三重県情報公開審査会 答申第40号
答申
1 審査会の結論
「(平成8年度)復命書(平成8年5月2日○○出張)」について、実施機関が条例第8条第3号に該当するとして部分開示としたことは妥当でなく、非開示とした部分を開示すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成9年3月5日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「(平成8年度)復命書(平成8年5月2日○○市出張)」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県監査委員(以下「実施機関」という。)が3月19日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の部分開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を部分開示決定にしたというものである。
復命書は、○○○監査委員事務局と三重県監査委員事務局との協力関係、信頼関係に基づき、事務の適正化・効率化を図るため取得した情報を記載したものである。
非開示部分は、監査事務の取扱い、意思形成過程の情報その他○○○監査委員事務局が公表を予定していない情報であること、及び三重県監査委員事務局が○○○監査委員事務局との間で公開することを前提として作成し又は取得したものでないことから、公開すると今後の協力関係・信頼関係が損なわれ、監査事務の適正な執行に著しい影響を与える。
また、開示請求に応じての処分にあたり、○○○監査委員事務局の意見を聴取した結果、部分開示を要請されたため、条例第8条第3号に該当するものと認められることから、部分開示の決定を行った。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書等で意見陳述している主たる理由は、次のように要約される。
平成9年2月3日及び2月24日に開示請求をした時点では本件対象公文書は開示の決定がなされたが、3月5日に再度開示請求を行ったところ部分開示決定がなされた。
以前は部分開示にしていた文書を後に開示するというように、開示請求者に対する開示部分を拡大するのであれば、特に変更の理由やその根拠を明示する必要はないと考えるが、逆の場合は開示請求者の公文書の開示を求める権利を制限するものであり、変更の理由と根拠を明確にする必要がある。開示請求に係る状況に何ら変化がない中で、前回と今回の開示請求に対する決定の差異(前回開示、今回部分開示)は余りにも恣意的で厳密さを欠いている。
以上のことから、本件対象公文書の部分開示決定は違法である。
5 審査会の判断
本件対象公文書について、実施機関は条例第8条第3号に該当するので部分開示にできると主張している。そこで、以下について判断する。
(1)基本的な考え方について
条例の制定目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。
条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示項目を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)条例第8条第3号(国等協力関係情報)の該当性について
本号は、県の行政が国等との密接な関係のもとに執行されていることから、県と国等との協力関係、信頼関係を維持するため、開示することによりこれらの関係を損なうと認められる情報は、非開示とできることを定めたものである。
そこで、本件対象公文書についてこのことを検討する。
本件対象公文書は、異議申立人が平成9年2月3日(第1回)及び2月24日(第2回)に閲覧の開示請求を行い、既に2月24日及び2月28日(2月17日付け監査第72の2号及び2月26日監査第136の2号で開示決定)に開示されている。
しかし、本件対象公文書の写しの交付を求めるため、3月5日(第3回)異議申立人が開示請求を行ったところ、部分開示とされたものである。
この第2回と第3回の開示請求の間には9日が経過しているが、この期間に、開示・非開示の判断をするにあたり考慮すべき状況の変化があったとは認められない。したがって、新たに本号を理由とする部分開示を行うことは許されない。
また、非開示とした箇所を個別に検討してみても、内容的に公開すると問題が生ずるとは認められず、本件対象公文書に関しては、公開しても○○○監査委員事務局との信頼関係を破壊するものとは認めがたく、本号には該当しない。
(3)結論
実施機関が本件対象公文書を条例第8条第3号に該当するとして部分開示としたことは妥当でなく、非開示とした部分を開示すべきである。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙審査会の処理経過のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
9. 6.27 | ・諮問書受理 |
9. 7. 7 | ・実施機関に対して部分開示理由説明書の提出依頼 |
9.11.26 | ・部分開示理由説明書受理 |
9.12. 3 | ・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
9.12.16 | ・実施機関からの部分開示理由説明の聴取 ・審議 (第77回審査会) |
10. 2. 4 | ・異議申立人からの口頭意見陳述申出書受理 |
10. 2. 4 | ・異議申立人からの意見書受理 |
10. 2.13 | ・異議申立人の口頭意見陳述の聴取 ・審議 (第79回審査会) |
10. 3.23 | ・審議 (第81回審査会) |
10. 5.11 | ・審議 ・答申 (第82回審査会) |
三重県情報公開審査会委員名簿
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学教授 |
会長職務代理者 | 夏秋 幹 | 三重テレビ放送㈱代表取締役社長 |
委員 | 谷 信子 | 県商工会議所婦人会連合会会長 |
委員 | 今井 正彦 | 弁護士 |
委員 | 曽和 俊文 | 関西学院大学教授 |