三重県情報公開審査会 答申第312号
答申
1 審査会の結論
実施機関の行った本決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年2月2日及び平成19年2月8日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の日付の文書を市教育委員会から三重県教育委員会が受け取ったことを示す関係文書(鑑文・添付書類等)、その文書を供覧・決裁した文書」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年2月15日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 対象公文書
- 職員の不祥事について(報告)
- 顛末書
- 簡易決裁文書
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
「職員の不祥事について(報告)」及び「顛末書」を受け取ったことは、これらの文書が三重県教育委員会事務局に保管されていることをもって証明されるものである。
三重県教育委員会事務局では本件文書を受領した際に受領について改めて起案等は行っていないが、文書を受領した場合には必ず起案・決裁・供覧を行わなければならないというものではない。
供覧・決裁という文言に着目して当該文書を三重県人事委員会の不服申立事案における書証として提出する際に決裁した簡易決裁文書を開示文書に加えて全て開示したもので、以上の文書を、受け取ったことを示す文書であると考えて開示決定したもので、該当する可能性のある文書をより広くとらえて保有する文書を全て開示したものである。
仮に、異議申立人の求めていた文書でなかったとしても、開示した文書以外に該当する公文書が存在しないことが分かるので、異議申立人にとって必要な情報は入手できたものと思料される。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
実施機関は、三重県教育委員会に保管されていれば収受した証明になると説明するが、三重県教育委員会処務規程第6条に、事務の処理は文書によると規定され、同規程第11条に収受した文書は収受印を押印することとされ、同規程第19条で、収受した文書は供覧・決裁の事務処理が規定されている。
実施機関は、受け取ったことを示す収受印・供覧・決裁を行わない理由の根拠を説明していない。また、実施機関が特定した文書は、開示請求した文書ではない。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)第6条第1項には「事務の処理は、原則として文書によるものとする。」と規定され、同条第2項には「前項の規定にかかわらず、意思決定と同時に文書を作成することが困難である場合、及び処理にかかる事案が軽微な場合は文書を作成しないことができる。ただし、前者にあっては事後に文書を作成するものとする。」と規定され、処務規程第11条第1項第1号には「文書は、当該文書の右下部余白に到着した日(略)の日付の教育委員会収受印を押し、許認可等に係る文書にあっては文書処理簿(第3号様式)に必要事項を記入又は入力して主務者に交付する。ただし、次に掲げる文書については、教育委員会収受印の押印を省略することができる。イ 定期刊行物及び広告物、ロ 案内状、ハ あいさつ状及び礼状、ニ その他収受年月日を記載しておく必要のないもの(以下略)」と規定され、処務規程第19条には「前条の規定にかかわらず、収受した文書のうち次の各号に該当するものにあっては、当該各号に定めるところにより処理するものとする。(1) 報告、届け、事務連絡等で処理を要しない文書は、直ちに簡易処理(略)により上司又は関係者に供覧する。(以下略)」と規定されている。
本件対象公文書のうち「職員の不祥事について(報告)」「顛末書」の2件の公文書は市教育委員会より県教育委員会に送付された文書であり、特定の職員の分限処分に係る文書であり、その処分において重要な役割を果たした文書であると認められる。
職員の身分にかかわる文書が、処務規程第6条第1項に規定する軽微な事案であるとは認めがたく、処務規程第11条第1項第1号に規定する教育委員会収受印の押印を省略する事案であるとも認めがたく、また処務規程第19条に規定する簡易処理を要しない事案であるとも認めがたい。職員の人事管理に関しては、任命権者としての県教育委員会と服務監督権者としての市教育委員会がその役割を分担し連携していることをもって、実施機関には両者の関係は通常の自治体間に比べより密接な一体的な関係にあるとする認識があることから、上記処務規程に規定されるいずれの処理もなされていないことは実態上あり得ることであるが、いずれの処理もなされていないことを説明していない。実施機関において処務規程による処理について認識が乏しいため、本来の処理がなされていないと考えざるを得ない。したがって、実施機関が、現に文書を保有していることをもって、当該公文書を受け取ったことを示すものであるとする説明には、理由がないといわざるを得ない。
本件対象公文書のうち「簡易決裁文書」は、県教育委員会が、収受した「職員の不祥事について(報告)」「顛末書」の2件の公文書を県人事委員会に提出する起案・決裁文書であると認められる。
異議申立人が主張するように、本件対象公文書は、2件の公文書を収受したことを直接的に示す文書でないことは明らかだが、受け取ったことを示す文書がないという実態において、実施機関が対象公文書を広く解して、受け取ったことを間接的に示す文書として特定した本件対象公文書は、開示請求に関係する文書であると認められることから、本決定を、妥当でないとまではいえない。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のように、実施機関に市教育委員会との関係について特段の認識があるとしても、本件のような職員の分限処分に関する重要文書については、受付印や収受の記録等、処務規程に則った適正な事務処理の必要性についての認識を新たにし、適正な運用と改善に努められたい。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19.11.26 | ・諮問書の受理 |
19.11.29 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19.12.21 | ・非開示理由説明書の受理 |
19.12.26 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 2.21 | ・意見書の受理 |
20. 2.21 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第290回審査会)
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20. 3.14 | ・審議 ・答申 (第292回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。