三重県情報公開審査会 答申第305号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年3月22日及び同年3月23日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の報告文書を三重県教育長が受け取ったことを示す文書(起案・供覧・決裁)等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年4月5日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、「報告文書」である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
三重県教育委員会事務局が、当該特定報告文書を受領したことは、報告文書が三重県教育委員会事務局に保管されていることをもって証明されるものである。また、本件報告文書を受領した際に受領について改めて起案等は行っていないが、文書を受領した場合には必ず起案・供覧・決裁を行わなければならないというものではない。
したがって、実施機関は、報告文書自体が受け取ったことを示す唯一の文書であると考えて同文書を開示したものであり、該当する可能性のある文書をより広くとらえて保有する文書を開示した。当該文書が異議申立人の求める文書でなかったとしても、報告文書以外に該当する公文書は存在しないことがわかるのであるから、異議申立人にとって必要な情報は入手でき、異議申し立ての理由は存しない。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
請求したのは、当該報告文書を教育長が受け取ったことを示す、組織として供覧あるいは決裁した文書であるが、実施機関が特定し開示したのは、当該報告文書のみである。
実施機関は、当該報告文書を受領すれば文書による供覧・決裁、総合文書管理システムに登録する事務処理を義務付けられており、条例を遵守し事務処理を行っていれば、実施機関は起案・決裁文書を開示しなければならないと考える。
実施機関が開示請求に該当する文書が存在しないことを認識しながら開示請求に該当しない全く違う文書を特定し開示決定することは許されないと考える。実施機関が開示請求の対象となる文書が存在しないことを認識しているのであれば、実施機関は不存在決定を行うべきであると考える。開示された文書は、開示請求した文書ではない。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
本決定では、4件にわたる開示請求に対して、本件異議申し立ての対象となった本決定の他に、部分開示決定及び公文書不存在決定がなされているが、当該部分開示決定及び公文書不存在決定に関しては異議申立てはなされていない。
当審査会は、本件異議申立ての対象となった本件対象公文書の開示決定に関して、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、実施機関が特定し開示した公文書は、当該報告文書であり、開示された文書からは実施機関内部でどのように保管されていたかもわからず、教育長が受け取ったことを示す組織として供覧・決裁した文書ではないことから、開示請求に該当する文書ではないと主張する。
これに対して実施機関は、開示請求の対象となる文書は本件対象公文書以外にはなく、特に起案、決裁等は行っていないが、当該報告を受けて分限審査会の資料を作成した事実があることから、事実上組織の文書として保有していること自体が受け取ったことを示す文書であると考え、開示したと主張する。
実施機関の説明によると、本件対象公文書は、教育長宛ではあるが、研修分野総括マネージャーを発信者として人事分野担当室に送付され、外部委員を含めた三重県指導力向上支援審査委員会の審査を経て、教育委員会事務局内部での三重県指導力向上支援判定委員会を経たうえで教育長の決裁にあげられたものである。この本件対象公文書の取り扱われ方からみると、当該文書そのものを教育長が見ていないとしても、教育委員会の意思決定の過程で、当該文書に基づいて作成された文書を見ていることは間違いないとする実施機関の説明は理解できる。
また、異議申立人は、文書の受領に際して文書による供覧・決裁、総合文書管理システムに登録する事務処理を義務付けられていると主張する。
確かに、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号。以下「処務規程」という。)により、文書の収受について規定されているが、実施機関の説明によると、教育委員会内部の文書の収受については通常は省略されている場合が多い。本件対象公文書が、厳密に処務規程に則り処理されているとはいえないが、本件対象公文書を含め、同種の文書が同様の処理をされているとする実施機関の説明を不自然とまではいえない。
以上のことから、異議申立人の主張は理解できるが、実施機関の説明を不合理とまでは言えないことから、異議申立人の請求する内容に該当するものとして、広く対象公文書を特定し、開示した本決定を妥当でないとまではいえない。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のとおり、実施機関の事務処理は、処務規程で定められた手続を経ていないため、異議申立人の主張に係る文書の決裁その他事務処理の経緯が不明確となっている。
実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点からも、処務規程その他の規定に従い、適切に事務を処理すべきである。行政機関が、文書を作成しその収受をもってその事務を遂行することから考えると、処務規程に基づいた文書作成と文書管理が求められる。適正な運用と改善に努められたい。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 6.15 | ・諮問書の受理 |
19. 6.21 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 7.12 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 7.19 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19.10.18 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第283回審査会)
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19.11.15 | ・意見書の受理 |
19.11.15 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第285回審査会)
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19.12.13 | ・審議 (第287回審査会)
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20. 1.24 | ・審議 ・答申 (第289回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。