回審査会)
|
20. 8.29 | ・審議 ・答申 (第302回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 |
役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 |
弁護士 (平成20年5月31日まで) |
委員 |
伊藤 睦 |
三重大学人文学部准教授 (平成20年5月31日まで) |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授
(平成20年5月31日まで) |
※委員 | 川村 隆子 | 三重中京大学現代法経学部講師
(平成20年6月1日から) |
委員 | 田中 亜紀子 | 三重大学人文学部准教授 (平成20年6月1日から) |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士
(平成20年6月1日から) |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。