三重県情報公開審査会 答申第313号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年8月27日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「分限申立書に添付された教育事務所長の特定の日付けの事務連絡文書(市教育委員会からの内申)」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年9月7日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)を取り消し、開示請求に該当する文書の特定を求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成16年3月22日付け決裁文書「分限申立書について」である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
教育事務所長から提出された特定の日付けの事務連絡文書(市教育委員会からの内申)は、供覧等を行わずに本件対象公文書に添付したので、本件対象公文書を本件開示請求に対する対象公文書として特定した。ほかには開示請求内容に該当する公文書は存在しない。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定を取り消し、開示請求に該当する文書の特定を求めるというものである。
三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)第19条では、外部から収受した文書は供覧をすることとされており、開示を求めたのは当該供覧された事務連絡文書であって、本件対象公文書に添付された文書ではない。実施機関は、開示請求に対応する文書の特定を誤っているから、正しい文書の特定を求める。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人がその主張の根拠としている処務規程第19条第1項は、次のように規定している。
第19条 前条の規定にかかわらず、収受した文書のうち次の各号に該当するものにあっては、当該各号に定めるところにより処理するものとする。
(1) 報告、届け、事務連絡等で処理を要しない文書は、直ちに簡易処理(主務者の氏名、供覧を行った日付、分類記号、簿冊番号、保存期間その他必要な事項を記載して処理するものをいう。第3号において同じ。)により上司又は関係者に供覧する。
(2) 事務の性質により直ちに処理できないものは、当該理由、処理予定年月日、処理方針等を記して簡易処理により一応供覧(事務の処理方針等について、あらかじめ決裁権者の決裁を受けることをいう。)に供する。
(3) 公印の押印を必要としない軽易な回答等を求められたものは、当該回答案等を添付して簡易処理により決裁権者の決裁を受ける。
ところで、本件開示請求に係る教育事務所長の特定の日付けの事務連絡文書は、市教育委員会からの内申文書を三重県教育委員会事務局人材政策チームマネージャーあてに報告する文書であり、当該事務連絡文書に基づいて人材政策チームマネージャーは分限処分の申立てを行っているから、当該事務連絡文書は処務規程第19条第1項第1号により供覧すべきものであったとは考えられない。また、当該分限処分の申立ては、当該事務連絡文書の日付けの1週間後に起案されているから、同項第2号により一応供覧すべきものであったとは考えられない。さらに、当該事務連絡文書は、公印の押印を必要としない軽易な回答等を求めるものでもないから、同項第3号の適用を受けるものとも考えられない。むしろ、実施機関は、処務規程第18条第1項第1号の規定に基づき、電子文書以外の添付文書(教育事務所長から提出された特定の日付けの事務連絡文書)があるために、総合文書管理システムにより起案様式を作成し、紙に出力した起案様式により回議したものと認められる。
したがって、教育事務所長から提出された特定の日付けの事務連絡文書は、供覧等を行わずに本件対象公文書に添付したから、本件対象公文書のほかには開示請求内容に該当する公文書は存在しないという実施機関の説明には不自然な点はなく、また、当該事務連絡文書が上記起案前に供覧されていたことを窺わせるような事情もない以上、本決定は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19.10.19 | ・諮問書の受理 |
19.10.23 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19.11. 9 | ・非開示理由説明書の受理 |
19.11.21 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 2.29 | ・意見書の受理 |
20. 2.29 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第291回審査会)
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20. 3.21 | ・審議 ・答申 (第293回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。