三重県情報公開審査会 答申第316号
答申
1 審査会の結論
実施機関の行った本決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年11月14日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の訴訟事件の証拠書類乙26号証等の文書を起案・決裁した文書及び当該訴訟事件の証拠書類乙1号証等の文書を供覧・決裁した文書」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年11月28日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
異議申立人が起案・決裁・供覧したはずであると主張する文書は、特定の訴訟事件において被告三重県側の書証として提出されたものである。乙第9号証は既存の公文書の写しであり、それ以外は全て陳述書である。陳述書は陳述者が直接見聞きした体験に基づいて作成されたものであることから、作成にあたり起案・決裁は行われていない。また、これらの文書の裁判所への提出については当該訴訟に関する一切の権限を委任されている訴訟代理人及び指定代理人の判断によりなされることから、提出に関し起案・決裁・供覧等は行っていない。なお、当該書証提出後、口頭弁論期日の記録を供覧する際に書証も供覧していることから、その旨を本件不存在決定通知書の備考覧に記載するなど必要な説明は行っている。文書による起案・決裁を行っていなかったとしても違法・不当とまではいえない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
陳述書は陳述者が直接見聞きした体験に基づいて作成された物であるから、作成にあたって起案・決裁は行われていないとしているが、理由にはならない。開示請求した文書は三重県教育委員会事務局の職員が職務上作成した公文書であり、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)で公文書の起案・決裁を行わない例外規定はない以上、起案・決裁をしたはずである。
また、証拠書類の提出に際して起案・決裁を行わないという判断は訴訟代理人とは関係のないことで、実施機関が行政上の手続きをきちんとしたのかの問題だ。
実施機関の説明では、公文書を作成する際に起案・決裁をしなくてもよいとか、代理人に委任した場合には起案・決裁をしなくてもよい規定があるといったような説明がなされていない。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、特定の訴訟事件の証拠書類乙26号証等(以下「証拠書類1」という。)の文書を起案・決裁した文書及び特定の訴訟事件の証拠書類乙1号証等(以下「証拠書類2」という。)の文書を供覧・決裁した文書の開示を求めている。
実施機関の説明によると、証拠書類1は三重県教育委員会事務局の職員が作成した陳述書であり、証拠書類2は三重県教育委員会事務局以外の職員が作成した報告書及び陳述書であると認められる。
異議申立人は、証拠書類1については文書自体の起案文書があり、証拠書類2については全体への供覧文書があるはずだと主張している。
処務規程は行政機関が集団的に意思決定する場合の手続きであるが、職員として陳述してはいるが各個人が各々の見解で行なっているものである陳述書の性格からすると、組織としての意思決定を行ったものではないことから処務規程の対象にならないことは当然である。異義申立人は不存在の理由が説明されていないと主張しているが、個人の見解を述べた陳述書であるから起案・決裁等を行なっていないとする実施機関の説明はそのとおりであって、理由は十分に説明されていると認められる。
また、当該訴訟に関する一切の権限を委任されている訴訟代理人や県指定代理人は、その判断で提出する証拠書類等を提出し、事後には供覧するが事前に供覧等を行うことはないとする実施機関の説明に不自然な点はない。
以上のことから、異議申立人の主張に理由はなく、本件についての実施機関の手続きは、事務処理としても適正であり、本決定は妥当であると判断する。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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20. 2.19 | ・諮問書の受理 |
20. 2.21 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
20. 3.13 | ・非開示理由説明書の受理 |
20. 3.17 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 4.18 | ・意見書の受理 |
20. 4.18 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第294回審査会)
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20. 5.23 | ・審議 ・答申 (第297回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。