三重県情報公開審査会 答申第290号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年3月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年度指導力向上支援研修で不適格の事実を示す文書を起案・供覧・決裁した文書等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年3月30日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
なお、上記開示請求のうち、本件異議申立てに係る請求内容は、次のとおりである。
- 平成15年度指導力向上支援研修で不適格の事実を示す文書を起案・供覧・決裁した文書
- 平成15年度指導力向上支援研修でセンター研修状況シートの評価を起案・供覧・決裁した文書
- 平成15年度指導力向上支援研修で所属校における研修実績簿を起案・供覧・決裁した文書
- 平成15年度指導力向上支援研修で所属校における研修指導報告書を起案・供覧・決裁した文書
- 平成15年度指導力向上支援研修で学校長による所属校研修の評価を起案・供覧・決裁した文書
- 平成15年度指導力向上支援研修で社会体験研修報告を起案・供覧・決裁した文書
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
平成15年度指導力向上支援研修における不適格の事実を示す文書は、チームマネージャーが内容を確認したが起案文等は作成せずに処理したので、これを起案・決裁した文書は不存在である。センター研修状況シートの評価の確定に当たっては、起案文等は作成せずに処理したので、これを起案・決裁した文書は不存在である。
所属校での研修実績簿及び研修指導報告書、学校長による所属校研修の評価並びに社会体験研修報告は、所属校又は研修機関から提出された際に、主務者名等を記載した文書を付した簡易処理による供覧等は行わずに処理したので、これを供覧した文書は不存在である。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
平成15年度指導力向上支援研修における、不適格の事実を示す文書及びセンター研修状況シートの評価は、公文書として開示されているので、組織として作成した文書の起案・決裁がされていないのは、不自然である。
平成15年度指導力向上支援研修における、所属校での研修実績簿及び研修指導報告書、学校長による所属校研修の評価並びに社会体験研修報告は、外部から報告された文書であり、供覧・決裁されていないのは不自然である。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
まず、異議申立人は、三重県教育委員会が作成した平成15年度指導力向上支援研修における不適格の事実を示す文書及びセンター研修状況シートの評価は、公文書として開示されているにもかかわらず、その作成に当たって決裁を受けた起案文書が存在しないのは、不自然であると主張している。確かに、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号)第6条においては、事務の処理は、事案が軽微な場合を除き、原則として文書によることを規定しており、異議申立人の主張に係る文書を作成するに当たっては、本来起案文書を作成して決裁を受けるべきであったと考えられる。しかしながら、そのような事務処理の適否を除けば、チームマネージャーが内容を確認したが起案文等は作成せずに処理したとする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められず、また、これらの起案文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、これらの起案文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
また、異議申立人は、三重県教育委員会が受領した平成15年度指導力向上支援研修における所属校での研修実績簿及び研修指導報告書、学校長による所属校研修の評価並びに社会体験研修報告は、外部から報告された文書であるから、供覧された文書が存在しないのは不自然であると主張している。確かに、三重県教育委員会処務規程第19条第1項第1号においては、報告、届け、事務連絡等で処理を要しない文書は、直ちに簡易処理(主務者の氏名、供覧を行った日付、分類記号、簿冊番号、保存期間その他必要な事項を記載して処理するものをいう。)により上司又は関係者に供覧することを規定しており、異議申立人の主張に係る文書は、当該簡易処理により供覧すべきであったと考えられる。しかしながら、そのような事務処理の適否を除けば、簡易処理による供覧等は行わずに処理したとする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められず、また、これらの供覧文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、これらの供覧文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
したがって、事務処理の方法に問題はあるものの、本決定自体は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
上記のとおり、実施機関の事務処理は、三重県教育委員会処務規程で定められた手続を経ていないため、異議申立人の主張に係る文書の決裁その他事務処理の経緯が不明確となっている。
実施機関は、その事務処理に係る県民への説明責任の観点からも、三重県教育委員会処務規程その他の規定に従い、適切に事務を処理すべきである。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 5.29 | ・諮問書の受理 |
19. 5.30 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 6.21 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 6.28 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 9.20 | ・意見書の受理 |
19. 9.20 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第281回審査会)
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19.10.12 | ・審議 ・答申 (第282回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。