三重県情報公開審査会 答申第286号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年2月9日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年度指導力向上支援研修における不適格の事実を示す文書(指導力向上支援室対応する文書開示)」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年3月1日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成15年度指導力向上支援研修を受講した研修教員に係る次に掲げる公文書である。(○○及び□□は、それぞれ特定の研修教員の姓・職名である。)
- 指導力向上支援研修期間中における○○の不適格の事実【センターにおける研修状況】
- 指導力向上支援研修期間中における○○の不適格の事実【センターにおける授業研修】
- 指導力向上支援研修期間中における□□の不適格の事実【センターにおける研修状況】
- 指導力向上支援研修期間中における□□の不適格の事実【センターにおける授業研修】
- 指導力向上支援研修期間中における□□の不適格の事実【所属校における研修】
- 指導力向上支援研修期間中における□□の不適格の事実【テーマ研修3に関して】
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本件対象公文書は、平成15年度の三重県教育委員会事務局の人材政策チームからの依頼を受け、同事務局の教育サービス・相談チームの指導力向上支援担当の職員が、業務上必要なものとしてその職務の範囲内において作成したものであり、当該チームのマネージャー(所属長)がその内容を確認した上で、人材政策チームに提出しており、組織としての共用文書の実質を備えた文書である。したがって、本件対象公文書が、条例第2条第2項の「公文書」に該当することは、明白である。
また、本件対象公文書は、指導力向上支援研修後の措置として退職の勧告を決定した研修教員のうち勧告に応じる意向を示していなかった者について、研修中における不適格の事実等を整理したものであり、本件開示請求に対応する公文書であることは、明白である。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
本決定により開示された本件対象公文書は、文書による所属長の決裁を経ておらず、また、実施機関が使用する総合文書管理システムにも登録されていないから、三重県公文書管理規程(平成18年三重県訓令第4号)に違反しており、「公文書」の要件を満たしていない。本件開示請求に対しては、不存在決定が相当である。
また、本件開示請求は「不適格の事実を示す文書」であったところ、本決定により開示された本件対象公文書は、不適格の事実等を整理した文書であるから、実施機関の文書の特定は誤っている。このことからも、本件開示請求に対しては、不存在決定が相当である。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
まず、異議申立人は、本件対象公文書は、文書による所属長の決裁を経ておらず、また、実施機関が使用する総合文書管理システムにも登録されていないから、「公文書」の要件を満たしていないと主張している。しかし、条例第2条第2項で定義する「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有する文書等をいうものである。そして、上記4の実施機関の説明によれば、本件対象公文書が同項の要件を満たしていることは明白である。確かに、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓4号)によれば、事務の処理は原則として文書によるものとされ(同規程第6条第1項)、また、文書は総合文書管理システムに登録することとされている(同規程第18条第3項及び第19条第2項)ものの、これらの規定に則っていない文書は「公文書」でないと解することは、条例第2条第2項に反し、かつ、条例による開示対象を著しく狭めるものであるから、異議申立人の主張は採用し得ない。(なお、異議申立人は、三重県公文書管理規程違反の旨を主張しているが、三重県教育委員会処務規程第5条第4項では、同規程に定めのない文書の事務について、三重県公文書管理規程の例によることとしているため、当審査会は三重県教育委員会処務規程を参照のうえ、上記のように判断するものである。)
また、異議申立人は、「不適格の事実を示す文書」の開示を請求したところ、本決定により開示された本件対象公文書は、不適格の事実等を整理した文書であるから、実施機関の文書の特定は誤っていると主張している。しかし、当審査会において本件対象公文書を見分したところ、確かに特定の研修教員についての不適格の事実が列挙されており、異議申立人の開示請求に対して、本件対象公文書を特定したことについて、何ら不自然な点は認められなかった。言い換えれば、本件対象公文書を「不適格の事実を示す文書」というか、「不適格の事実等を整理した文書」というかは、単なる表現上の問題であり、このことだけをもって本決定における対象公文書の特定が誤りであるとまではいえない。
したがって、本件開示請求に対し本件対象公文書を特定した本決定は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 4.27 | ・諮問書の受理 |
19. 5. 7 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 5.29 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 6. 1 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 8.10 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 (第276回審査会)
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19. 8.30 | ・意見書の受理 |
19. 8.31 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第279回審査会)
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19. 9.20 | ・審議 ・答申 (第281回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。