三重県情報公開審査会 答申第308号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年6月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成16~18年度の三重県教育委員会北勢教育事務所の文書経由簿等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年7月9日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
法令等の規定により地域機関を経由する文書は、経由簿により処理する必要があるが、平成16年度及び平成17年度においてその必要がある文書は存在しなかった。北勢教育事務所の文書経由は、文書処理簿によっておこなわれていたため、経由簿は不存在である。また、平成18年度において、北勢教育事務所は廃止されている。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
教育委員会処務規程で経由簿は作成しなければならない。不存在は不自然である。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
文書の経由に関し、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)第16条は「本庁室又は地域機関等を経由する文書は、経由簿(第6号様式)に必要事項を記入又は入力するものとする。(以下略)」と規定している。
実施機関の説明によると、三重県教育委員会における文書事務については、処務規程に定めるもののほか、三重県公文書管理規程(平成18年三重県訓令第4号)の例によるとされているが(処務規程第5条第4項)、三重県公文書管理規程第17条第1項第5号は「本庁又は地域機関を経由する文書のうち意見書、調査書等を必要としない場合 経由簿(第6号様式)により処理するものとする。」と規定し、三重県公文書管理規程の運用通知においては「法令等の規定により本庁又は地域機関を経由する必要がある文書で、意見書、調査書等の処理を必要としないもの(経由するのみ)は、経由簿(第6号様式)により処理します。」と定めている。すなわち、法令等の規定により地域機関を経由する文書は、経由簿により処理する必要があるが、平成16年度及び平成17年度の北勢教育事務所においては、法令等に基づき経由簿により処理する必要がある文書は存在しなかったから、経由簿を作成する必要はなかったと主張している。また、経由簿が作成されていなかったことは、当時の北勢教育事務所に在籍していた職員にも確認しており、間違いないとも主張している。
なお、平成18年4月1日から施行されている三重県公文書管理規程及びその運用通知は、平成16年度及び平成17年度の経由簿が不存在であることを説明するものとは考え難いため、当審査会が調査したところ、平成16年度及び平成17年度に施行されていた処務規程第5条第4項は「文書の事務は、この訓令によるほか、三重県文書規程(昭和63年三重県訓令第1号)の例による。」と規定し、三重県文書規程(三重県公文書管理規程の施行に伴い、平成18年4月1日に廃止されている。)第13条の2は「主務課又は出先機関を経由する文書は、経由簿(第8号様式の2)に必要事項を記入なければならない。(以下略)」と規定していた。そして、同条の取扱方針として、経由処理が必要な文書は、法律等で経由機関を経由することが定められている文書及び業務上経由処理をしなければならない文書に限るものとしていたことが確認された。
しかし、当該取扱方針が三重県教育委員会の文書事務に適用されるとしても、平成16年度及び平成17年度に北勢教育事務所を経由して三重県教育委員会へ提出された文書は多数存在したと思われるところ、そのすべてについて経由の根拠を確認のうえ、経由簿による処理をしなかったとは考え難い。また、処務規程第16条のような規定が定められている以上、結果的に経由簿により処理すべき文書がない(経由簿は白紙のままとなる)年度もあるかもしれないが、毎年度当初に経由簿を作成しておくのが一般的ではないかと思われる。むしろ、当審査会における補足説明の際に実施機関も認めていたように、実施機関において経由簿による処理について認識が乏しく、このため、作成されるべき経由簿が作成されず、本来経由簿により処理されるべき文書が、他の文書と同様に処理されていたと考える方が合理的である。
いずれにしても、平成16年度及び平成17年度の北勢教育事務所において経由簿が作成されなかったことは、実施機関が当時の職員に確認したところからも、疑義のないところであり、また、当該経由簿が存在することを窺わせるような事情もない。なお、平成18年度において北勢教育事務所は廃止されていることから、経由簿が不存在であることは当然である。
したがって、平成16年度及び平成17年度においては本来は経由簿を作成すべきであったと考えられるものの、本決定自体は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のとおり、実施機関における経由文書の処理は、処務規程その他の規定どおりに行われていたとは認め難い。また、現在の経由文書に関する処務規程の規定は三重県公文書管理規程の規定と異なっているにもかかわらず、同様に解釈していることには疑問があると言わざるを得ない。
実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点から、処務規程その他の規定に従い、適切に事務を処理するべきである。また、経由文書に関する処務規程の規定について、その必要性を含めた見直しを行うことが望まれる。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 8. 9 | ・諮問書の受理 |
19. 8.10 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 8.31 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 9. 6 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
20. 1.11 | ・意見書の受理 |
20. 1.11 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第288回審査会)
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20. 2.29 | ・審議 ・答申 (第291回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。