三重県情報公開審査会 答申第27号
答申
1 審査会の結論
(平成6年度)産業廃棄物処理事業計画書(株○○○○○○に係るもの)外11件の部分開示決定に対する異議申立て事案のうち、産業廃棄物処理業変更届出書等に記載されている車両の登録番号は開示すべきであるが、その余の部分について実施機関が非開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成7年12月22日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「別紙公文書目録記載の公文書」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成8年1月12日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の部分開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を部分開示にしたというものである。
産業廃棄物の許可は収集運搬業と処分業に分かれる。処分業の中には、焼却等を行う中間処理業と埋め立て処分を行う最終処分業とがある。
株○○○○○○の中間処理の場合は、産業廃棄物処理施設の設置許可を得て施設が完成した後、処理業の許可申請の手続きを行っている。
本件対象公文書は、(平成6年度)産業廃棄物処理事業計画書(株○○○○○○に係るもの)等に関するものであり、以下の理由により一部を非開示とするものである。
(1)条例第8条第1号(個人情報)の該当性について
これらの書類に示された個人の氏名、住所、職業等は個人に関する情報であって、開示することにより特定の個人が識別され、又は識別され得る。
また、これら非開示とした情報はあくまでも個人の私的な情報であり、本号ただし書きイ、ロ、ハのいずれにも該当しない。
(2)条例第8条第2号(法人情報)の該当性について
機器仕様、焼却プラント配置組立図等の情報は、法人の経営戦略上、中核をなすべき重要な情報であり、これを開示することは、同業他社に営業のノウハウを公開するにも等しいことであり、競争上正当に得られる利益を著しく害すると認められる。また、法人の内部管理情報についても、それを開示することにより、事業活動に対し不利益を与えると認められる。
これらの情報については、事業者が本来秘匿されるべきことを期待する情報を、事業の許認可のため行政機関に対する信頼のもと提示したものである。
また、同号ただし書き「イ」については、情報それ自体に人の生命、身体及び健康等を保護するため開示する必要性が認められなければならないと解されるが、本件対象公文書に記載されている法人等に関する情報にはその必要性が認められない。
次に「ロ」については、当該事業は違法又は著しく不当な事業活動に係る情報ではないため該当しない。
「ハ」については、本件対象公文書に、それが公にされること自体に公益性があるとは認められないことから、「ハ」についても該当しない。
4 異議申立ての理由
異議申立人が、異議申立書及び口頭による意見陳述で主張している異議申立ての主たる理由は、次のように要約される。
焼却する産業廃棄物には様々な化学物質が入っており、燃焼に伴ってダイオキシンが発生する。事業者や県は厚生省の古い基準で大丈夫であると言っているが、我々はそうは考えていない。現に、厚生省も今年の6月にそれまでのガイドラインを見直し、10月にも再度見直しを行っている。
当中間処理施設には、焼却処理に伴う大量の灰が野積されており、これが豪雨時に河川に流出するおそれがある。
情報公開条例第8条第2号(法人情報)ただし書きでは、生命や健康を保護するため非開示の例外規定が設けられているが、被害が出たときでは既に遅いので、このようになる前に情報公開されたり、差し止めが行われる必要がある。
5 審査会の判断
(1) 本件対象公文書の内容について
本件対象公文書について、実施機関は条例第8条第1号及び第2号に該当するので部分開示にできると主張している。そこで、以下について判断する。
(2) 基本的な考え方について
条例の制定目的は、県民の公文書開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示項目を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(3) 条例第8条第1号(個人情報)の該当性の有無について
個人の職、氏名、住所、本籍地、経歴書及び戸籍抄本等に関する情報は個人に関する情報であり、開示することにより、特定の個人が識別され、または識別され得る。なお、これらの情報は本号ただし書きには該当しない。
(4) 条例第8条第2号(法人情報)の該当性の有無について
本号は、自由経済社会においては、法人等の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で開示することにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができることを定めたものである。
競争上の地位その他正当な利益が害されると認められる情報とは、例えば生産、技術、販売、営業上のノウハウに関する情報、経理、人事等の内部管理に関する情報のほか、開示することにより、法人等の社会的評価、社会活動の自由等が損なわれると認められる情報をいう。
