三重県個人情報保護審査会 答申第51号
平成21年2月27日
三重県知事 様
三重県個人情報保護審査会
会長 浅尾光弘
個人情報の取扱いに関する制限の適用を除外する事項について(答申)
平成21年2月19日付け健福第01-233号で諮問のありました平成21年4月1日設立予定の公立大学法人三重県立看護大学の個人情報の取扱いに関する制限の適用を除外する事項について、その理由や必要性等を審査しました結果、当審査会の意見を下記のとおり答申します。
なお、今回諮問のありました類型諮問事項につきましては、今後、類型に該当する新たな事務が生じた場合につきましても当審査会への諮問は要しませんが、類型への該当性の判断は実施機関において厳格に行うこととし、該当性を判断しがたい事務や、該当するとしても特に慎重な取扱いを要すると考えられる事務につきましては、改めて当審査会の意見を聴いてください。
また、今回適当と認めた諮問事項につきましても、今後の個人情報の保護に対する社会の意識の変化等を踏まえ、適宜必要な見直しを行いながら適正な運用に努められるよう要請します。
記
1 個人情報取扱事務登録簿の作成を除外する事務(条例第6条第4項第4号)
【類型諮問事項】
諮問された4類型につきましては、いずれも個人情報取扱事務登録簿の作成を除外することが適当であると認めます。
番号 |
登録の対象から除く事務 |
登録の対象から除く理由 |
1 |
公立大学法人三重県立看護大学、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は他の地方独立行政法人の職員(「役員」も含む。以下同じ。)又は職員であった者に係る個人情報のうち、会議の構成員又は出席者名簿、職務に係る研修名簿、施設・資料等の貸出・利用者名簿等の職務の遂行に関するものを取り扱う事務 |
行政機関の職員等の職務遂行に係る個人情報を取り扱う事務については、それぞれの機関において本人が当該事務の内容を知り得ることから、登録して一般の閲覧に供する意義に乏しいと考えられるため。 |
2 |
国又は地方公共団体の職員又は職員であった者の人事、給与、福利厚生等に関する事務 |
行政機関の職員等の人事、給与、福利厚生等に関する個人情報を取り扱う事務については、それぞれの機関において本人が当該事務の内容を知り得ることから、登録簿を作成して一般の閲覧に供する意義に乏しいと考えられるため。 |
3 |
物品若しくは金銭の送付又は業務上必要な連絡のために、相手方の氏名、住所その他の送付又は連絡に必要な事項のみ取り扱う事務 |
これらの事務は、資料等の送付や連絡の目的で利用され、送付や連絡に必要な事項のみを取り扱うものであり、個人の権利利益の侵害のおそれが少なく、登録して一般の閲覧に供する意義に乏しいと考えられるため。 |
4 |
一般に入手することができる刊行物等に掲載された個人情報を取り扱う事務 |
刊行物等に掲載され、一般に知り得る状態にある個人情報を取り扱う事務については、当該個人情報が既に公になっていることから、登録して一般の閲覧に供する意義に乏しいと考えられるため。 |
2 本人からの収集の原則の適用を除外する事項(条例第7条第2項第8号)
【類型諮問事項】
諮問された8類型につきましては、いずれも本人からの収集の原則の適用を除外することが適当であると認めます。
ただし、個人情報の本人からの収集を原則とする条例の趣旨を踏まえ、本人以外から収集する個人情報の範囲やその必要性を十分に検討し、事務に必要な範囲で最小限の収集とすることが望まれます。
番号 |
類 型 |
本人以外から収集する理由 |
1 |
栄典、表彰等の選考を行うため、候補者に関する個人情報を本人以外のものから収集する場合 |
・ 栄典、表彰等の事務の性質上、本人から収集したのでは、情報の客観性、正確性を確保することができず、事務の目的達成に支障が生ずる場合がある。 ・ 栄典等の候補者になったことを本人に知られることにより、事務の公正な運営に支障をきたしたり、本人に事前の期待を抱かせることにより、選考から漏れた場合の不信感につながる等事務の円滑な実施を困難にする場合がある。 |
2 |
各種の委員、講師、指導者、助言者等の選任に当たって、人選に必要な範囲内で候補者に関する個人情報を本人以外のものから収集する場合 |
・ 委員等の適任者を幅広く求めるため、本人以外のものから候補者に関する個人情報を収集する必要がある。 ・ 本人から収集したのでは情報の客観性、正確性を確保することができず、事務の目的達成に支障が生ずる場合がある。 ・ 団体、市町村の推薦の場合は、推薦という事務の性質上、本人から収集することができない。 |
3 |
県民等からの相談、苦情、要望、陳情等により提供される個人情報の中に、提供者以外の者に関する個人情報が含まれている場合 |
