三重県情報公開審査会 答申第31号
答申
1.審査会の結論
「(平成6年度)境界立会結果(株○○○○○○○)」の事案について、実施機関が非開示とした部分のうち、境界確認申請地の字名については公開すべきであるが、その余の非開示とした部分については、実施機関の判断は妥当である。
2.異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成8年4月2日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「(平成6年度)境界立会結果(株○○○○○○○)」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成8年4月16日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3.実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を部分開示にしたというものである。
1 条例第8条第1号について
境界立会者の住所・氏名、個人の委任状、身分証明書、個人の印影、隣接土地所有者一覧表、境界確認申請地、境界確認書、申請地図面、地積測量図は、個人に関する情報であり、開示することにより特定の個人が識別され、又は識別され得る。
なお、境界確認申請地に係る情報は、申請人が計画している産業廃棄物最終処分場に関連するものであり、当該産業廃棄物最終処分場の計画地番が公になっていない状況から、これを開示すると、境界確認申請地の土地所有者が紛争にまき込まれるおそれがあるため、非開示とした。
2 条例第8条第2号について
法人代表者の印影、印鑑証明書、法人の委任状、取引先は、法人内部に関する情報であり、開示することにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
なお、これらの情報は本号ただし書に規定するいずれの情報にも該当しない。
4.異議申立ての理由
本件は、管理型産業廃棄物最終処分地の建設計画に関係する情報である。
計画地は異議申立人らが居住している矢持町の住民が利用している簡易水道の水源地となっている菖蒲川を埋め立てて計画されているもので、水道水源保護条例が制定されているならば、当然、規制対象事業に認定されるような位置にある。
命の飲み水である水源地の汚染の危険性のある管理型産業廃棄物最終処分地の建設計画を地元の矢持町自治会の同意もなく、建設計画の詳細の情報も明らかにしないまま、業者と密室での事前調整をすすめ、命と健康に係わる重要な情報を公開しない処分は、部分開示の理由がないにもかかわらず、情報を公開しない違法がある。
5.審査会の判断
本件対象公文書について、実施機関は条例第8条第1号及び第2号に該当するので部分開示にできると主張している。そこで、以下について判断する。
1 基本的な考え方について
条例の制定目的は、県民の公文書開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示項目を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
2 条例第8条第1号(個人情報)の該当性について
本号は、基本的人権を尊重する立場から、個人のプライバシーは最大限保護する必要があること、また、個人のプライバシーの概念は法的に未成熟でもあり、その範囲も個人によって異なり、類型化することが困難であることから、個人に関する情報であって特定の個人が識別される情報は、原則として非開示とすることができる旨を定めたものである。
本件で非開示とされているのは、境界立会者の住所・氏名、個人の委任状、身分証明書、個人の印影、隣接土地所有者一覧表、境界確認申請地、境界確認書、申請地図面、地積測量図である。これらの情報は、申請人が計画している産業廃棄物最終処分場の建設計画に関連するものであり、建設計画は現在事前協議中であるため、詳しい建設場所は公になっていない。これらの情報を開示すると、特定の個人が識別され、又は識別され得るため、非開示が妥当である。しかしながら、境界確認申請地の字名については、これを開示しても特定の個人が識別され得ないと認められるので開示すべきである。
なお、これらの情報は本号ただし書きに規定するいずれの情報にも該当しない。
3 条例第8条第2号(法人情報)の該当性について
本号は、自由経済社会においては、法人等の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で開示することにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができることを定めたものである。
競争上の地位その他正当な利益が害されると認められる情報とは、例えば生産、技術、販売、営業上のノウハウに関する情報、経理、人事等の内部管理に関する情報のほか、開示することにより、法人等の社会的評価、社会活動の自由等が損なわれると認められる情報をいう。
法人の印鑑証明書、法人の委任状、取引先等は、法人内部に関する情報であり、開示することにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
なお、これらの情報は本号ただし書に規定するいずれの情報にも該当しない。
4 結論
以上のことから総合的に判断すると、本件対象公文書のうち、境界確認申請地の字名は公開すべきであるが、その余の非開示部分について実施機関が非開示としたことは妥当である。
6.審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙審査会の処理経過のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
8. 6. 6 | ・諮問書受理 |
8. 7. 4 | ・実施機関に対して部分開示理由説明書の提出依頼 |
8. 8.22 | ・部分開示理由説明書受理 |
8. 9.10 | ・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
9. 2.21 | ・口頭意見陳述申出書受理 |
9. 2.27 | ・書面審理及び実施機関からの非開示理由説明の聴取及び審議 (第66回審査会) |
9. 3.31 | ・異議申立人からの口頭意見陳述の聴取及び審議 (第67回審査会) |
9. 5. 6 | ・審議 (第68回審査会) |
9. 6.16 | ・審議 (第69回審査会) |
9. 6.16 | ・答申 |