三重県情報公開審査会 答申第304号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年6月26日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年度指導力向上支援研修の所属校・その他関係機関から送付された様式6-1・6-2・6-3・6-4・6-5・7・8-2-②(2種類)・8-3・9-3の文書に受付印のある該当文書」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年7月9日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
当該公文書は、郵便、使送、直接手交等の様々の方法によって届けられたが、その際に収受年月日を記載しなくても文書処理上及び事務事業遂行上の支障を招くことにはならないとの考えから、収受印の押印を省略した。このため、請求内容に該当する公文書は、不存在である。
三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号)第11条第1号ただし書により、収受年月日を記載しておく必要のないものについては、収受印の押印省略が可能であり、問題ない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定を取り消し、「収受印のある文書は存在する」との決定を求めるというものである。なお、異議申立人は、平成19年12月7日に当審査会へ提出した意見書において、本決定のうち、様式6-2及び様式8-2-②に収受印の押印されたものの不存在決定に係る主張は撤回している。
三重県教育委員会処務規程は、原則として収受印を押印することを定めたものであって、押印の省略は例外であり、実施機関の任意の(自由な)判断での省略を認めるものではない。また、当該公文書は報告・評価等の内容で、同規程で収受印の押印省略を規定している簡易な文書ではない。したがって、直渡しされていても、同規程により受付印は押印される。
実施機関は、当該文書に収受印が不要であると考えた根拠を説明しなければならない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
文書を収受した際の収受印の押印に関し、三重県教育委員会処務規程第11条第1項は、次のように規定している。
第11条 本庁室に到着した文書(電子文書を除く。以下この条及び次条において同じ。)、小包郵便物及び物品は、文書主任が収受し、次の各号により処理するものとする。
(1) 文書は、当該文書の右下部余白に到着した日(封筒に教育委員会収受印が押されているものについては、当該収受印の日)の日付の教育委員会収受印を押し、許認可等に係る文書にあっては文書処理簿(第3号様式)に必要事項を記入又は入力して主務者に交付する。ただし、次に掲げる文書については、教育委員会収受印の押印を省略することができる。
イ 定期刊行物及び広告物
ロ 案内状
ハ あいさつ状及び礼状
ニ その他収受年月日を記載しておく必要のないもの
(2) (略)
実施機関は、本件開示請求に係る様式6-1等の文書は、収受年月日を記載しなくても文書処理上及び事務事業遂行上の支障を招くことにはならないとの考えから、収受印の押印を省略したとし、その根拠は三重県教育委員会処務規程第11条第1項第1号ただし書のニであると主張している。これに対し、異議申立人は、同号は、原則として収受印を押印することを定めたものであって、押印の省略は例外であり、実施機関の任意の(自由な)判断での省略を認めるものではない。また、当該公文書は報告・評価等の内容で、同規程で収受印の押印省略を規定している簡易な文書ではない、と主張している。
確かに、三重県教育委員会処務規程第11条第1項第1号ただし書は、例外的に収受印の押印を省略できる場合を定めたものであるから、同号ただし書のニは実施機関の広範な裁量を認めるものではなく、同号ただし書のイからハまでに準じる文書に限るものと解すべきであるとの異議申立人の主張は、首肯できる。また、仮に同号ただし書のニが実施機関の裁量を認めるものであったとしても、本件開示請求に係る様式6-1等の文書の大半は、指導力向上支援研修における所属校研修、社会体験研修及びテーマ研修の研修先の所属校長、所属校の指導者その他研修責任者等が作成する報告書、評価書等であり、最終的には研修教員の評価につながる重要な文書であることを勘案すれば、その収受を証するものとして収受印を押印し、収受年月日を記載しておく必要のある文書であったと考えられる。
しかしながら、そのような収受印の押印省略の是非を除けば、実施機関は本件開示請求に係る様式6-1等の文書はいずれも収受印の押印が不要であると考え、かつ、現在も引き続き同種の文書への押印を行っていないとの説明に特段の不自然な点は認められず、また、収受印が押印された様式6-1等の文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、これらの文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
したがって、事務処理の方法に問題はあるものの、本決定自体は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のとおり、実施機関は、三重県教育委員会処務規程に規定する収受印の押印を行っていないため、異議申立人の主張に係る文書の収受年月日が不明確となっている。
実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点からも、三重県教育委員会処務規程その他の規定に従い、適切に事務を処理すべきである。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 8.30 | ・諮問書の受理 |
19. 9. 3 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 9.25 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 9.27 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19.12. 7 | ・意見書の受理 |
19.12. 7 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第286回審査会)
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20. 1.11 | ・審議 ・答申 (第288回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。