三重県情報公開審査会 答申第302号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年5月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年指導力向上支援で「指導力不足教員の校外指導力向上支援研修の結果」を起案・供覧・決裁した文書等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年5月23日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成16年1月30日付け起案文書「指導力不足等教員の校外指導力向上支援研修の結果報告について(伺い)」である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本件対象公文書では、研修の結果を所定の様式でまとめた文書を添付し、その起案の本文において「このことについて、別添のとおり報告してよろしいか。」と記していることから、当該起案文書が当該研修の結果及びその県教育長への報告の両方について起案・決裁したものであり、本件開示請求に対応する公文書であることは、明白である。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
開示を求めたのは「研修結果」を起案・決裁した文書であったのに、本決定により開示された本件対象公文書は、当該結果を「報告すること」を決裁した文書であった。開示の際の実施機関の説明によると、「報告すること」の決裁には「研修結果」の決裁も含まれるとのことだが、納得できない。したがって、開示された文書は、開示を求めた文書ではないことを審査会でも認めてほしい。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人は、「研修結果」を決裁した文書の開示を請求したところ、本決定により開示された本件対象公文書は、当該結果を「報告すること」を決裁した文書であるから、実施機関の文書の特定は誤っていると主張している。
確かに、異議申立人が指摘するように、本件対象公文書と同旨の平成17年度及び平成18年度の起案の本文のように「このことについては別添のとおりとしてよろしいか。なお、決裁のうえは、教育長あて報告いたしたい。」と記載した方が、研修結果を添付文書のとおり確定することについての起案(伺い)と、当該確定された添付文書により教育長あて報告することについての起案(伺い)が明確に区分され、意思決定の論理的な順序を正確に示しているため、本件対象公文書の起案の本文の記載よりも分かりやすく、閲覧する者の誤解を生じる可能性が少ないといえる。
しかしながら、当審査会において本件対象公文書を見分したところ、本件対象公文書の起案の本文において「別添」とされた文書は、教育長をあて先とし、研修分野総括マネージャーを発信者とし、「指導力不足等教員の校外指導力向上支援研修の結果報告について(報告)」との表題が付され、研修対象者ごとに研修の実施結果などを記載した別紙が添付された文書である。すなわち、当該「別添」とされた文書は教育長あてに報告することを目的として作成された文書であり、本件対象公文書の起案の本文と「別添」とされた文書は一体として起案文書を構成するものであるから、本件対象公文書の起案の本文において「このことについて、別添のとおり報告してよろしいか。」と記しているのは、当該研修の結果を別添のとおりとするとともに、これを県教育長へ報告することについて起案・決裁したものと解することができ、実施機関の説明は、必ずしも不合理なものとはいえない。
したがって、起案の本文の書き振りを理由として、本件対象公文書は当該研修の結果を報告することのみを決裁した文書であって本件開示請求に対応する公文書ではないとまではいえないから、本件開示請求に対し本件対象公文書を特定した本決定は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 7.27 | ・諮問書の受理 |
19. 7.30 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 8.20 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 8.27 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19.11. 9 | ・意見書の受理 |
19.11. 9 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第284回審査会)
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19.12. 7 | ・審議 ・答申 (第286回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。