三重県情報公開審査会 答申第300号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平18年11月14日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の土地区画整理事業認可申請書、図書、図面等」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年11月17日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求のあった公文書は、昭和52年に県が認可した認可申請書である。
公文書の保存期間は、三重県公文書管理規定により保存期間の基準が定められており、開示請求のあった公文書は「認可、許可、特許、承認、取り消し等の行政行為に関する特に重要な文書」として保存期間30年として取り扱っている。このため、当該特定の土地区画整理事業認可に関する図書についても、昭和54年に認可された最終的な変更認可関連図書は保存されている。しかし、文書管理の不手際により、当初認可関連図書である本件対象公文書については、その存在が確認できなかったため、やむなく不存在決定を行った。
4 異議申立て理由
本決定は、当該文書が存在するにもかかわらずなしたもので、違法である。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。
条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
実施機関が、本件開示請求の対象になりうる公文書として特定したのは、昭和52年に県が認可した認可申請書である。
実施機関の説明によると、本件対象公文書は、三重県公文書管理規定により「認可、許可、特許、承認、取り消し等の行政行為に関する特に重要な文書」として保存期間30年として取り扱われているものである。したがって、当該公文書は、少なくとも本件開示請求の時点では、当然に保存されているべきものである。
実施機関は、本件開示請求に際して、保管書庫等を再三にわたって捜したが、文書管理の不手際により、当該文書を確認できなかったと主張している。この点に関しては、当該文書が存在するにもかかわらずなしたもので違法であるとする、異議申立人の主張は理解できる。しかしながら、本件開示請求に際して、実施機関が当該文書を捜したが、捜し出せず文書管理の不手際であると認めており、その説明に不自然さを認めるには至らず、実施機関が不存在とした本決定は妥当であると判断せざるを得ない。
また、異議申立人は、不存在の理由が十分になされていないと主張している。確かに、本決定通知書の公文書が存在しない理由の記載欄には「文書不存在」と記載されているのみである。
条例第15条には、「(条例)第12条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは、開示請求者に対し、同条各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合においては、開示しないこととする根拠規定を明らかにするとともに、当該規定を適用する根拠が当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定している。この規定は、条例第12条が、原則書面によって決定を行うことを要求していることに加えて、書面に理由の付記を要求しているものである。これは、(1)決定理由の付記は決定行為の発動を慎重ならしめ、決定の適正化をもたらす効果を持つこと、さらに、(2)決定理由の明示は当事者が争訟を提起するのに便宜なこと、などが意図されているのであるから、実施機関は決定の根拠条文を示すだけでなく、具体的事実に基づき推論過程を明らかにするなど判断の根拠を明示する必要から定められている。したがって、全然理由を付さなかったり、理由らしき理由を付さなかったときは、決定に形式上の瑕疵があるとされる。
実施機関は、口頭により説明をしていると主張するが、本決定通知書の記載から不存在の理由を推知することはできず、理由付記に不備があることは否めない。しかしながら、異議申立人は、その口頭での意見陳述の内容から、理由付記自体の不備を主張しているのではなく、実施機関の十分な説明を求めていると認められることから、形式上の瑕疵を理由に本決定の取り消しを求めるまでもないと判断する。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
(4)付言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、当審査会より以下の点について付言する。
条例第44条は、「実施機関は、この条例の適正かつ円滑な運用に資するため、公文書を適正に管理するものとする。2実施機関は、公文書の分類、作成、保存及び廃棄に関する基準その他の公文書の管理に関する必要な事項についての定めを設けるものとする。」と規定している。情報公開制度が適正に運用されるためには、その前提として、公文書の管理が適正に行われることが不可欠であり、その意味で情報公開と文書管理は「車の両輪」であるといえることから、公文書の管理についての実施機関の責務を定めたものである。実施機関には、公文書の適正な管理が望まれる。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 1.16 | ・諮問書の受理 |
19. 1.18 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
19. 2. 8 | ・非開示(不存在)理由説明書の受理 |
19. 2.14 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 8.22 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第277回審査会)
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19. 8.29 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第278回審査会)
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19. 9.14 | ・審議
(第280回審査会)
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19.10.18 | ・審議
(第283回審査会)
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19.11.15 | ・審議 ・答申 (第285回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。