三重県情報公開審査会 答申第298号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平18年11月14日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の土地を、県が特定個人に贈与した経緯、背景を示す公文書及び県が特定個人に贈与したときの交渉記録文書、業務報告書、決裁文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年11月28日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求のあった特定の土地は、当初は県が用地買収を実施したが、昭和52年土地区画整理法に基づく「特定土地区画整理事業」事業区域として認可され、昭和55年施行代表者である三重県住宅供給公社に譲渡されている。請求内容にある贈与の原因日である昭和53年当時においては、登記名義上は県に所有権があるが、実務上は当該特定土地区画整理事業施行代表者である三重県住宅供給公社に事業が引き継がれており、県から贈与を行った旨の確認ができなかったため、不存在決定を行った。
4 異議申立て理由
本決定は、当該文書が存在するにもかかわらずなしたもので、違法である。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。
条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
実施機関の説明によると、当該特定の土地の贈与に伴う所有権移転の原因日時点では、登記名義上は所有権が県にあっため、県に対して開示請求がなされたと思われ、用地買収に係る文書の開示請求をされているが、実施機関では具体的な用地買収等に係る事務を行っていないため、請求対象となる公文書は不存在であるとしている。また、当該土地区画整理事業については、当該特定の土地を含む一帯の区域については、当初からその用地買収に係る事務を住宅供給公社に委託しており、土地区画整理法に基づく「特定土地区画整理事業」事業区域として認可された昭和52年当時において、事業主体は住宅供給公社であり、実務は住宅供給公社が行っていた。
したがって、実施機関は請求対象に係る事務を行っていないことから、県から贈与したとする事実の確認ができなかったとする主張を不自然とまでは言えず、実施機関の判断は妥当であったといわざるを得ない。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 1.15 | ・諮問書の受理 |
19. 1.19 | ・実施機関に対して不存在理由説明書の提出依頼 |
19. 2. 8 | ・不存在理由説明書の受理 |
19. 2.14 | ・異議申立人に対して不存在理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 8.22 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第277回審査会)
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19. 8.29 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第278回審査会)
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19. 9.14 | ・審議
(第280回審査会)
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19.10.18 | ・審議
(第283回審査会)
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19.11.15 | ・審議 ・答申 (第285回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。