三重県情報公開審査会 答申第303号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年4月18日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「1.平成15年度指導力向上支援研修で指導力向上支援室が「不適格の事実の文書」の評価項目「不適格の事実」の根拠とする文書、2.平成15年度指導力向上支援研修で指導力向上支援室が「不適格の事実の文書」の評価項目「指導内容」の根拠とする文書、3.平成15年度指導力向上支援研修で指導力向上支援室が「不適格の事実の文書」の評価項目「指導後の変容」の根拠とする文書」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年6月1日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成15年度指導力向上支援研修を受講した研修教員のうち特定の研修教員(2名)にかかる「受講講座のまとめ」ほか17件の文書である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
異議申立人は、平成15年度において三重県教育委員会事務局教育サービス・相談チームの職員が作成した公文書『指導力向上支援研修期間中における○○(原文は該当研修教員の姓)教諭の不適格の事実』に記載された「不適格の事実」「指導内容」「指導後の変容」の欄ごとに、対応する公文書の特定と開示を求めているが、当該公文書の各欄の記述内容については、本件対象公文書のうちのどの公文書のどの箇所を基にしたのかについて、一対一対応の形で示した公文書は存在せず、当時の職員の記憶を拠りどころにして特定することも不可能である。このため、各請求内容に対しては、これらを一括して本件対象公文書を特定し、部分開示決定を行ったものである。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、本決定は、各請求内容に対応する公文書を一括して特定した決定であるから、請求内容1,2,3にそれぞれ対応した公文書を特定するよう変更すべきであるというものである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件開示請求に係る「不適格の事実の文書」とは、上記4のとおり『指導力向上支援研修期間中における○○(原文は該当研修教員の姓)教諭の不適格の事実』との標題が付された文書である。当審査会における審理の参考のため実施機関から提出された当該文書を見分したところ、当該文書は左から順に「日時」「不適格の事実」「指導内容」「指導後の変容」「確認者」の欄が設けられた表形式でまとめられており、特定の日時ごとに「不適格の事実」「指導内容」「指導後の変容」の各内容とその「確認者」が整理されている。また、本決定により特定された18件の本件対象公文書には、「センター研修状況シート」、「センターにおける授業研修の評価」などのように特定の研修実施日ごとに作成されたもののほか、「センター等研修における月別総括表」、「学校長による所属校研修の評価」などのように特定の研修実施期間又は研修実施月ごとに作成されたものもある。
異議申立人は、本決定は、本件対象公文書に記載された日付けを基に、3つの請求内容に対応するように、「不適格の事実」「指導内容」「指導後の変容」の各内容の根拠とする公文書を特定できるにもかかわらず、18件の本件対象公文書を一括して特定した決定であるから、当該各内容の根拠とする公文書を特定するよう、これを変更すべきであると主張している。
確かに、実施機関は、本決定により特定した本件対象公文書について説明責任を負っているから、「不適格の事実の文書」の各欄の記述内容が本件対象公文書のうちのどの公文書のどの箇所を基にしたのかについて、できる限り説明すべきであることは言うまでもない。しかしながら、実施機関は、本件開示請求に対して本件対象公文書を特定してこれを開示している以上、異議申立人が主張するように、「不適格の事実の文書」の各欄の記述内容について、各日付けごとにその根拠とする公文書を整理して特定しなければ、これらの公文書に係る公文書部分開示決定が違法又は不当であり、変更すべきであるとまではいえない。
したがって、本件開示請求に対し本件対象公文書を特定した本決定は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 7.27 | ・諮問書の受理 |
19. 7.30 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 8.20 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 8.27 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19.12. 7 | ・意見書の受理 |
19.12. 7 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第286回審査会)
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20. 1.11 | ・審議 ・答申 (第288回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。