・ 相談等の内容は、相談者の自由意思により一方的に提供されるものであり、その性質上、収集を拒むことができない。 ・ 相談等の内容に相談者以外の者に関する個人情報が含まれている場合、それらの内容を正確に把握しなければ、事務を適切に処理することができない。 |
4 |
実施機関以外のものから送付された資料に個人情報が含まれている場合 |
・ 実施機関以外のものから資料等が送付されてきた場合には、その性質上、収集を拒むことができない。 ・ 報告書等の一部である場合などは、個人情報の部分だけを除いて収集することは困難である。 |
5 |
指導、評価、争訟、交渉等の事務で、本人から収集したのではその目的を達成することができない場合 |
・ これらの事務においては、本人からの収集だけでは情報の客観性、正確性を確保できないときがあり、適切な指導等を行うためには、本人以外から情報を収集することが必要な場合がある。 |
8 |
規則、要綱等の規定に基づく各種の申請、届出等に伴い提出される情報に、当該申請者等以外の者の個人情報が含まれている場合 |
・ 申請書等の内容に、当該申請者以外の者に関する個人情報を提出することが定められている場合がある。 |
10 |
工事請負契約、業務委託等の契約及びその施行の事務において、契約の相手方から当該業務に従事する者等に関する個人情報を収集する場合 |
・ 工事請負契約等において、その適正かつ円滑な施行を確保するため、当該業務に従事する者等に関する個人情報を収集することが必要な場合がある。 |
12 |
職員の任免等を行う事務で、本人に関する個人情報を本人以外のものから収集する場合 |
・ 職員の任免等を行う事務においては、任用に当たっての適格性の審査や、懲戒等の処分を行うに当たっての事案に応じた的確な処理を行うため、本人の個人情報を本人以外のものから収集することが必要な場合がある。 |
3 思想・信条等に関する個人情報の収集制限の適用を除外する事項(条例第7条第3項第4号)
【類型諮問事項】
諮問された4類型につきましては、いずれも思想・信条等に関する個人情報の収集制限の原則の適用を除外することが適当であると認めます。
ただし、適用を除外する事項に該当する場合であっても、思想・信条等に関する個人情報は、個人の人格に深く関わるものであり、その取扱いによっては個人の権利利益を侵害する危険性が高いものであることから、収集を原則として禁止する条例の趣旨を踏まえ、収集する必要性を十分に検討し、事務に必要な範囲で最小限の収集とするとともに、収集後もその取扱いには特段の配慮が望まれます。
番号 |
類 型 |
収 集 す る 理 由 |
1 |
県民等からの自由な意思により、思想、信条、信教に関する個人情報又は社会的差別の原因となるおそれのある個人情報が提供され、実施機関として当該個人情報を収集する場合 |
・ 公立大学法人三重県立看護大学が実施する事務の中には、県民等の自由な意思で、思想、信条、信教に関する個人情報又は社会的差別の原因となるおそれのある個人情報が提供される場合があり、このような場合は、実施機関には収集について選択の余地はない。 ・ また、こうした事務に適切に対応するためには、事務の目的の範囲内で思想・信条等に関する個人情報を的確に把握することが必要な場合がある。 |
2 |
出版、報道等により公にされた思想、信条、信教に関する個人情報又は社会的差別の原因となるおそれのある個人情報を事務の目的を達成するために必要な範囲内で収集する場合 |
・ 出版、報道等で公にされた情報は、不特定多数の者に公表され、誰もが知・闢セる状態にあり、こうした情報を事務の目的達成に必要な範囲内で収集することが正当と認められる場合は、個人情報保護上の問題は起こらないと考えられる。 ・ こうした情報がすべて正確なものとは限らないことからその収集先、収集時期等を明示しておくことが望ましい。 |
3 |
栄典、表彰等の選考を行うため、候補者の思想、信条、信教に関する個人情報、又は社会的差別の原因となるおそれのある個人情報を収集する場合 |
・ 功績調書の中には、思想等に関する個人情報が含まれる場合がある。 ・ 栄典、表彰等を行う場合、犯罪歴を有する者が被表彰者となることは社会通念上、県民等の感情にそぐわないと考えられることもあるので、選考に当たっては犯罪歴等の有無を確認する必要がある。 |
4 |
海外からの研修生、来訪者等の受け入れを行うに当たり、当該研修生等の信教に関する個人情報を収集する場合 |
・ 海外からの研修生や来訪者等を受け入れるに当たっては、生活習慣の違いや食事の制限等を把握し、当該研修生の滞在中、適切な対応を図るため、信教等に関する個人情報の収集が必要となる場合がある。 |
4 目的外利用及び提供の制限の原則の適用を除外する事項(条例第8条第1項第7号)
【類型諮問事項】
諮問された4類型につきましては、いずれも目的外利用及び提供の制限の原則の適用を除外することが適当であると認めます。