ところで、本件対象公文書に記載されている産業廃棄物の取扱量等は、法人等の事業活動に係る情報であることは明らかであることから、これらを開示することにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるか否かについて判断する。
実施機関が本号に該当するとして非開示にした情報は、産業廃棄物の取扱予定量、傭車契約書の貸与者住所・氏名、廃棄物保管施設図及び焼却施設組立図等、企業経営に関するものである。
このうち、産業廃棄物処理業変更届出書等に記載されている車両の登録番号は、特に企業内部情報であるとは認められず、これを開示しても当該法人の競争上の地位、その他正当な利益を害するとは認められないことから開示すべきである。
これ以外の情報は、事業者が本来秘匿されるべきことを期待する事業取引内容あるいは企業内部情報であって、それらを開示すると、法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
また、同号ただし書は、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、身体及び健康を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、「ロ 違法又は著しく不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある支障から県民の生活を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、「ハ イ又はロに掲げる情報に準ずる情報であって、公益上開示することが必要であると認められるもの」が記載されている公文書は、本号本文に該当する場合であっても開示することができると定めている。
ところで、ただし書に該当する情報というためには、情報それ自体に人の生命、身体及び健康等を保護するため開示する必要性が認められなければならないと解される。(例えば、大気汚染に関するデ-タは健康に直結する情報であるので、ただし書に該当すると考えられるが、当該施設の構造や産業廃棄物の取扱い量等の情報からは、当該施設が操業することに伴う環境汚染の有無を判断することは困難であるため、ただちにただし書に該当するとはいえない。)しかし、本件対象公文書に記載されている法人に関する情報にはその必要性が認められないことから、同号ただし書には該当しないと判断する。
(5) 結論
以上のことから判断すると、条例第8条第1号及び第2号に該当するとして非開示とした本件対象公文書のうち、産業廃棄物処理業変更届出書等に記載されている車両の登録番号は開示すべきであるが、その余の部分について実施機関が非開示としたことは妥当である。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙審査会の処理経過のとおりである。
別紙
公文書目録
平成元年度
- 産業廃棄物処理業許可証(株○○○○○○に係るもの)
- 産業廃棄物処理業変更届出書及び受理通知書(株○○○○○○に係るもの)
- 産業廃棄物処理業許可申請書(株○○○○○○に係るもの)
平成2年度
- 産業廃棄物処理業変更届出書及び受理通知書(株○○○○○○に係るもの)
平成5年度
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可申請書(株○○○○○○に係るもの)
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可証(株○○○○○○に係るもの)
- 産業廃棄物処理業変更届出書及び受理通知書(株○○○○○○に係るもの)
平成6年度
- 産業廃棄物処理事業計画書(株○○○○○○に係るもの)
- 産業廃棄物処理業変更届出書(株○○○○○○に係るもの)
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書及び産業廃棄物収集運搬業許可証(株○○○○○○に係るもの)
平成7年度
- 産業廃棄物処理施設設置許可申請書及び産業廃棄物処理施設設置許可証(株○○○○○○に係るもの)
- 施設面積変更について(株○○○○○○に係るもの)
別紙
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
8. 3.14 | ・諮問書受理 |
8. 3.25 | ・実施機関に対して部分開示理由説明書の提出依頼 |
8. 5. 8 | ・部分開示理由説明書受理 |
8. 5.16 | ・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
8. 5.27 | ・口頭意見陳述申出書受理 |
8. 9.24 | ・書面審理 ・実施機関からの部分開示理由説明の聴取 ・審議 (第61回審査会) |
8.10.21 | ・異義申立人からの口頭意見陳述の聴取 ・審議 (第62回審査会) |
9.11.25 | ・審議 (第63回審査会) |
9.12.17 | ・審議 (第64回審査会) |
9. 1.30 | ・審議 (第65回審査会) |
9. 1.30 | ・答申 |