三重県情報公開審査会 答申第309号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年8月24日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県教育委員会 企画・支援室で平成15~19年度まで文書目録(簿冊、件名の記録されている目録)の電磁的記録(簿冊、件名の記録されている目録、文書管理システムの電磁的コピーCDで)」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年9月7日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成15年度の「指導力向上支援研修」簿冊内の公文書の件名を記録した件名目録ほか5件の件名目録である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
実施機関は、総合文書管理システムに登録された件名目録のうち、請求内容に該当する全ての件名目録をそのまま印刷して開示した。異議申立人が主張するように、実施機関が件名の一部を非開示にしたことはなく、総合文書管理システムに登録された文書の件名は、開示したとおりである。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、本決定は、実施機関の電磁記録に一部該当する文書(文書管理システムの件名)が記録されていないから、正確な電磁記録(文書管理システムの件名)を求めるというものである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
実施機関は、総合文書管理システムに登録された件名目録のうち、請求内容に該当するすべての件名目録をそのまま印刷して開示したと主張している。「総合文書管理システム」とは、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)第2条第10号に規定する総合文書管理システム(コンピューターにより文書の起案、回議、決裁、供覧、発送及び収受を行うためのシステム)のことである。
これに対し、異議申立人は、本件対象公文書には、平成15年度指導力向上支援研修における様式2「センター等研修における月別総括表」を決裁した文書など、7件の様式を決裁した文書の件名や決裁年月日が記録されていないと主張する。異議申立人は、これらの様式は口頭決裁を受けたから決裁文書は存在しない旨の説明を既に実施機関から受けているが、このような口頭決裁は許されないと主張している。
確かに、処務規程第6条においては、事務の処理は、事案が軽微な場合を除き、原則として文書によることを規定しており、異議申立人の主張に係る様式を定めるに当たっては本来起案文書を作成して決裁を受けるべきであったと考えられる。しかし、そのような事務処理の適否はともかくとして、既に当審査会が平成19年9月20日付け答申第285号で示したとおり、口頭による了解(決裁)を受けたため、様式2「センター等研修における月別総括表」等を定めた決裁文書が不存在であることはやむを得ない。そして、このように口頭による了解(決裁)を受けた事案は総合文書管理システムに登録されないから、その件名や決裁年月日が本件対象公文書に記録されていないことは、やむを得ないものと認められる。
また、異議申立人は、本件対象公文書には、平成16年1月31日付け教委第16-36号「指導力不足等教員の校外指導力向上支援研修の結果報告について」に係る決裁文書など、3件の決裁文書の件名や決裁年月日が記録されていないと主張する。
この点について当審査会が実施機関に説明を求めたところ、これら3件の決裁文書は、いずれも総合文書管理システムを使用して起案文を作成し、決裁を受けたものの、決裁年月日の登録が済んでいないため、件名目録に反映されなかったが、後日すみやかに登録を行う予定であるとのことであった。つまり、これら3件の文書は、実施機関がその決裁後直ちに決裁年月日を登録していれば、本件対象公文書にその件名や決裁年月日が記録されていたはずであったものである。しかし、実施機関は、本件開示請求に対応する公文書として、本決定時点で総合文書管理システムに登録された件名目録を出力して開示している以上、未登録の文書の件名や決裁年月日が記録されていないからといって本決定が違法又は不当であるとまではいえない。
したがって、本件開示請求に対し本件対象公文書を特定した本決定は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19.10.10 | ・諮問書の受理 |
19.10.15 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19.11. 2 | ・非開示理由説明書の受理 |
19.11. 7 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 1.11 | ・意見書の受理 |
20. 1.11 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第288回審査会)
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20. 2.29 | ・審議 ・答申 (第291回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。