ただし、目的外利用及び提供を原則として禁止する条例の趣旨を踏まえ、目的外利用及び提供をする必要性やその範囲を十分に検討し、必要以上の個人情報が内部で利用されたり外部に提供されることのないよう慎重に対応するとともに、提供に当たっては、相手方に対し使用目的や使用方法等の制限を課すなど、個人の権利利益を侵害することのないよう特段の配慮が望まれます。
番号 |
類 型 |
目的外利用・提供する理由 |
1 |
栄典、表彰等の選考に必要な範囲内で、候補者に関する個人情報を当該事務の目的以外の目的に利用又は提供する場合。 ただし、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合に限る。 |
・ 当該実施機関以外においても、栄典、表彰等の事務の性質上、本人から収集したのでは当該事務の公正な運営に支障をきたしたり、円滑な実施を困難にするおそれがある。 ・ そこで、候補者に関し、実施機関が収集した個人情報を収集時とは異なる目的で、利用したり、当該実施機関以外に提供することが必要な場合がある。 |
2 |
委員、講師、指導者、助言者等の選任を行うため、人選に必要な範囲内で、候補者に関する個人情報を当該事務の目的以外の目的に利用又は提供する場合。 ただし、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合に限る。 |
・ 委員等の候補者を幅広く求めるためには、多くの機関から委員等の候補者の実績等の個人情報を収集する必要がある。また、選考、任命等の事務の性質上、本人に知られることにより、当該事務の公正な運営に支障を来したり、当該事務の円滑な実施を困難にするおそれがある。 ・ そこで、候補者に関し、実施機関が収集した個人情報を収集時とは異なる目的で、利用したり、当該実施機関以外に提供することが必要な場合がある。 |
3 |
報道機関への発表や報道機関からの取材、要請に応じるため、個人情報を当該事務の目的以外の目的に提供する場合。 ただし、県民等に知らせる公益上の必要性があり、かつ、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合に限る。 |
・ 対象となる個人情報の内容、社会的関心の高さ、公表した場合の影響等を判断し、公表することが社会通念上許容される範囲であり、かつ、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合は、報道機関に発表し、又は取材に応じることが必要な場合がある。また、犯罪、事故等特別な理由がある場合は、発表すること等が公益上必要な場合がある。 |
4 |
訴訟当事者である公立大学法人三重県立看護大学が訴訟資料として個人情報を当該事務の目的以外の目的で裁判所に提供するとき。 ただし、実施機関から提供を受けなければ当該目的を達成することが困難なときであり、提供する個人情報の内容、当該目的その他の事情からみて、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないときに限る。 |
・ 公立大学法人三重県立看護大学が訴訟の当事者であり、十分な主張立証を尽くすためには、事実関係を正確に反映させ、公正、妥当な訴訟をする要請との均衡を配慮しながら処理する必要があるため、事務の目的に関わらず、訴訟資料として裁判所に提出することが必要な場合がある。 |
5 オンライン結合による提供の制限の原則の適用を除外する事項(条例第9条第3号)
【類型諮問事項】
諮問された1類型につきまして、オンライン結合による提供の制限の原則の適用を除外することが適当であると認めます。
番号 |
類 型 |
オンライン結合による提供の必要性 |
1 |
インターネットを活用した個人情報の提供であって右に掲げる要件を満たす場合 |
インターネットの活用により、公立大学法人三重県立看護大学においてもホームページを活用して県民等に大学情報等を提供している。インターネットは、情報の即時性、最新性、経費の低廉性等の利点から、大学情報を提供する重要な手段となっている。 このような状況を踏まえ、実施機関がインターネットを活用して個人情報を提供する場合は、次に掲げる要件を充たすものとする。 1 インターネットを活用して個人情報を提供することに、住民サービスの向上、住民負担の軽減、事務の効率化等の公益上の必要性が認められること。 2 インターネットの活用による個人情報の提供内容が、社会通念上許される範囲のものであること。 3 インターネットの活用による個人情報の提供及び提供される個人情報の内容等について、原則として本人の同意があること。 4 ホームページの内容等が改ざんされないよう、不正アクセスの防止等に対して適切な技術的措置が講じられていること。 |